もっちーに許嫁のことがバレてから次の授業日。
今朝学校に来た時、てっきり誰かからそのことを聞かれるかと覚悟していたのだが、予想に反して誰も聞いてこなかった。しかも、気づいた本人でさえも、まるで一昨日のことが無かったかのようなケロッとした顔でいつも通り接してきた。
どうやらもっちーは誰にもこのことをバラさなかったようだ。これでこそやっぱり俺の親友だ……!
そんなことを考えながら、一時間目の数学の時間にぼんやりともっちーの背中を眺めていると、突然丹羽先生が。
「じゃ、テストやるぞー」
え? 何だって? 今なんかテス……とかなんとか聞こえた気がするんだが。俺の空耳かな?
「ほらテストやるから、教科書しまえー」
うわー! マジかよ。テストなんて聞いてい……たよ! そういえばなんか言ってたよ先生! ちょうどその時もっちーに許嫁の件がバレそうになっていたから、意識がそっちの方に行っちゃってたよ!
まあでも大丈夫だろう。俺は普段真面目に授業を受けている勢だ。テストとは言っても所詮は小テストだし、ノー勉でも何とか乗り切れるっしょ!
「言っとくが、ノー勉だとほぼ確実に落ちるぞ」
……一秒後に見事にフラグを回収。もしかしたら俺には一級フラグ建築士の才能があるのかも。
そんなバカなことを考えている間に、テスト用紙が回ってきた。
もうこれは諦めて全てを受け入れるしかなさそうだった。
「はい、始めー」
俺は半ば諦めつつテスト用紙を表に返した。
☆★☆★☆
「オレ九十点だった。慧はどうだった?」
「二十点……」
俺はガックリと肩を落とす。
もちろん結果は凄惨だった。追試確定。ノー勉が祟った。
しかも先生の話によれば、期末試験にはこれよりも難しい問題がバンバン出てくるらしい。
「五十嵐、お前は?」
「……十五点」
後ろを振り返ると、五十嵐はヒラヒラと×ばっかりの答案を見せてくる。
おいおい……。俺以上に凄惨だな……。五十嵐も俺と同じ風に聞き逃していたのだろう。
「テストはこれ以上にムズいらしいから、面倒だよな~」
「これは本気で勉強しないとヤバい」
「んじゃ、勉強会でもすっか?」
「そうだな」
もうそろそろ近づいている期末試験の対策の意味を兼ねて勉強しないとな。
と、もっちーは俺の後ろにも視線を向ける。ここは俺の出番だな。
「五十嵐もどうだ?」
「いいの?」
「ああ、遠慮すんな」
「じゃあ、ご一緒させていただきます」
『三人寄れば文殊の知恵』って言うしな。これならきっと期末試験も乗り切れるだろう!