シャロ「こんばんは、シャロよ。今回の話は……」
ココア「ばばーん!」
チノ「ちょ、ちょっとココアさん、シャロさんの邪魔をしないでください」
ココア「えへへ~ごめんごめん」
シャロ「ゴホン、というわけで気を取り直して、今回の話でココアとチノちゃんが出てきます!」
ココア「全国の妹のみんな~! ココアお姉ちゃんだよ~!」
チノ「ココアさんも妹じゃないですか」グサリ
ココア「チノちゃん、それは言わないお約束だよ~」
シャロ「それに、今回の話では、私たちは戦いません! 私にとっては嬉しい限りね!」ニッコリ
ココア「えーっ! つまんないよー! 全国の妹から発せられるお姉ちゃんパワーで、ゾンビなんてイチコロなのにー……お姉ちゃんビーム!」
(手から光線が出て遠くで爆発音)
チノ「お、恐ろしい……妹パワー……」ガクブル
シャロ「はい! というわけで、『ご注文はゾンビですか?』 4羽をどうぞ!」
千夜「あれ? 私の出番は……」
「ゴメンね、驚かせちゃって」
「もう……ケチャップを顔につけたまま応対するなんて、まったくココアさんは……」
数分後、意識を取り戻したシャロは、千夜、ココア、チノとテーブル席に座っていた。
ココアが顔につけていたものは、ゾンビに襲われたために出た血ではなく、ただのケチャップだった。それを聞いて、シャロは安心したが、対照的に千夜は少し不満そうに見えるのは気のせいだろうか。
「あはは……チノちゃんありがと~」
「それで、お二人は今日はこんな時間にどうされたんですか? もうそろそろ日付も変わっちゃいますけど……」
チノがちらっと視線を向けた先の時計は、午後十一時四十分を指していた。あと二十分で日付が変わる。普通、こんな深夜に人に会いに行くことはめったにない。だが、こうして会いに来たということは何らかの事情がある、そうチノは考えたのだ。
シャロと千夜は顔を見合わせる。どうやら、この二人はまだ外で起こっている状況を知らないらしい、と。
「あのね、信じられないと思うけど……」
二人はかくかくしかじかと事情を話した。気づいたら道に大量のゾンビが蔓延っていたこと。千夜の家からココアとチノに電話をかけたが、出なかったこと。またシャロの形態からリゼに電話をかけたがリゼも出なかったこと。不安になったので、様子を見に来たこと。
全てを聞き終わったとき、ココアがバンと机を両手で叩いて立ち上がった。
「大変! リゼちゃんを助けに行かなきゃ!」
「ココアさん、落ち着いて……!」
「でも、連絡が取れないっていうことは、もしかしたら襲われているかもしれないんだよ!」
「それは……そうですけど……」
ココアやチノにとってもリゼは大切な友人、そして何よりも仕事仲間だ。彼女の身に危機が迫っているとなれば放っておくことなんか出来っこない。
「まあまあ、二人とも。まずは連絡を取ってみましょう」
二人を見て、千夜が提案する。
「そうだね……よしっ」
ココアは自分の携帯電話を取り出すと、リゼの番号へ電話をかける。四人の間に近著した空気が流れる。プルルルルル……というダイアル音が、彼女たちには途轍もなく長いように感じられた。
そして数秒後、プツッ、という特徴的な音がした。
『も、も……』
「もしもし⁉ リゼちゃん⁉」
『その声は……ココアか!』
電話口から漏れるその声に、三人が一斉に立ち上がる。
「リゼ先輩……! 無事だった……」
「シャロちゃん、しっかりしなさい」
安堵のあまり倒れ込みそうになったシャロを、慌てて千夜が支える。
ココアは携帯電話の音量を最大に上げると、全員に聞こえるように携帯電話をテーブルの真ん中に置く。
「リゼちゃん、そっちは大丈夫?」
『あ、ああ、心配するな! だいじょう……なんだコイツら!』
次の瞬間、ババババババという乾いた音、そしてバタンガコンという壮絶な音が電話のスピーカーから響いた。その中に小さくゾンビの呻き声もあった。
「や、やっぱり、無事じゃないじゃない!」
シャロの顔が青ざめる。バババババという音は間違いない、電話口の向こうでリゼが銃を発砲している音。ゾンビの呻き声も聞こえることから、リゼは現在進行形でゾンビに襲われているのだ。
そのことを四人は瞬時に察する。
『クソッ、後から後から湧いてきやがる……!』
ドコッという鈍い音とともに、ゔあああとゾンビの断末魔が遠ざかる。
「リゼちゃん、今どこにいるの⁉」
『家だ……! なんだコイツら……! 来るなぁっ! 来るなぁー!』
「リゼちゃん? ……リゼちゃん!」
次の瞬間、ガタンという音とともに、バババババという銃声。そしてそのままリゼは反応することなく、電話は一方的に切れた。ツー、ツー、と無機質な音が流れる。
「……リゼさん、全然大丈夫じゃないです」
「リゼちゃん全然大丈夫じゃないわね……」
「リゼせんぱぁい……! リゼせんぱぁい……!」
シャロは涙目になってしまう。こんな切れ方をしてしまったら、不安になるのは至極当然のことだろう。
そして、ココアは立ち上がると、皆を見回していった。
「皆、リゼちゃんを助けに行こう!」