だが、思春期っていう難しい時期に突入したからなのか、俺の気持ちはかなり複雑だった。まあ、今でも思春期っちゃ思春期なんだがな。
中学二年生の時、俺と彼女はちょうど別のクラスになった。
その時には既に彼女に対する恋心を意識していたもんだから、なんだか彼女と顔を合わせるのは恥ずかしくて仕方がなかった。だから、彼女を自分から遠ざけようとしていたんだ。
一方の彼女は、そんな俺にはお構いなしだった。
朝の登校時は、必ず俺の家の前までわざわざ来てくれたし、帰りも一緒に帰ろう、と俺を見かけるたびに誘ってくれたんだ。それに、校内にいるときは積極的に話しかけてくれていた。
だが、俺はその全てを断り、人目につく場所では彼女とできるだけ二人きりにならないように、わざと登校時間を遅らせたり、遠回りをしたりしていた。
もちろん、いつも俺と話しているもっちーと、察しの良い水無瀬は俺の恋心にすぐに気づいた。そして、二人はそれを色んな形で後押ししてくれた。
例えばクリスマスパーティー。あれは元々もっちーが、俺を彼女に告白させるために企画したものだ。その時は結構惜しいところまでいったけど、結局想いは伝えられずじまいだったけどな。
他にも、遊園地に遊びに行ったことだってあった。ちょうど昨日の遊園地みたいに、水無瀬が遊園地のチケットを手に入れてな。その時は四人で遊びに行ったが、色々と彼女と二人きりになるように、水無瀬ともっちーが結託して細工をしていたんだ。
特に観覧車。ゴンドラに彼女と二人きりで乗せられた時は、心臓がバクバクして告白どころじゃなった。本当にどうなるかと思った。そこでも結局告白できずに、後で二人に『ヘタレ』とか『チキン』とか散々弄られる羽目になったがな。
そんな、どう考えても様子がおかしい俺に対して、彼女は普通に接してくれた。いつものように笑って明るく振る舞って。そんな彼女を見るたび心が惹きつけられていたが、不器用な俺はそんな内心とは裏腹に、つっけんどんな態度を取ることしかできなかった。今の俺からしてみれば、当時の俺はただのツンデレ小僧としか思えない。
ただ、その時の俺にはどうしても、彼女が俺に対してどう思っているのかが分からなかった。果たして俺のことが好きなのか、はたまた何とも思っていないのか。その明るい笑顔の裏に何があるのか、俺には全く想像ができなかった。
そんなムズムズした状態で、中学二年生が終わろうとしていた。
――だが、彼女が、中学三年生になることは無かった。