「これについてどう思います? 雨宮君」
「いや~どうなんだろう~、難しい質問ですね~アハハ……」
自分には許嫁などいないから知らん! と本当は答えたい。しかし、俺には許嫁(という設定で神から送りつけられた居候)が存在しているのでそれはできない! しかも、これは完全に俺と五十嵐のことを言っている!
ここで俺が答えたら、俺が五十嵐に対して何と思っているのかが丸分かりになってしまう! 相手が五十嵐だと知らなくても、俺に許嫁がいるということは姉ちゃんがある程度広めてしまったので、そういう人たちにも俺の考えを伝えることになる。それは嫌だ!
ここは笑ってごまかすしかない! でも乾いた笑みしか出ない!
「許嫁って言うのはちょっと想像できませんが、まあ、私としてはそんなことは無いと思いますけどね~」
そんな俺の不審な様子には全く気づかない様子で、彼女は深くかき回すことはせず、普通に自分の意見を述べてスルーした。
「続いては、ペンネームМ.Kさんからの投稿です」
「投稿ありがとうございます」
「えーっと……『最近友人のAとIがとってもいい雰囲気になっているが、何故か付き合わない。どうしたらいいんでしょうか』とのことです」
……これって俺と五十嵐のことだよね⁉ ねえ、そうだよねもっちー⁉
よりによって放送している側への質問が二連続で出たんだが……。冷や汗ダラダラである。
そんな俺の様子に、お隣が気づいた様子はない。
「雨宮君どう思いますか?」
「え、えーっと……これは本人たちの進展を見守るのが一番だと思います。きっとそのうち何かあると思います、よ?」
結構言葉は詰まったが、どうにかして他人事のように解答できた。その代わり、今ので寿命が少し縮まったけど。
それでも、もっちーの気持ちは分かったから、余計な手出しはしないで欲しい、というのは俺の偽らざる本心だ。教室にいるもっちーは今のできっと分かってくれるだろう。……きっと。
「その二人には頑張って欲しいですね~。おーっと、時間が来てしまいましたー。次回の放送は年明けの一月になります。それでは皆さん、メリークリスマス&ハッピーニューイヤー!」
「この放送は、一年C組の雨宮と、一年D組の湯崎がお送りしました。ありがとうございました」
何とかそう言うと、放送が終了し、俺は背もたれに寄りかかった。
はぁ……こんなに精神的に疲れた放送は初めてだ……。
と、隣の湯崎が早速弁当を食べながら聞いてくる。
「ねえ雨宮、今日の二つの投稿、全部あんた絡みだったね」
「気づいていたんかい!」
思わず叫んでしまった。気づいていないんじゃなかったのかよ!
「そりゃ、あんたの様子を見ていれば分かるよ。それで、Iって誰? 確かあんたC組だったよね?」
「……教えるもんか」
「うーんと、C組で『い』から始まる名字……石井……石原……あ、五十嵐ちゃんか」
「げほっ! そそそそ、そんなわけ、ないじゃないか~」
「図星だね。分かりやすすぎ」
湯崎はニヤニヤしながら納得するように頷いた。
もっちーみたいなことをしないでよ……。
俺は思わず天を仰いだ。