俺は五十嵐と別れた後、ぶらぶらと売り場を彷徨っていた。
プレゼント交換会に参加するのはクリパのメンバーである俺、五十嵐、水無瀬、もっちーの四人だ。この中の誰にプレゼントをすることになるかは分からない。だから、誰に当たってもいいようなプレゼントを選ばなくてはならない。
まあ、その原則を無視して自分の好みを前面に押し出してくる奴もいるけど。某中二病とか某水無瀬さんとか。
しっかし、何を選べばいいんだろうか……。女子にも男子にも喜ばれる物……。文房具しか思いつかない。
とりま、文房具売り場に行ってみるか。
ということで文房具売り場に移動開始。途中でチラッと五十嵐の姿が見えたが、まだプレゼントを選んでいるようだった。
……そう言えば、プレゼントを買い終わった時の待ち合わせ場所を決めていないな。五十嵐はこの階に来るのは初めてだから、もしかしたら迷ってしまうかもしれない。
プレゼントを買い終わった後の待ち合わせ場所は、上ってきたエスカレーター前にしておこう。LIMEでそのように打つと、ポチっと送信。数秒で既読がついたし大丈夫だろう。
そんなことをしていたら、文具売り場に到着していた。とりあえず目についたシャーペンを手に取ってみる。うん……普通のシャーペンだ。何の変哲もないシャーペン。誰でも持っているようなシンプルなデザインだ。実は俺も持っている。
プレゼントにこれはないだろうな……。五十嵐も文房具類は足りているようだし。
他にも文房具を手に取ってみるが、プレゼントにはあまり向かないものばかりだった。
だが、唯一これかな、と思えるものを発見した。
俺はとりあえずそれを買い物かごに入れる。
そしてそのすぐ後、もう一つ思いつく。紙を留めるゼムクリップから連想した、髪留めという案である。うん、五十嵐の前髪も結構長いし、こういうものがあったら喜ぶんじゃないだろうか。五十嵐にはきっとオレンジ色なんかが似合うんじゃないか?
……というか何故俺はいつの間にか五十嵐にプレゼントをあげる前提で考えているんだ? さっき自分でルール説明しておいていったい何なんだよ!
俺は頭をブンブン振ると、一旦は手に取ったヘアピンを元の場所に戻そうと……して手を止めた。
数十秒後、俺はやや急ぎ足でレジへ向かう。
「いらっしゃいませ~」
「すみません、これとこれの包装を別にして下さい」
「分かりました」
これでプレゼントの購入は完了だ。俺はレジ袋にプレゼントを入れると、先程LIMEで五十嵐に知らせた集合場所へ向かった。