ケーキ屋を後にして、俺たちはデパートの三階に上った。
三階では色々な商品が売られているが、特にクリスマスプレゼントにピッタリな小物類がたくさん売られている。プレゼント選びには一番適しているだろう。
「たくさんあるね~」
「ああ。プレゼントは一つ選ぶんだぞ」
小物と言っても色々ある。文房具などの実用的なものから、バッジやビーズなどのオシャレアイテムまで、とにかく色々だ。
それに、企業の専門店もある。服屋だったり書店だったりCD店だったり……。それも選択肢の内に入る。
この中からいったい何を選ぼうか……。あげる相手も誰だか分からないからな……。
ここで、俺は五十嵐にしなければならない説明をすっかり忘れていたことに気づいた。
「あれ可愛い~!」
「ちょっと待て」
俺は駆け出そうとした五十嵐の腕を慌てて掴んで引き留める。
「どうしたの慧?」
「プレゼント交換会のルール説明を忘れていた」
「ぷれぜんとこうかんかい?」
五十嵐は首を傾げながら呟く。コイツは初参加だったことをすっかり忘れていた。
「俺たちのクリスマスパーティーでは、毎回『プレゼント交換会』っていうのをやるんだ。それにはいくつかルールがあって」
「ルール?」
「ああ。まず一つ目。プレゼントは一人一つパーティーに持ち寄る」
「一つしかダメなの?」
「二つ以上のプレゼントをあげたいのなら、同封して一つの包装にすることが条件だ。個人的にあげたいのなら交換会の外でやるルールだ」
プレゼント交換会は『公平・公正』がモットーだからな。
「二つ目。プレゼントを誰にあげることになるかは交換会が始まらないと分からない」
「え⁉ どういうこと?」
「交換会をやってみれば分かる」
「そんなぁ。教えてよ~」
「楽しみにしておいてくれ」
「……分かった」
別に秘密にしなくてもいいのだが、こうした方がドキドキ感が増すだろう、多分。もちろん、交換するときは、きちんとランダムになるような方法をとる。
「まあ、こういうことだ。だから、特定の個人向けのプレゼントを買うのはよろしくないから注意な」
「うん、分かった。一つ質問してもいい?」
「どうした」
「プレゼントは交換会に出すまで秘密なの?」
「もちろんだ」
持ち寄ったプレゼントを包装して出すからな。誰がどんなプレゼントを選んだのかは、交換して開けてからのお楽しみだ。
すっかり言い忘れていたが、それがいったいどうしたのだろうか。
「だったら、わたしと慧は一緒にお買い物しちゃダメだよね?」
「……そうだな」
確かに。五十嵐のプレゼントの中身が見えちゃうかもしれないからな。
「じゃ、わたしはあっちの方に行くね」
そう言って五十嵐は駆け出す。そして、少し走ると俺の方を向いて、悪戯っぽく微笑んだ。
「わたしの方を覗きに来ちゃダメだからね?」
「お、おう」
そう言って、彼女は棚の向こうに身を隠した。
さて、俺もプレゼントを選びますか。