[台本] 東西東西・噺屋:天犬 大火の興行 ─第九幕・進一ノ断片:その断片、その愛、仮令、世界が生まれ変わっても─
○亘理 進一(わたり しんいち)
??、男性
大火たちの学校で体育と化学の教諭をしている。
兄貴肌で頼りになる青年でニキータの暴走を止める役割をしている。
実はただの人間では無く、ニキータによって改造された“改造人間”。
戦闘能力を有し、戦闘時は黒い魔鎧を瞬時に身に纏い、凄まじい力を振るう。
○ニキータ・マクスウェル
??歳、女性
天才であり愚者。傲慢でウザく飄々としている。
そんな人格の持ち主だが生徒たちの事は真面目に考えている。
噂ではなんか凄い研究をしているらしい。
好きなタイプは兄貴肌。「ちゃんと本名ですよっ♪」とのこと。
○司祭服の男
??歳、男性
進一とニキータの前に立ちはだかる男。
■■■■■■・■■■という力を持つ。
亘理 進一♂:
ニキータ・マクスウェル♀:
司祭服の男♂:
↓これより下からが台本本編です。
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~厭離穢土欣求浄土・大脳~
進一:「────いっててて……
どこだァここ?俺は確か大火(たいが)たちの師匠の指示で学校に居て……」
ニキータ:「きゃああああああああああああっ!!!!!!!」
進一:「ッ!!ニキータ!!!」
間。(進一、ニキータの声がする方へ駆ける。)
進一:「ニキータ!!!!!!大丈──」
ニキータ:「私の学園が~~~~~~~~~~~~!!!!
なんですか!!この生命体チックな内装!!!!!
プレステ2全盛期ファンタジーゲームの最終ダンジョンか何かですか?!?!?!」
(ニキータ、泣き叫ぶ。)
進一:「……ぶ、そうだな……」
ニキータ:「しっ!進一(しんいち)~~~~~~~~~~~!!!」(進一に突進する。)
進一:「おーおーどうしたどうした。」
ニキータ:「これ!戻るのでしょうか!!!私の楽園たる学び舎は帰ってくるのでしょうか!!!!!」
進一:「俺に聞かれても分かんねぇよ……」
ニキータ:「うぅ……もしも事態が収拾したとしても私の学園がこのままでは……」
進一:「ま、まあ……なんとかなるだろ……」
ニキータ:「ぐす……ぐす……
もしもの時は尊海(とうとうみ)さんにどうにかしてもらいましょう……」
進一:「そうだな。
……さて……ここはどこで、どうすりゃ良いんだ……?」
司祭服の男:「ここは厭離穢土欣求浄土(おんりえど・ごんぐじょうど)・大脳(だいのう)。」
進一:「ッ!!」
ニキータ:「っ!!」
司祭服の男:「そしてお前たちのするべき事は、“私を破壊する事”だ。」
(司祭服の男、進一とニキータの前に現れる。)
ニキータ:「そんな……!」
進一:「お前はッ!!」
司祭服の男:「ほう。どうやら、お前たちは私の事を知っている様だな。
だが生憎。私はお前たちの事を断片的にしか知らない。
私はただ、ここの支配権を持っていた“赤星(あかほし)”とか言う者の身体を奪い、擬似顕現しただけの幻影。
お前たちにほんのちょっぴりだけ縁が“あった”だけの亡霊だ。」
(司祭服の男、構える。)
司祭服の男:「その“断片”というのも、“やり残し”の様な物でしか無いがな。」
ニキータ:「……。」
進一:「……。」
司祭服の男:「さあ、構えろ。“改造戦屍(かいぞうせんし)ファルシファイ”……ッ!」
進一:「……だ、そうだ。
構わないな、ニキータ。」
ニキータ:「……ええ、構いません。
彼がそう言うのであれば……私たちもただ与えられた責務を全うするのみ!
やっておしまいなさい!
シンイチ!いいえ!ファルシファイ!!完全開錠(かんぜんかいじょう)よっ!!」
進一:「相分かったッ!!
──おおおおおおおおおおおおッ!!“完全開錠(リリース)”!!!」
(進一の身体を一瞬にして黒い魔鎧が包み、赤黒いマフラーが生える。)
進一:「「キッシャアアアアアアアアアアアッ!!!」」
司祭服の男:「黒き“魔鎧(まがい)”……久しいな!ファルシファイッ!!!!」
進一:「「こっちの台詞だッ!!!!!!!」」
(進一と司祭服の男の拳がぶつかり合うッ!!)
