<超音速旅客機開発におけるソニックブーム騒音の低減および予測>
2003年に超音速旅客機であるコンコルドが営業飛行を停止して以来,新たな超音速旅客の運航が行われていません.超音速旅客機の開発が難しい主な原因は,ソニックブーム現象によって生じる騒音が技術的な課題であるためです.ソニックブームとは,飛行機から発生した衝撃波が地上まで長い時間・距離を伝わり,地上で轟音を引き起こす現象です.この衝撃波が大気中を長く伝播するため,気象(温度,湿度,風など)による騒音への影響は無視できません.特に,地上付近に発達する乱れた風(大気境界層内の乱流)によって騒音レベルが大きく変動します.
本研究では,気象条件がソニックブーム騒音に及ぼす影響を調査しています.下記の図は,ロンドンからニューヨーク間の超音速飛行に対して,10年間の気象データを用いて年間のソニックブーム変動を調査した結果になります.季節に応じて騒音レベルが変化しているのが分かります.将来,気象に応じて飛行ルートを変更することで,最も低騒音な飛行を実現できる可能性があります.
10年間の気象データを基にソニックブーム騒音を評価[関連文献1]
関連論文:
R. Iura, T. Ukai, H. Yamashita, B. Kern, T. Misaka, S. Obayashi, “Impact of atmospheric variations on sonic boom loudness over 10 years of simulated flights,” The Journal of the Acoustical Society of America 156 (3), pp.1529-1542 (2024). https://doi.org/10.1121/10.0028375
T. Ukai, K. Ohtani, S. Obayashi, “Turbulent jet interaction with a long rise-time pressure signature,” Applied Acoustics 114, pp. 179-190 (2016). https://doi.org/10.1016/j.apacoust.2016.07.015