「それじゃ、まずは何をするんだ?」
「そうだな……。まずはトランプゲームでもするか」
俺はちょうどテーブルの上に置いてあった一組のトランプを手に取り、カードを切る。ケーキができたという連絡もまだ来ないし、時間を潰すにはちょうどいいだろう。
ちなみに俺の家にはテレビゲームの類はない。何故なら、姉ちゃんは幼い頃からアウトドア派だったし、俺はそういうものにあまり興味が湧かなかったからだ。だから、小学生の時は周りのゲーム談義に加われなくて、大変だった思い出がある。
「トランプゲームと言っても色々あるぞ。いったい何をやるんだ?」
「そうだな……さしあたり『ダウト』あたりからやってみるか」
「だうと?」
五十嵐は今までにダウトをやったことがないからか、俺の言葉に首を傾げている。そもそもトランプで遊んだことすらないんじゃないか? 俺は各々にカードを裏にして配っている間に、五十嵐に簡単に説明をする。
「ざっくり言うと、一人何枚かずつカードを持って、場にカードを出していって、早く上がった人が勝ち、っていうゲームだ」
「なんだ、簡単じゃん」
「ただし、いくつかのルールがある。
一つ目、自分の番では、前の人より一だけ大きな数字のカードを出す。同じ数字なら何枚でも同時に出してOK。一の代わりはA、十の次はJ、その次がQ、その次がK、その次はAに戻る。
二つ目、カードは伏せて出す。その時に、自分が出したカードの数字を必ず言う。
三つ目、これが重要なんだが、カードを出す時に嘘が言える」
「嘘?」
「つまり、自分の手札に、次に出さなければいけないカードが無かったとき、別の数字のカードを嘘をついて出すことができる、ということだ」
例えば、次に自分がAを出さなければならないとき、もし自分の手札にAが無ければ、KとかJとかを伏せたまま出すことができるのだ。
「そして他のプレイヤーは、出したプレイヤーが嘘を言ったと思ったら、『ダウト』と言う。もし、出したプレイヤーが嘘をついていたら、場の全てのカードは出したプレイヤーのものになる。ただ、嘘をついていなかったら場合は、『ダウト』と言ったプレイヤーのものになるんだ」
「ふーん……簡単そうで難しそう」
「まあ、そんなもんだ。あとは、最初に親はAを出すこと、誰か一人が上がった時点でゲームは終了、他は持っているカードが少ない順に順位が高くなる、ってことだな。分からないことがあったら遠慮なく質問してくれ。それじゃあ、じゃんけんで親を決めるか」
じゃんけんの結果、最初にカードを出す親はもっちーになった。それぞれがちょうど配り終えたカードを、他人に見えないように裏返して、様々な表情をする。五十嵐は微妙な表情、水無瀬は無表情、もっちーは『キターーーー!』といった感じの表情を。
「よーし、勝つぞ!」
「……」
「うーん……」
俺は皆を見渡すと、ちょっとカッコつけてゲーム開始を宣言した。
「さあ、ゲームを始めよう」
「アッ●ェンテ!」
……流石ですね水無瀬さん。元ネタを見抜いて乗っかってくるとは。