帰宅した俺たちは、まず真っ先に荷物を下ろす。
そして五十嵐は早速リビングでテレビをつけ、俺は自室で宿題を始める。
俺はあまり頭のよい方ではない。加えて俺の通っている高校は結構ハイレベルだ。勉強をサボればテストで平均点を下回るし、普通に追試にも引っ掛かりかねない。
だったら、今日初めて学校は勉強する場所であることを知った五十嵐は、全く勉強せずに下でテレビばっかり見ていて良いのだろうか。このまま行けば、期末試験が悲惨になること間違いなしだが。
……まあ、五十嵐がどうなろうと、俺にはどうでもいい話だ。やっていないアイツが悪い。
そう考えて、一息ついたその時だった。
ピーンポーン。
インターホンが鳴った。誰かが訪ねて来たらしい。
俺は『はーい』と返事をしながら玄関に向かう。
サンダルを履き、ガチャリと玄関のドアを開けると、そこにいたのは緑色の帽子を被り、デカい段ボール箱を持った男性。
「宅配便でーす」
「ご苦労様です」
俺は労いながら伝票に印を押して、段ボール箱を受け取る。
「重いので気を付けてくださいね」
「はーい……」
重っ……。これ、結構重いな。いったい何が入っているんだ?
玄関のドアを閉めると、とりあえず箱をリビングに運び込み、どっこいしょとテーブルの上に置く。テレビを見ていた五十嵐も興味を持ったのか、テレビを消してこっちに近寄って来た。
送り主は……書かれていない。普通はきちんと書かれているはずなのだが。
しかも、宛名が『雨宮慧様・五十嵐ひかり様』となっている。この家に五十嵐が住んでいることは、家族の他には誰も知らないはずなんだが。
……これはマジで怪しい。いったい誰が送ってきたんだ? はっ! まさかこれは俺たちを監視しているテロリストが送って来た爆発物か⁉
「何が入っているのかな~?」
「お、おい! 待て!」
慄く俺に構わず、五十嵐は何の躊躇もなく、ベリベリと蓋をとめていたガムテープを剝がしていった。
慌てて制止しようとするが、五十嵐はそれよりも早く、段ボールの箱を開けてしまう。
その途端、ボン! という爆発音とともに、段ボール箱が勢いよく破裂した……ということにはならなかった。
俺は五十嵐の横から段ボール箱の中を覗き――そして二人して思わず声をあげた。
「なんじゃこりゃ⁉」
「えっ⁉」
……その段ボール箱の中には、万札の束が詰め込まれていたのだ!
見た限りすべてピン札、一束は百万円のようだ。箱の中には少なくとも一千万――いや、億は入っているんじゃないか?
……何だか頭がクラクラしてきた。総額でいったい俺の小遣いの何カ月分、いや何年分だ?
「わーい! お金だ!」
五十嵐は札束を持って無邪気に喜んでいたが、俺はそれどころではなかった。