「「「クリパ?」」」
「そう、クリパ」
クリパって……まだ二週間以上先の話だよな。まあ、早めに話しておくことはいいことだが。
「ねえねえ慧、クリパってなに?」
「クリスマスパーティーの略」
まあ、これは知らなくても当然だよな。五十嵐はクリスマスなんて知らないのだから。
だが、予想とは裏腹に、五十嵐は『クリスマス』という単語を聞いた瞬間、勢いよく身を乗り出してきた。
「クリスマスにパーティーなんてやるの⁉」
「あ、ああそうだが」
「おかしい! クリスマスは神の子の誕生を祝う厳かな日のはずなのに、なんでパーティーなんてやるの⁉」
「ど、どうした五十嵐……」
俺は突然の五十嵐の豹変に驚きつつも、一方でこの反応にどこか納得していた。
五十嵐は神に仕えている天使である。彼女はそっち側の人物として、この行事を宗教行事として捉えているのだ。だから、大多数の人が本来の目的から外れて楽しんでいるようなこの状況は、彼女からすればあり得ないのだろう。
でも、こっちで生活する以上、これは受け入れて貰わないとかなり不便になるだろう。この国ではどんな宗教行事もだいぶライトなものに改変されてしまっているからな。
俺は五十嵐に小声で囁く。
「五十嵐、この世界の大多数の人はこんな風に祝うんだ」
「……そうなの?」
「ああ。だからここは受け入れてくれ。不平不満は後で俺が聞くから」
「むー……分かった」
五十嵐は唇を尖らせながらも、しぶしぶといった様子で受け入れてくれた。
「どうかな? 皆、二十四日は空いてる?」
もう一度もっちーは俺たちを見渡して提案する。
最初に反応したのは水無瀬だった。どこか嬉しげに言う。
「我の予定は何があっても対応できるよう、常に空けてある!」
「「つまり、ボッチなんだ(な)」」
「うぅ……」
ズバッと指摘すると、水無瀬は否定せずに涙目になって机に突っ伏した。
いや、そこは嘘でもいいから否定してくれ……。っていうか、まだ俺たち以外に友達いないのかよ。いい加減作れよ。その前に中二病を治せ。
「……まあ、水無瀬は来るとしてだ、慧と五十嵐さんはどうだ?」
「俺は別に構わない」
「わたしも大丈夫だけど……二十五日じゃないの?」
「二十五日はクリパはやらないよ。オレ、その日は予定が入っているから」
「そっか」
普通クリスマスパーティーは二十四日のイブの日に行うものだと思う。
もっちーは話を纏めるようにパンと手を叩くと、
「それじゃあ、メンバーはオレ、水無瀬、慧、五十嵐さんの四人で決定だね。場所はいつもの通り、慧の家でもいい?」
「ああ、俺は別に構わない」
「我は賛成」
「え、慧の家でやるの?」
「ああ。毎年そうしているからな」
「そうなんだ。じゃあわたしも賛成」
「それじゃ、これで決定ということで」
こうして、四人でクリパをすることが決定した。