●発足当時の活動

当研究会は、平成6(1994)年11月に発足、同年11月22日に第1回研究会を開きました。以後、活発に活動を続けて参りました。

1994年度 研究会発足、研究会2回開催

1995年度 研究会5回開催、うち見学研究会1回

1996年度 研究会4回開催、うち見学研究会2回、第1回総会開催

1997年度 研究会6回開催、うち見学研究会3回、第2回総会開催

1998年度 研究会6回開催、うち見学研究会2回、第3回総会開催、第1回「トライボコーティングの現状と将来」シンポジウム開催 (1999年2/18(木) 9:30-17:15 於 工学院大学 新宿校舎3階 0312教室、参加者245名、特別講演2件、各論10件)

1999年度 研究会6回開催、うち見学研究会3回、第4回総会開催、第2回「トライボコーティングの現状と将来」シンポジウム開催(2000年3/7(火) 於 北とぴあ つつ じホール、特別講演1件、各論(会員講演)9件) (協賛団体:日本トライボロジー学会、表面技術協会、日本熱処理技術協会、イオン注入表層処理研究会、日本金属学会、日本表面科学会、日本材料試験技術協会、日本塑性加工学会、精密工学会、日本鉄鋼協会、応用物理学会、日本真空協会、型技術協会)

2000年度 研究会5回開催、うち見学研究会1回(2000,10/19, 神戸製鋼所・大阪大学(兵庫、有馬温泉))、第3回シンポジウム(2001,3/21, 北とぴあ)

2001年度 研究会6回開催、うち欧州ツアー1回(2001,9/1, ドイツ•フランス•スイス)、見学研究会1回(2001,10/4 富士重工業・日本原子力研究所(群馬、伊香保温泉))、第4回シンポジウム(2002,3/1, 北とぴあ

2002年度 研究会5回開催、うち見学研究会1回(2002,10/3, 日立製作所・ひたちなかテクノセンター(茨城、阿字ヶ浦))、第5回シンポジウム(2003,3/25, 北トピア)

2003年度 研究会5回開催、うち見学研究会1回(2003,10/16, ミツバ・群馬産業技術センター(群馬、薮塚温泉))、第6回シンポジウム(2004,3/4, 北とぴあ

2004年度 研究会5回開催、うち見学研究会1回(2004,10/21, 岩手大学•ベスト(岩手、花巻温泉))、第7回シンポジウム(2005,3/2, 理研

2005年度 研究会5回開催、うち見学研究会1回(2005,10/20, 北陸先端大•金沢工大他(石川、辰口温泉))、第8回シンポジウム(2006,3/3, 理研

2006年度 研究会5回開催、うち見学研究会1回(2006,11/30, 日立金属・島根県工技センター他(島根、玉造温泉))、第9回シンポジウム(2007,3/2, 理研

2007年度 研究会5回開催、うち見学研究会1回(2007, 10/25, 片桐製作所・ミクロン精密(山形、上山温泉))、第10回シンポジウム(2008,2/29, 理研

以後年5回が定着(第25回シンポジウム(2023,2/24開催)は第145回研究会、2022年度総会(2022,6/3)は第27回)。

岩木正哉会長(当時)の巻頭言(出典:2000年3/7開催、第2回「トライボコーティングの現状と将来」シンポジウム予稿集)。

トライボコーティング[]

岩木正哉

理化学研究所 物質基盤研究部 表面解析室

 1970年代の初頭,無公害化の観点から真空中で薄膜を形成するドライプロセス技術が注目され始めた。ドライプロセスには,薄膜形成における低温化,処理原料の少量化,廃棄物の少量化など多くの魅力的な特色がある。代表的な技術はイオンプレーティング,スパッタリングやレーザーアブレーションであった。なかでも,イオンプレーティングは,回り込み効果がある,低温での表面処理が可能である等のキャッチフレーズのもとで,トライボロジーの分野で大々的に研究・開発が進められた。あれから30年,イオンプレーティングは様々な分野で利用され,新しい応用分野の探索が現在も続いている。

 同じ頃,シリコンへのイオン注入が半導体への不純物添加法として研究が進められていた。当時,シリコンへの不純物添加法としては,熱拡散法が主流であった。半導体デバイスは真空管に代わる小型,軽量,省エネルギー電子デバイスとして注目され,特に,電子計算機用のデバイスとして集積化が試みられていた。シリコン基板面へ均一に不純物を添加するには熱拡散法では限界が認められ,イオン注入がその問題を解決する技術として注目された。

 イオン注入は(小型)粒子加速器を利用した粒子添加法である。したがって,当初,主な研究は原子力研究所を中心に進められていたが,イオン注入がMOS-FETの閾値電圧制御に有効であることが認められ,電子デバイス産業分野でイオン注入技術は急速な進展を示した。MOS-FETの閾値制御は比較的幼稚な装置で十分であったが,半導体デバイスの高度化に伴って,イオン注入装置は高・低電圧化,大ビーム電流化など様々な特性が改良された。加速器のイメージを取り払うこと,ハンドリングの良さが追及され,今日,ほぼ満足されている。

 1975年中頃,このイオン注入をトライボロジーに応用する動きがイギリスで始まり,1985年頃にピークを迎えた。Ti-6Al-4V人工関節では大成功を収めたものの,広い範囲に普及しなかった。処理層が浅いこと,3次元処理が難しいこと,色がつかないことなどがその主な理由であろう。ひとつの解決法が薄膜形成とイオン注入を同時に行うダイナミックミキシングによる薄膜形成である。この方法は電気かみそりの刃先の処理で成功を収めた。しかし,3次元処理は困難である。そのためプラズマ中に試料を置き,試料にマイナスのパルス高電圧を印加し,イオン注入するPBIIPSIIPIIIとも呼ばれる)が注目され始めた。この方法は,条件によっては薄膜形成が可能で,3次元ダイナミックミキシングと呼んでもよい。どこまで3次元化が可能かなど様々な研究が行われている。

 昨年,PBII国際ワークショップが京都で行われた。基板にマイナスのパルス高電圧を加えるPBIIは,プラズマ窒化,PVDやプラズマCVDと似ている。PBIIでは,電圧の低下が進み,プラズマ窒化やプラズマCVDでは電圧の上昇が進んでいる。これらの技術的違いがどこにあるのか議論されたが,明瞭な答えはない。「名は体を表す。」と言われる通り,名は重要である。どのような名が良いか,一考する必要もある。

 今から30数年前,グロー放電中での不純物添加が試みられている。原理的には現在のPBII手法と変わりはない。一つ一つの技術が向上し,プラズマ,放電など様々なファクターが自由に扱えるようになった今日,トライボコーティング技術としてのPBIIへの期待は大きい。

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