千夜「『ごちうさトリビアクイズ~』!」
千夜「本日のチャレンジャーは、ラビットハウスの看板娘三人姉妹の皆さんで~す」
ココア「雑学は、お姉ちゃんにまかせなさ~い!」
リゼ「先輩として、負けられないな……!」
チノ「頑張ります」
千夜「早速ですが、第1問です。カフェやコーヒーの語源になったといわれるエチオ……」ピポン
チノ「エチオピアのカッファ地方です」ピンポンピンポン
千夜「正解よ~! カフェやコーヒーの語源になったといわれるエチオピアの地方の名前は何でしょう? 正解はカッファ地方でした~。さすがチノちゃんだわ~」
ココア「くっ、お姉ちゃんとして負けられないよ~!」
千夜「それでは第2問よ! 『ご注文はうさぎですか?』第7羽で私が持っていたシャロちゃんのパンt……」ピポン
リゼ「黄色だ!」ピンポンピンポン
千夜「正解よ~! 『ご注文はうさぎですか?』第7羽で私が拾ったシャロちゃんのパンツのリボンの色は何色でしょう? 正解は黄色でした~。リゼちゃんお見事!」
シャロ「いやああぁぁああああ! リゼ先輩にバレてたああぁぁぁぁぁ!」
ココア「皆早いよ~」
千夜「では、最終問題よ! この後の『ご注文はゾンビですか?』第9羽で新たに登場するキャラ――」ピポン
ココア「やっと私の番だね! 正解は――」
千夜「それでは、『ご注文はゾンビですか?』 第9羽をお楽しみください♪」
まず、七人のうち真っ先に先陣を切ってゾンビどもに躍りかかったのはシャロ。コーヒーを飲んでカフェインドーピングした彼女は、押し寄せるゾンビの群れに果敢に突っ込んでいく。
「みんなー! あくを退治しましょー!」
ハイテンションでそんなことを言いながら、シャロはブンブンと木刀を振るって道を拓いていく。
そしてシャロが拓いた活路を後ろからより強固にしていくのが、チノとココアの二人だ。左を担当するチノは、シャロの攻撃を掻い潜ってきたゾンビを、巨大なティースプーンの一撃で無に帰す。
反対サイドはココアの担当だ。ココアは地道に麺棒でゾンビどもを一体一体丁寧に倒していく。よって、数が多いとゾンビどもを倒し損ねてしまうことがある。
だが、そんなときも心配することなかれ。
「チノちゃん!」
「ココアさん!」
ココアのヘルプに余裕のあるチノが助け舟を出す。ココアがしゃがむと、その上をコーヒーの奔流が通り過ぎていく。そして、ココアサイドにはまるでゾンビなんかもともとそこにいなかったかのような空白地帯が生まれるのだ。
シャロをセンターフォワードとすると、ウィングに当たるのが、ココアとチノだった。二人は言葉を交わさずして完璧な連携を実現していた。
そして集団のちょうど中心に位置しているのは、シャロの重要な補給役・千夜である。七人の中で戦闘力が最も低い彼女は、他の六人に守られるようにして進んでいた。シャロのカフェインが切れそうになると、千夜はシャロにB○SS缶を投げる。そして、ナイスタイミングでシャロもキャッチして補給する。幼馴染同士、もはやシグナルさえなくても完璧な連携だった。
そして、そんな千夜を囲うようにして守っているのは、マヤとメグ、そして最後尾のリゼだ。リゼは、ゴム弾の入った銃で、後ろから迫りくるゾンビどもを片っ端から撃ちぬいていく。そしてその援護をマヤとメグが担っていた。
とはいえ、リゼは軍人の娘で武器の扱いが上手い。一人でほぼ完璧に後衛をこなしてしまうため、マヤとメグは千夜の護衛に徹している。
七人はこのように菱形のような陣形を構成していた。ちなみに、この陣形の発案者はリゼだ。
こうして彼女たちはほとんど消耗することなく、順調に道のりを消費していた。そして、彼女たちはついに階段の入り口まで到達した。
「リゼちゃん! 地下室はどっち?」