ニキータ:「ッ!!完全体のファルシファイと正面から打ち合って互角ですって!?
彼!人間では無いのですかッ!!?」
司祭服の男:「言っただろうッ!!私はアカホシという者の身体を奪ったとッ!!
この身体は“赤色超巨星(せきしょくちょうきょせい)”級の力を宿しているッ!!
かつてのひ弱な私と侮るなよッ!!!!」
進一:「「ただの人間だった時から侮った事なんか無ェよッ!!!!」」
司祭服の男:「隙ありッ!!」
進一:「「ッ!!」」
ニキータ:「シンイチッ!!!!」
進一:「「ぐふぉおっ……!」」
間。
進一:「「……あれ?」」
司祭服の男:「…………。
貴様の頭蓋を貫いた……その感覚はあった。
……が、何故貴様は無傷なのだ?何故“ズレている”のだ?」
進一:「「……??????????」」
司祭服の男:「……“改造戦屍(かいぞうせんし)”の仕業では無い……のであれば、お前の仕業か。」
(司祭服の男、ニキータの方を見る。)
ニキータ:「ご明察です。
もしかして、この私が“見ているだけ”だと思いましたか?
シンイチへのダメージは、この私が居る限り0だと思ってくれて構いませんよ!!」
司祭服の男:「ほう……であれば。」
(司祭服の男、一瞬でニキータとの間合いを詰めるッ!!!)
ニキータ:「ッ!!!」
司祭服の男:「お前を先に消すだけだ。」
進一:「「甘いぜ。」」
司祭服の男:「ッ!!」
進一:「「うらぁッ!!!」」
司祭服の男:「くッ!!!」
進一:「「この俺が居る限り、一瞬足りともニキータに触れさせないぜ。」」
間。
司祭服の男:「……ぐ……“神速到達者(アクセラレイター)”の力も保持しているとは……!!」
ニキータ:「ありがとうございますシンイチ。」
進一:「「なーに!良いって事よ!!」」
司祭服の男:「一対二、か。」
進一:「「……敵が元々の奴のまんまなら俺一人で良かったんだが。
アンタが相手するなら、俺一人じゃ絶対に勝てねぇからな。」」
司祭服の男:「……。」
進一:「「卑怯だと思うか。」」
司祭服の男:「いいや。元より、これは世界の命運を賭けた死合。
それに割り込んだのは私の方だ。そちらの事情を考慮する。」
ニキータ:「たとえ、シンイチや貴方が一対一を望んだとしても、私はシンイチをフォローし続けます。
だって、私はもうシンイチを失いたくないから。」
司祭服の男:「……ほう、その心は。」
ニキータ:「これは私のかくg──」
進一:「「愛だッ!!!」」
ニキータ:「……へぇえ!?!?!」
司祭服の男:「ならば問おうッ!何故そこで愛ッ!!」
進一:「「我欲の為だッ!!!
俺は世界一つを改竄し、破壊してまでニキータを選んだッ!!
俺が生きる為にはニキータが必要だッ!!!
それを愛と呼ばずなんと言うッ!!!」」
ニキータ:「し、シンイチ……!そ、そんなことを考えていたのですか……!!」
司祭服の男:「はああああああああッ!!!!」
進一:「「うおおおおおおおおおおおッ!!!!!!」」
(進一と司祭服の男がぶつかり合うッ!!!)
司祭服の男:「であればファルシファイッ!いいや亘理 進一(わたり しんいち)ッ!!!
ニキータと病める時も健やかなる時も共にあると誓えるかッ!!!!!!!」
進一:「「ああッ!!!」」
ニキータ:「ええ!?」
司祭服の男:「悲しみも喜びも二人で分かち合うと言うのかッ!!!!!!!!!!」
進一:「「ああッ!!!!!」」
ニキータ:「へぇえええッ!!!」
司祭服の男:「貧しい時も富める時も互いを助け!慰め!敬えるかッ!!!!!!!!」
進一:「「当然だッ!!!!!!!!」」
ニキータ:「くぅうううう……!!!!」
司祭服の男:「その命ある限り!心を尽くす覚悟はあるかッ!!!!!!!!!!!!!」
進一:「「当たり前だッ!!!!!!!」」
司祭服の男:「今一度問うッ!!それは“何故(なにゆえ)”かッ!!!!!!!!!!!!」
進一:「「ニキータを!愛しているからだぁああああああああああああッ!!!!!!!!」」
ニキータ:「たッ!戦いながら何をやっているのですかッ!!!!」
司祭服の男:「であれば尚の事ッ!!!!
私を砕きッ!!!再び世界を壊して見せろッ!!!!!!!
