私達は、生体分子特にタンパク質の人工的で合理的な設計を目指し、タンパク質の性質、特徴、機能の法則解明に取り組んでいます。
タンパク質は、20種類のアミノ酸からなる多量体であり、わずか80アミノ酸からなるタンパク質であっても、あり得る種類としては10の100乗を超えます (宇宙全体の原子数は10の80乗)。多様性が高いため多彩な機能を示すことができる一方で、タンパク質の性質や機能を支える特徴をきちんと理解することなしに、合理的に人工タンパク質 (新奇タンパク質; De novo protein) を設計し直すことは困難です。そのために、大規模解析法と深層学習をはじめとする機械学習とを組み合わせることで、その法則解明を目指しています。
Bio-Stationのポッドキャストにて、これまでの研究、今後の方針などについてお話いたしました。(生物学専攻の学部生以上向きです)
Machine learning for protein engineering seminarにて、主にTsuboyama Nature 2023の内容についてお話しました。(英語、専門家向きです)
タンパク質同士の相互作用は、タンパク質にとって最も基本的かつ重要な機能です。タンパク質相互作用は、シグナル伝達、代謝などあらゆる生体機能に関係がありますし、更に機能的な人工タンパク質 (例えば、新型コロナウイルス感染症を防止できる人工タンパク質、スイッチのように働く人工タンパク質など)を設計する上でも重要です。そのため、タンパク質同士の相互作用にとって、どのような特徴が重要なのかなどを解明していきます。
タンパク質は常に翻訳(合成)されてると同時に、オートファジーやプロテアソーム系によって分解されることで、適切な品質管理がなされています。私達ヒトは2万種類程度の遺伝子を持っていますが、その中で600-800種類程度はタンパク質分解に関わっています。Tsuboyama et al 2023 Nature のデータを用いて構築されるタンパク質の折り畳みの構造予測モデル (in preparation) が構築されつつある一方で、生体内・細胞内にてどのようなタンパク質がより安定化・不安定化ということは不明なままです。このようなタンパク質の寿命のメカニズムの解明を目指します。
小分子化合物に比して、人工タンパク質の臨床上の大きな利点の一つは、タンパク質同士の相互作用を制御できる点です。例えば、がんでは、Ras-Raf、Myc-Maxなどの相互作用を制御することが期待されます。一方で、そのような重要なタンパク質同士の相互作用の殆どは、細胞膜上や細胞外ではなく、細胞質内で起こっています。そのため、そのような重要なタンパク質同士の相互作用を制御するためには、細胞質内へと効率的に移行する必要があります。人工タンパク質の医学応用を見据え、そのような細胞質内へと移行するのに必要・十分な特徴を探ります。