「御者さん。馬車を止めて。」
「え? どうして・・・」
「今すぐ。」
「は、はい・・・」
「ボー? 何してるの?」
「ありがとう。シー。・・・さようなら。」
そう告げたボーは、馬車の外に飛び出した。
・・・この声は、詠唱?
《この命を持って、かの命を葬り給え。【revenge】》
途端、鳴り響くのは黒い音。
命を引き裂く、告別の音だ。
『愚かだ。我に刃向かおうなど。』
あたまに、声が響く。
ボーは、今何をした?
大地が揺れる。
空気がしびれる。
これは、何だ?
この、高ぶる感情は?
「ああははっはははは!」
殺れ!殺戮の限りに!
雪辱を! 屈辱を!
全てをぶつけろ。
『な、なんだ貴様! 我は魔王の右腕で・・・』
《告げろ。終演の鐘。【The end】》
俺は、無心で詠唱していた。
大きな鐘が、あたりを揺らし始める。
周りの雲が散り、太陽が散り始める。
何も考えたくない。
・・・ボーは生きているだろうか。
╋╋╋╋╋
「本当にいいのか? シー。」
「大丈夫だ、ヤミ。」
最後の街。ここから先は険しい道のりとなる。
・・・記憶を失ったボーを、置いていくわけにはいかない。
彼女は、もういない。
彼女が失ったのは、記憶だけではない。
彼女は、【魂】を犠牲にして魔法を放った。
彼女の魔法は、【リベンジ】という魔法だ。何かが犠牲になった時に、その効果を発揮する。
彼女は、自らの魂を傷つけ、魔法を行使した。
彼女の記憶が、魂が、彼女に戻ることはない。
だから。
ここからは、二人旅になるだろう。
「本当に大丈夫か? ボー。」
「ああ。こんなことは、もうなれている。」
「・・・そうか。」
小さく、小さく、ヤミはうなずいてくれた。
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