いよいよ学校も冬休み前最後の一週間に突入した。
俺たちの学校は、他の学校と比べれば、冬休みの始まりはかなり早い方だと思う。その分、終わりも早い……ということもなく、結果的に冬休みは他と比べて長くなる。
そんな冬休みを早く迎えたいのか、昼休みの開始を告げるチャイムの後の教室は、なんとなくいつもより騒がしい気がした。
俺はチャイムが鳴ると、早速弁当と水筒を持って、席を立つ。すると、後ろの五十嵐から声がかかった。
「どこへ行くの、慧?」
「ん……? あー、放送に行くんだ」
「放送?」
あれ? 五十嵐には言っていなかったっけ?
俺が説明しようと口を開こうとすると、それよりも先にもっちーが説明を始めた。
「慧は放送委員だから、お昼の放送をやんなくちゃいけないんだ」
「へぇ……」
「そうなのか」
水無瀬まで感心したような声を出している。そういえば不登校だったからコイツも俺が二学期から放送委員をしていることを知らないんだっけ?
五十嵐はなんだか残念そうだ。でも、いつもコイツ俺たちと一緒に昼飯食べてないよね? もしかして今日に限って一緒に食べるつもりだったのだろうか? それならなんと運の悪い。
ふと腕時計を見ると……おう、ヤベえ! もう行かないとマズい!
「んじゃ、行ってくる」
「おう、行ってらっしゃい」
「行ってくるがいい……」
「楽しみに待ってるね」
三人の声を背に、俺は放送室へ廊下を急ぐ。
十数秒で放送室に辿り着いた俺は、完全防音の分厚いドアを開けた。
「ごめん遅れた」
「大丈夫」
もう一人の放送委員である隣のクラスの女子は、既にマイクの前でスタンバっていた。俺も急いでその隣の席に座る。
ほどなくして放送が始まった。早速アナウンスを始める。
「これからお昼の放送を始めます。今日の担当は湯崎と雨宮です」
「よろしくお願いしまーす」
放送は一度もつっかえることなく滞りなく進んでいく。
音楽を流している間に、俺は傍らのパソコンを立ち上げ、学校のSNSの特設ページを表示する。
「それでは恒例の大人気・お便りコーナーです。本校のSNS特設ページへの投稿を読み上げています。本日は予告通り、恋愛がテーマです」
「まず初めにペンネーム……う゛ぁいおれんと・うぉーたーれすしゃろう、さん」
瞬時に脳裏に水無瀬の顔が浮かんで吹き出しそうになった。
「えーっとね……『我が質問に答えよ。即ち一つ屋根の下で許嫁同士が生活するのは普通か?』」
「ぶっ⁉」
遂にこらえきれなくって俺は吹き出した!