次こそ安寧なる世界を掴めッ!!!!!!!!!!!!」
進一:「「そのつもりだッ!!!!!」」
司祭服の男:「軟弱な男にニキータをやるつもりは無いッ!!!!!
全力で来いッ!!!!!亘理 進一(わたり しんいち)ッ!!!!!!!!」
進一:「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!!!!!!!!
“─改竄開錠(リインカーネーション)─”ッ!!!!!!!!!!!!」」
(進一の魔鎧が黄金に燃え輝くッ!!!)
ニキータ:「なんですって!?世界からのバックアップ無しに“パラダイムファルシファイ”をッ!?!?」
司祭服の男:「禍々しくも黄金に輝く姿ッ!!それが貴様の“愛”かッ!!!
であればッ!!!!」
(司祭服の男、構えるッ!!)
司祭服の男:「エルゴスム・アルゴリズムッ!!」
(進一の右手に黄金に燃え猛る剣が構築されるッ!!)
進一:「「これは“世界(すべて)”を焼灼し!改竄(かいざん)する魔剣ッ!!!」」
司祭服の男:「アルス=マグナッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
進一:「「”灼き尽くせ、我が焔、我が狂気(ファルシファイ・レヴァンテイン)”ッ!!!!!!!!!!!」」
司祭服の男:「はぁあああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!!」
進一:「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!!!!!」」
(二つの力の奔流がぶつかり合うッ!!!!)
進一:「「……ぐっ!!!!!!!」」
司祭服の男:「こんなものかァ亘理 進一(わたり しんいち)ィッ!!!!!!!」
進一:「「くっそぉッ!!!!!!!」」
ニキータ:「シンイチ……!シンイチ!!!!!負けないでッ!!!!!!!!!!!」
(ニキータの思いが進一の身体に響くッ!!!!)
進一:「「ッ!!」」
進一:「「ぐぃいいッ!!!だァああああああああッ!!!!!!!!!!!!!」」
司祭服の男:「何ィッ!?!?!?!」
進一:「「ッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!!」」
司祭服の男:「ぐああああああああああああああああッ!!!!!!」
(司祭服の男を両断するッ!!!)
間。
進一:「「………………」」
(進一、変身が解ける。)
進一:「ぐ……」
ニキータ:「シンイチ……!!」
(ニキータ、進一の元へ駆け寄る。)
ニキータ:「大丈夫ですかシンイチ!!」
進一:「あ……ああ……大丈夫だ……!」
間。
司祭服の男:「見事だ……」
進一:「……!」
ニキータ:「っ!」
間。(司祭服の男、袈裟斬りに両断され、ぼろぼろ状態で進一たちを見やる。)
司祭服の男:「安心しろ…………もう……動けん……」
進一:「……そうか…………」
ニキータ:「…………。」
進一:「……。」
間。
進一:「行ってこいよ。ニキータ。」
ニキータ:「え……」
間。
ニキータ:「……うん。」
間。
(ニキータ、司祭服の男の前に立つ。)
司祭服の男:「…………なんだ……。」
ニキータ:「……貴方は……ただの幻影なのですか。」
司祭服の男:「そうだ……」
ニキータ:「私の事は……分かりませんか……」
司祭服の男:「…………分からないな……
私に残っていた断片は……“心残り”だけだからな……」
ニキータ:「…………そうですか。」
間。
ニキータ:「では、返事は要りません。ただ、黙って聞いていてください。」
司祭服の男:「…………。」
ニキータ:「……パパ。」
間。
ニキータ:「私を愛してくれて、ありがとう。」
司祭服の男:「……。」
ニキータ:「パパのおかげで私はここまで育ちました。」
進一:「……。」
ニキータ:「パパに沢山迷惑かけちゃって本当にごめんなさい。」
司祭服の男:「……。」
ニキータ:「私、幸せになるからね。」
間。
司祭服の男:「……そうか。」
間。
司祭服の男:「その言葉が聞けて……ようやく安心出来る……」
間。(司祭服の男、塵の様になり消える。)
進一:「……。」
ニキータ:「……。」
間。
ニキータ:「シンイチ。」
進一:「なんだ。」
ニキータ:「立てますか。」
進一:「もち……ろん、だっ」(立ち上がる。)
ニキータ:「私たちのやるべき事はまだ終わっていません。」
間。
ニキータ:「行きますよっ!」(振り返り、進一に笑顔を見せる。)
進一:「おうよっ!!」
間。
ニキータ:「ですが、この話はもう──」
間。
ニキータ:これにて終幕。
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