「「「いただきます」」」
「……いただきます」
数分後。俺たちは食卓を囲んで、予定より一人多い状態で昼食を取っていた。そのせいで、予定よりも若干多くの冷凍食品が食卓の上に並んでいる。
そしていただきますをするなり、ミカエルは超高速でご飯を食べ始める。きっとすごく腹が減っていたんだろうな……。ミカエルに犬のしっぽが生えていたら、たぶんそれはすごい勢いで振っているはずだ。
ミカエルが一息つくと、その隙を見て姉ちゃんが尋ねる。
「それで、いまさらだけど……あなたのお名前は?」
「あ、あたしはミカ……アリス・ミシェーレ、です。セラフ……五十嵐ひかりさんと同じクラスに留学してきました」
「あ~、一年生に留学生が来るって聞いていたけど、あなただったのね」
「は、はい……」
声が若干震えているから、姉ちゃんに恐怖心を植え付けられたんだろうな……。
「で、なんでこの家に?」
「あ、えっと……」
おい、目が五十メートルくらい泳いでいるぞ。多分、言い訳が思いつかなくて言葉に詰まっているのだろうな。
そこに、五十嵐が助太刀をしてきた。
「実はわたしが昔、外国に行った時、彼女と仲良くなったんです。それで彼女はわたしに会いに留学しに来てくれたんですよ~。ね、ミ……アリス?」
「そ、そうなんです~!」
ミカエルは五十嵐のでっち上げた話に乗っかり、勢いよくガクガクと首を上下に振る。
「そうだったのね~! 素敵なお友達だわ」
姉ちゃんは、どこか頭のネジが吹っ飛んでいるのか、この話に納得してしまっていた。
いやいや、この話、どう考えてもおかしいところがあるでしょうが……。仲良しならさっき何故この家で壮絶なバトルをしていたんだよ。
「それで、アリスちゃんと慧は仲がいいの?」
おい、さっきの五十嵐の話、本当に聞いていたのかよ。今日クラスに入ってきた留学生と俺が、当日中に仲良くなって家を訪ねてくるなんてことあるか! しかも異性ならなおさらだ。今まで、俺が留学生どころか友達でさえも、当日中に仲良くなった人を家に連れてきたことは無かったっていうのに……。
「はぁ⁉ あたしとコイツが何故仲良しって解釈になるのよ! 第一あたしはこんなセラ……ひかりを誑かす冴えない最低男なんかと仲良くなれるわけないじゃない!」
「……うん? 今慧のことなんて言った?」
「ひかりにお似合いのとってもカッコいいイケメンな男子と言いました!」
……ここまでくると、この見事な手のひら返しにツッコむ気力すら湧かなくなるな。