「こ、これは……!」
ラッピングを丁寧に外すと、目の前にあったのは……!
「……石鹸、だな」
真っ白な四角い石鹸だった。しかし、このパッケージの石鹸は見たことがない。
すると、向かいに座っている水無瀬が中二っぽい笑い声をあげて、
「フフフ……我が石鹸(ザイフ)に選ばれたのは貴様か……」
お前か……。空気を読まずに中二っぽいプレゼントを選んでくるかと思ったら、意外とまともだったな。
「ちなみにこれ、どこのメーカーのものだ?」
「我が拠点で使いし希少なるザイフ……未来永劫用いるが好い……」
答えになっていないが、水無瀬の家で使っているというので、これはきっとそこら辺の店では手に入らない高級石鹸なのだろう。
石鹸が切れていたところだし、ちょうどよかった。高級ならば洗い心地もきっといいだろうし、早速風呂場に置いて、今日から使わせていただこう。
「ありがとな、水無瀬」
「……どういたしまして」
水無瀬はちょっと恥ずかしそうに俯きながら、小声で返事をした。
「もっちーはどうだ?」
「オレは……図書カードだな」
「それは私からのプレゼントだわ」
図書カードという声に反応したのは姉ちゃん。
「たった千円分しかなくてごめんね」
「いえいえ、とんでもない! ありがとうございます! 大切に使います!」
もっちーはかなりの読書家だもんな……。ならば、図書カードというのは嬉しいに違いない。
「ねえ慧、これは何……?」
五十嵐が手に持っているのは、黒光りする細長い流線形の物体。
これは……!
「これは……万年筆だよな⁉」
「「万年筆⁉」」
水無瀬と姉ちゃんの二人が驚きの声をあげた。
「これが万年筆なんだ~」
五十嵐は実物を初めてみるのか、へぇ~、と眺めている。
これをプレゼントに選んだ奴はいったい誰だ⁉ 見た感じかなりの高級品だ。プレゼント交換会に出してもいいのか⁉
「あ~、これオレだわ」
「えっ⁉」
「もっちー⁉」
「望月君⁉」
「ヴァルプルギス・フルムーン⁉」
意外なことにも、プレゼントの送り主として名乗りをあげたのは、もっちーだった。頭をかいて照れくさそうにしている。
「こんな高級なものをいいの? 結構高いと思うけど……」
「ああ、それに関しては心配いらないぞ。何せ、タダで手に入ったからな」
「「「「タダ⁉」」」」
おいおい、こんな高級そうな万年筆がタダで手に入るなんて、そんなことありえるのか⁉ まさかとは思うが、盗んできたんじゃないだろうな……。
「実は、オレの叔父さんが文房具のメーカーに勤めていてさ、期末の前日にテスターを頼まれてね。そのお礼に、って今日ここに来る前に数本貰ったんだ。んで、何本もいらなかったから……」
いやー、ラッピングを合わせるために、わざわざ小物を買って入れ替えるのは地味に大変だった、ともっちーは小さく漏らした。
期末前日の勉強会に出なかったのは、こういう事情があったのか……。
「ありがとう望月君。大切にするね!」
「おう!」
さて、これでプレゼントを誰にあげたのかが分からないのが俺と五十嵐、そして誰から受け取ったのかが分からないのが姉ちゃんと水無瀬だな。プレゼントはいい感じに混ざっているみたいでホッとしている。
さあ、どうなる⁉