俺たちは帰宅して昼飯を済ませ、近所のデパートにやってきていた。
デパートの中に入るとクリスマス一色。赤と緑とサンタ像だらけだ。
今日は平日だというのに、かなりの数の人がデパートを訪れていた。俺たちくらいの年代や親子連れはきっと、俺たちと同じように、午前中で学校が終わったか、既に冬休みに突入したかのどっちかだろう。カップルも多くいるな。
……俺と五十嵐も傍から見たらカップルのように見えるのだろうか。
「慧! 早く行こう!」
「お、おう」
そんなことを考えていたら、さっきからサンタ像の髭を弄りまわしていた五十嵐が、いつの間にか俺の前でこっちこっちと手招きしていた。
はしゃいでいるなぁ、と苦笑しながら、俺は五十嵐のもとへ向かう。
俺たちは並んでデパートの中を進んでいく。
「それで、プレゼント売り場はどこ?」
「あー、まずはプレゼントじゃなくて先にケーキを買いに行くぞ」
「分かった」
人の流れに乗って、デパートの一階を進んでいくと、左手にケーキ屋が現れる。いつもクリスマスパーティーの時とか誕生日パーティーの時とかにお世話になっている馴染み深いケーキ屋だ。
五十嵐は早速ショーウィンドウの中のケーキを眺め始める。そういえばコイツ、ケーキを見るのは初めてなのか? 目をキラキラと輝かせ、ショーウィンドウに顔をくっつけて凝視している。
「何か食べたいヤツ見つかったか?」
「全部食べたい……」
「そりゃ無理だ」
五十嵐の持っている一億円があれば買うことは可能かもしれないが、食べきれないだろうな。
あれあれ、五十嵐さーん、あなたヨダレが口の端から出ていますよー。
「いらっしゃいませ~、お決まりになりましたか~?」
「んーと……どれがいいかな?」
「これとかいいんじゃないか?」
俺が指さしたのはショートケーキ。ケーキを食べたことが無い人がいるなら、スタンダードなものがよいだろう。
「美味しそう! じゃあそれにする!」
五十嵐の方を向くと、彼女は俺の提案したままに賛成した。
五十嵐の承認も得られたことだし、店員さんに注文しよう。
「えっと、じゃあこれのLサイズでお願いします」
「え、Lですか、かしこまりました」
あ、二人だけでデカいケーキを食べるものと思われてるっぽい。もちろん、二人だけで食べるわけがない。
「それでは受け渡しが四日後からとなりますが、よろしいでしょうか?」
「はい」
四日後というとクリスマスパーティーの日だ。間に合うようでよかった。
俺は代金を払うと、ケーキ屋を後にした。
よし、次にクリスマスプレゼントだ! 俺たちはエスカレーターに乗って、上の階に向かった。