「「ハッピーニューイヤー!」」
「ハッピーニューイヤー」
リビングの掛け時計が十二時の鐘を鳴らす中、俺たちは新年を迎えたことを祝う。
そして、すかさず日本風の挨拶。
「というわけで、あけおめ! ことよろ!」
「こちらこそ、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「あけましておめでとう、今年もよろしく」
姉ちゃん、相変わらず適当だな……。五十嵐の丁寧な挨拶がある分、いっそう雑さが目立つ。
ちなみに、今この家にいるのは四人。珍しく母さんが帰ってきているのだ。
だが、その母さんは今、和室でぐっすり眠っている。仕事から帰って来るなり、『明日も出勤だから』とさっさと寝てしまったのだ。最近、母さんの勤め先がブラック企業であることが、ほぼ確信の域に達してきている。ウチは姉ちゃんもブラック生徒会の長を務めている。本当にウチにはブラックの呪いがかかっているんじゃないか?
「それじゃあ、二人とも早く寝ること!」
「へーい、でも姉ちゃんは続き見るんだろ?」
「当たり前じゃない! まだ後三十分くらい残っているし!」
姉ちゃんは俺たちに寝るように言った傍から、『四チャン~四チャン~』と呟きながらテレビをつける。我が家は代々一チャン派で、四チャンネルの裏番組なんて見ないのが我が家の風習……のはずだ。親父が家にいた時までは。何故姉ちゃんが四チャンの方が好きなのか、俺にはよく分からない。
そして、だいたい毎年、姉ちゃんはその裏番組を見終わると同時に他の番組をはしごして、いつの間にかリビングのソファーで寝てしまうのだ。エアコンとテレビがつけっぱなしになるので、非常に電気が勿体ないのだが……。自分の部屋で寝て欲しいものだ。
俺はそんな姉ちゃんに呆れながらも、五十嵐の後に続いて階段を上っていく。
俺の部屋は階段を上がってからすぐ、右側にある。五十嵐の部屋はその反対側。だから、俺たちは階段を上ったらすぐに左右に分かれることになる。
「んじゃ、おやすみ。寝坊するなよ」
「うん……。ねえ、慧」
「なんだー?」
早く寝たいんだが……。
その意図が通じたのか、五十嵐は何かを躊躇するように一瞬間を空けると、
「やっぱり何でもないよ、おやすみ」
そう言って、自分の部屋に引っ込んでしまった。
俺も自分の部屋に入ると、ベッドに寝っ転がる。
五十嵐が先程何が言いたかったのかは、何となくわかる。多分、光のことだ。
だが、何と言えば良いのか分からなかったのだろう。俺もあれだけ泣いたからな……。
五日経った今でも、俺はそのことに関して、何も踏ん切りができていない。
これからどうするのか、どうしていきたいのか……。今のままではダメだという思いばかりが先走り、行動が何もついてこない。
でもまあ、今日は眠いから明日じっくりと考えることにしよう。働かない頭で考えてもいいものは生まれない。そんな状態で決めたことが最善だとは到底思えない。
というわけで、おやすみ……。