「そこを右に曲がれ! 階段を下りれば地下室だ!」
リゼがそう言うや否や、シャロは勢いよく方向転換し、階段を数段飛ばしに駆け下りてゾンビに斬りかかる。だが、その勢いもすぐに階段の下から勢いよく押されるゾンビに押し戻されてしまった。
「ゾンビが多いね……チノちゃん! えいっ!」
「当然です……地下室が近くなっているんですから……!」
ココアとチノは、階段下から押し寄せるゾンビの数に思わず足を止める。だが、逆に言えばゾンビの発生源にどんどん近づいていっているということだ。ここを切り抜けられなければ、ゾンビだらけ状態は永遠に解決できない。
七人は、階段の高低差を利用して、押し寄せるゾンビたちを捌いていく。これまでよりも格段に進むペースは遅くなってしまったが、確実に下へ下へと進んでいく。
「シャロちゃん!」
途中で、千夜がシャロのカフェイン切れを察知してB〇SS缶を投げる。そしてあとどれだけあるかを確認しようと風呂敷の中を探るが、その手は布に触れるのみで、一向に缶の固い感覚が手に伝わってこない。
風呂敷を広げてみると、すでにその中身は空っぽだった。全てシャロが補給で使ってしまったのだ。
「あらあら……」
「コーヒー缶がなくなったのか……⁉」
「ええ……」
千夜と背中合わせになったリゼが察して聞いてくる。補給物資が尽きたこと、それを正直に千夜は伝えた。
リゼは少し考えると、こう言った。
「このまま押し切るぞ。ここからだったら、コーヒーを取りに戻るよりも先を急いだほうがいい。地下室も近いからな! それに、いざとなったらチノの魔法に頼る」
戦場での素早い判断だった。後方からのゾンビどもの襲撃は、これまでのリゼの射撃のおかげで、かなり数が減っている。ならば、リゼのやるべきことは一つだ。リゼは隣で水鉄砲を今も構えるマヤとメグを交互に見る。
「私はこれからシャロの援護に回って前線に向かう。千夜を頼んだぞ、マヤ、メグ!」
「あいあいさー!」
「が、がんばります!」
そしてリゼは弾倉を素早く取り換えると、ココアとチノの前に出て、シャロとツートップで戦い始めた。
「シャロ! 援護するぞ!」
「り、りぜしぇんぱい!」
酔っていてもシャロはシャロ。隣にリゼが来て、ゴム弾を乱射し始めるとすぐに反応した。
「わたし……りぜしぇんぱいがいるなら百人力です……!」
途端に、木刀の振るわれる速度がどんどん加速していく。シャロの、『リゼ先輩にカッコいいところを見せなきゃ!』という気持ちが、そうさせているのだ。
ゾンビをたおしていくシャロの姿を少し後ろから見ていたリゼは、ほっと一つため息をつくと誰に向けるでもなく呟く。
「これなら、カフェインが切れる前に、地下室に辿り着けそうだな」
「リゼせんぱい? なにかいいましたか?」
「いや、何でもない。それより戦場での油断では禁物だぞ!」
「いえっさー!」
シャロとリゼは協力して、一気にゾンビを駆逐した。そして、ようやくその先に地下室の扉がようやく見えた。
「さあ、地下室が見えたぞ!」
リゼが大声を出すと、他の六人の目に期待が宿る。一応地下室というゴールは存在するものの、とどめのないゾンビの大群に、六人の中に閉塞感と無気力感が漂ってきていたのだ。
だが、それも地下室というものが目に見えたことで終わる。六人は本領発揮とばかりに、麺棒やティースプーン、ハリセンや水鉄砲でゾンビを塵に還す。まさに破竹の勢いだった。
地下室のドアは開け放たれていた。ついにシャロはその入り口から飛び込むようにして、部屋の中へと入った。六人も、その後ろから続々と地下室に入る。
そんな地下室の中央には、一人のとある人物が経っていた。シャロが顔を向け、その姿を認める。そして、驚きとともにその人物の名前を口にした。
「あなたは……小説家の、青山さん⁉」