「……五十嵐」
「ん?」
「この箱には札束以外何か入っていないのか?」
「ちょっと待って……」
五十嵐は段ボール箱から次々と百万円の束を出していく。
こんな大金を、俺と五十嵐宛にいったい誰が出したのやら……。俺にそのような知り合いはいない。いるはずがない。
ならば五十嵐の知り合いが出したということになるが、この世界に来てまだ一週間も経っていないコイツに知り合いなんているか? そんなこと、イレブンナイン級にあり得ねぇ。
そもそも、宅配便でこんな現金を送ってくるのは、違法ではないのだろうか? それに、贈与税とか色々税金もかかりそうな気がするが……。
いったい、誰が、何の目的でこんなものを送りつけてきたのだろうか……。
どんどん机の上に札束が積み上がり、その数が四十を超えようとした時、五十嵐があっ! と声をあげた。
「どうした?」
「これ見て!」
五十嵐が取り出したのは四角く平べったい手のひらよりもちょっと大きい、片面に液晶がついた現代には欠かせない情報機器。
そう、スマートフォンである。ちなみに機種は見たところφphone(ファイフォン)のようだ。
でもいったい何故、札束の中にスマートフォンが? 意味が分からん。
「で、これナニ?」
「知らねえの? スマートフォンっていう携帯電話の一種だ」
まさかこれも知らなかったのか? 俺の住所は知っているクセに本当に一般常識に欠けているんだな! いや、天使だからしょうがないのかもしれないけど。
それにしても、このスマートフォンも俺たちに送られてきたものなのだろうか。間違えて箱の中に入ってしまった、という可能性もある。
五十嵐はスマホに触るのは初めてのようで、物珍しそうに見ている。
すると、突然スマホがバイブレーションした。五十嵐はうわっ! と驚きの声をあげて床に落としてしまった。
俺が拾って画面を見てみると、メールの新着表示。ロックはかかっていなかったので、ホーム画面にすると迷わずメールのアイコンをタップした。
横から五十嵐も画面を覗き込んで来る。
「えーっと……『差出人・神』」
舐めてんのか。ツッコみたい気持ちを抑えて、とりあえず文章を読み進める。
「『このメールを読んでいるということはきちんと段ボール箱が届いたということだね。じゃあその中身について説明するよ。まずこの箱だけど、これは僕からの贈り物さ。箱の中には大量の現金を放り込んでおいたから数カ月は生活できるはず。でもきっと上手く居候できているだろうから、これは雨宮慧にでもあげて生活の足しにでもしておいてね。ちなみに現金は一億くらいはあるはずだから確かめといてね~( `・∀・´)ノヨロシク
たぶん優秀なセラフィリちゃんのことだから、もう普通に生活できているよね。力無しでも大丈夫なように、この世界に降りる前にきっちり知識をインプットしておいたからさ。まあ、何か困ったことがあったらこのスマートフォンに入っている電話番号にかけてね~。
最後に雨宮慧との関係はどう? いいお嫁さんになれるように頑張れ(*゜▽゜)ノ
愛しの神より』」
……とんでもないメールであった。