「わぁ~‼ ここが遊園地なんだ!」
「あぁ……肩が痛ぇ……」
電車で揺られること一時間弱、俺たちは遊園地の最寄り駅で降りた。
改札口から出ると、すぐ目の前はもう遊園地。少し奥の山の上には大きな観覧車がゆっくりと回っているのが見える。
「ねえねえ、早く行こうよ!」
「あ、ああ……」
「どうしたの? 大丈夫?」
「いや、大丈夫って……。お前のせいなんだが……」
テンションが高めの五十嵐とは対照的に、俺は遊園地に入る前からテンションが低めだった。何故ならば、既に疲労感を感じていたからだ。
何しろ、電車に乗っている間、ずっと俺の肩に五十嵐の頭が預けられていたんだぞ! 最初の方は胸がバクバク鳴って落ち着かなかったが、それが落ち着いてくるにつれて、次第に重いな、と感じるようになった。しかも、乗り換えがあって一度五十嵐は起きたのに、乗り換えた途端に同じように寝てしまったのだ。
そのおかげで、遊園地の目の前の駅で降り立った時には、俺の肩はすっかり凝ってしまっていた。
人の頭って、意外と重いんだなぁ……。アニメやマンガではこういうシーンはかなりあるけれども、きっと寄りかかられている奴は肩の痛みに耐えているのだろう。ご苦労様です。
まあ、そんなことはさておき、今日はせっかくのデートなんだし、楽しまなくちゃ損だ! こんなことで痛がっていては、せっかくの楽しいデートが暗いものになってしまう。
「まあ、大丈夫だ。それより、行こうぜ」
「あ、うん!」
俺と五十嵐は手を繋いで、遊園地の正門へ向かう。完全に外から見たらカップルだが、この場では周りもカップルだらけなのでそこまで気にならなかった。
その周囲の人たちの大半は、わざわざ券売機の方に長蛇の列を作って、入場券を買っている。だが、俺たちはそんなものに並ぶ必要など無い! 何故ならば。
「いらっしゃいませ、入場券はお持ちですか?」
「これでお願いします」
俺がポケットから取り出したのは、水無瀬に貰った遊園地の入場券。しかも、一日フリーパスだから、別途料金が取られるアトラクションも、これさえ見せれば無料で楽しめる。
「ごゆっくり、行ってらっしゃいませ~」
係員の声を背に、俺たちは遊園地の敷地内に入る。
入ったところすぐにある、今日の日付が書かれた記念写真用のボードの前で、スマホで簡単に記念撮影をした後に、俺は五十嵐に尋ねる。
「それじゃあ、まずはどこに行く?」
「うーん……」
五十嵐は持ってきたパンフレットを眺め、しばらく考え込むと、周りをキョロキョロと見渡して、ある一点を勢いよく指さした。
「まずはアレに乗りたい!」
「……え」
そっちの方角からは、風に乗って微かに『キャー』という悲鳴が聞こえてきた。
そう、ジェットコースターである。
「いや、五十嵐さん、流石に初っ端からジェットコースターはキツいんじゃないかと……」
「……ダメ?」
「よーし、じゃあ行くかー!」
「わーい!」
もういいや! と俺は、やけくそになって二人でジェットコースターの方へ向かった。