~プレゼント交換会、現在までの結果~
・姉ちゃん:図書券千円分→もっちー
・水無瀬 :高級石鹸 →俺
・もっちー:高級万年筆 →五十嵐
つまり、俺と五十嵐のプレゼントが水無瀬と姉ちゃんに届けられているということになる。どっちがどっちなのかは、貰った本人たちがプレゼントを発表しないと分からない。
二人のうち、先に貰ったプレゼントを発表したのは、姉ちゃんだった。
「私は……マフラーと手袋のセットだわ」
じゃーん、と姉ちゃんはそのチェック柄のマフラーを広げる。暖かそうだな。
だがこれは、俺が選んだプレゼントではない。つまりこれは……。
「わたしが選びました」
五十嵐が控えめに手を挙げる。
姉ちゃんはいつも寒い寒いと言いつつも、結局マフラーや手袋をしない。そもそも、持っているかどうかすら怪しい。きっとこれで防寒対策もできるだろう。
早速マフラーを首に巻き付けて、手袋をすると、姉ちゃんは、
「ありがとー! ひかりちゃーん! 大好きだよ~」
「わふ」
五十嵐に抱き着いてそのまま押し倒した。非常に百合百合しい……。水無瀬もドン引きしている。
さて、これで五十嵐のマフラーと手袋のセットは姉ちゃんに送られたということが分かった。つまり、消去法で、俺のプレゼントは……。
「む、貴様からのプレゼントか」
「ああ、そうだ」
水無瀬は緊張した顔で、箱の中のもののラッピングを取る。そして、現れたそれは――
「??? これはいったい何?」
水無瀬が手に取ったのは、真っ白な直方体。スマホよりもだいぶ小さいが、より厚みがある。
まあ、このままだと使い方すら分からないだろうなぁ……。
「ちょっと貸してくれ」
俺は水無瀬にそれを渡してもらうと、その両端を掴んで、中央部分を上から押す。
次の瞬間、ガシャッ! という気持ちのいい音と共に、直方体が二穴パンチに変形した。
「「おおー!」」
「スゲーな……」
「トランスフォーム!」
俺からのプレゼントは、折り畳み式二穴パンチ。値段は少々お高めだが、筆箱にも入るサイズで、持ち運びにも便利な素晴らしい文房具だ。これを発明した人には何かの賞をあげたい。
俺は展開した二穴パンチを元に戻すと、水無瀬に返した。
「やってみ」
水無瀬はキラキラと目を輝かせてそれを受け取ると、早速展開する。
ガシャッ!
「おおっ!」
展開したそれをガチャガチャと畳むと、水無瀬は立ち上がる。あ、だいたい何をしようとしているか予想がついた。
そして、彼女はスッ……と左目の前に手をかざすと、急に動き始める。
「真の姿を顕現せよ! 我がホワイトフォーダブル・ツーホールパンチ!」
ガシャン! と水無瀬の突き出された手の先で、白い(ホワイト)折り畳み式(フォーダブル)二穴パンチ(ツーホールパンチ)は開いた。
あー、いかにも中二病がやりそうだ。しかも何だよ『ホワイトフォーダブル・ツーホールパンチ』って。ただ英訳しただけじゃないか!
「おお~」
五十嵐が感心した様子で、パチパチと拍手を贈る。おい、水無瀬が調子に乗るからやめろ。
「フフフ……素晴らしい……!」
「ちゃんと二穴パンチとして使ってくれよ」
「無論! 礼を言うぞ……その、慧」
「おう」
あれ、コイツ俺のことを名前で呼んだよね? いつも『レーゲンパラストの貴弟』とか『レーゲンパラストの嫡子』とかしか呼ばれないからものすごく新鮮だ。そもそも、水無瀬が俺に限らず人の本名を呼んでいるというところを見たことがない。
どうやら本人も言い慣れていないせいか、顔を赤くして俯きもじもじしている。そんなに恥ずかしかったのか……。
さて、これで全員のクリスマスプレゼントは交換し終えた。時計の針も五時を指していて、辺りはもう暗い。きっと外は寒いだろうし、もうそろそろ終わりにするべきだろう。
俺はちょっと変になった空気を打ち破るように、声をあげた。
「それじゃあ、これでクリスマスパーティーはお開きにするか!」
こうして、今年の楽しいクリスマスパーティーは終わったのだった。