翌朝、テスト初日。
朝早くに登校すると、既に教室の半分以上の席が埋まっていた。やはり、皆テストに必死なのだ。
「おは、慧」
「おはよう」
いつものようにもっちーと挨拶を交わして、その流れで会話が進む。
「なあ、今日の数学、自信あるか?」
「あまり。丹羽先生も難しいって言っていたしな」
「そうか……。それであの後、五十嵐さんは?」
「アイツなら、家に帰ってから付きっきりで教えたぞ。昨夜の時点では一通りは理解していたから、多分大丈夫……なはず」
「そうか~。つい一週間前までは方程式も理解していなかったのにな」
「ああ、大きな進歩だと思うぞ」
ちなみにその五十嵐はというと、今朝俺よりも早く学校に出発して、現在俺の後ろの席で教科書を見直している。
と、横から誰も聞いていないのに中二病が割り込んできた。
「フフフ、我は時を操りし者、数の扱いなど戯れに過ぎぬ……」
「はいはい、そーですか」
「いいよなー頭いい奴は」
「ううぅっ……」
ぞんざいに扱われ、水無瀬は涙目になった。まあいつものことだし、コイツは数学に限らず筆記試験においては最強クラスだ。頭がよい奴は変人だというが、中二病であるコイツはまさにその典型だろう。
そんなことを話していると、予鈴のチャイムが鳴り、教室に担任の堀河先生が入って来た。ただでさえ静かだった教室に完全な静寂が訪れる。
「それではテストを始めま~す。物をしまって下さ~い」
あー、遂にテストが始まるのかー。毎回訪れるこのドキドキ感。いったいどんな問題が出てくるのだろうか。
それでも俺が願うのはたった一つ。悪い点は取りたくない。
そんなことを考えているとテスト用紙が回ってきた。
俺は一部を取って後ろに回し、そのついでに五十嵐の様子を確認する。
俺とバッチリ目があった五十嵐は、結構自信があるような表情をしていた。
……この様子だったら大丈夫だろう。
そして、勝負開始のチャイムが鳴る。
「それでは、テスト開始~」
俺は勢いよく問題冊子を開いた――
☆★☆★☆
それから次々とテストが行われ、遂に最終日の最後の試験が終了した。
「それではこれでテストは終わりで~す」
堀河先生が教室を後にしたその途端。
「テスト終わったー!」
ともっちーが叫び、教室の笑いを誘う。
ハイテンションだな! まあ、クラスの皆も実際心がぴょんぴょんするほど浮かれているはずだ。冬休みが近いこともあってか、テストが終わった直後にもかかわらず、もう教室の至る所でカラオケやボウリングの話が持ち上がっている。
いやーそれにしてもテスト終わったよ。出来栄えはそこそこだと思う。
「慧、テストどうだった?」
「まあ、そこそこ」
「この程度の試験、遊戯に過ぎぬ」
「ハイハイ」
「そうですねー」
「ううっぅ……」
「五十嵐はどうだ?」
「……ちょっとヤバいかも」
五十嵐は自信なさげだ。まあ、それでも赤点は回避できるだろう。
こうして、それぞれの期末試験は終わったのだった。