朝のSHRが終わった後、一時間目が始まるまでの短い休み時間。後ろの席の五十嵐が早速俺に尋ねてくる。
「ねえ慧、学年レクリエーションって何をやるの?」
「ああ、球技大会のことだな」
「球技大会?」
「そうだ」
俺たちの学校は毎学期、学年レクリエーションという名目で、球技大会を行う。学年レクリエーションはただの小さなイベントではない。一学年が八クラスあるので、体育祭や合唱祭、文化祭に次ぐ、大規模なイベントになるのだ。
三学期はもう期末試験も終わったことだし、授業もほとんど終わっているので時間が空きつつある。二学期はまる一日かけて行ったから、今回もその空き時間を利用して一日中やるんじゃなかろうか。
「今回は勝ちたいぜ~」
「もっちーには期待してるぞ」
「うっ……期待が重すぎるぜっ……!」
実際、バスケ部のもっちーは、前回の球技大会で大活躍していた。ちなみにその時の球技はサッカー。もっちーはバスケ部である。何故バスケ部の人は、バスケに限らず球技全体が上手なのだろうか。永遠の謎である。ともかく、もっちーはこのクラスの主力として頑張ってもらわなければならない。
「球を用いた遊戯……」
「……そういや、水無瀬は球技大会に参加することが初めてだったか」
確か、一学期と二学期はちょうど不登校期間で参加できなかったんだよな。
「我は球を扱うのは得意ではない……」
「大丈夫だ。競技によっては参加するだけでも意味があるからな」
水無瀬は体育が得意ではない。むしろ苦手な方だ。しかし、参加するだけでもクラスに貢献できる可能性はある。そう、例えばドッジボールのように。
「球技大会ね……」
「アリスは嫌なの?」
「そんなわけないじゃない! ひかりと一緒に出られるなら、何の競技だってやってやるわよ!」
ふんす! と鼻息荒く、アリスはそうまくしたてた。五十嵐のことが絡むと単純になるなぁ……。
「何か言った」
「いえいえ、その熱意があればクラス優勝も夢じゃないなあと思った次第でございます」
この熱意のベクトルが上手い方向に向けば、絶大な威力を発揮しそうだ。
「しかし、問題は競技が何になるかだな」
「そうだな~。前々回はバスケで、前回はサッカーだったから、今回はそれ以外だろうな」
最近の体育は球技じゃないし、いったい何になるんだろう。
ちなみに、競技は学級委員会で決められるので、俺たちには天下り式に知らされるだけだ。次の時間では、その競技でのチーム編成について話し合うことになる。
一時間目の開始を告げるチャイムが鳴る。堀河先生が横で見守る中、学級委員が教壇に出てきて、球技大会についてのLHRが始まった。
教室が静まる。いったい何の競技になるのか、クラス中がその発表を待ちわびる。
そして、学級委員が口を開いた。
「今回の球技大会の競技はバレーボールです」