東西東西・噺屋:天犬 大火の興行
─第八幕:厭離穢土欣求浄土─
東西東西・噺屋:天犬 大火の興行
─第八幕:厭離穢土欣求浄土─
[台本]東西東西・噺屋:天犬 大火の興行 ─第八幕:厭離穢土欣求浄土(おんりえどごんぐじょうど)─
登場人物
○天犬 大火(あまいぬ たいが)
17歳、男性
天狗の半妖で、怪談を雑談に挿げ替える“噺屋”。
皮肉屋で毒舌家で陰湿な性格。
主人公。
○ノウン・ヤン・アモーク
16歳、女性
突如転校してきた高校二年生。
世界の意志を聞き、教義とする“ヘネラリザドゥ教”の信徒であり、断罪者。
生真面目で融通の効かない性格をしているが悪い子ではない。
○天狗・赤星(てんぐ・あかぼし)
????????歳、不問
大火の同位体で物語の黒幕。
大火の母、メメの同位体でもあり、大火に掩蔽せし全天にて燃え燦めく赤色超巨星に近い熱量を内包する存在。
赤色超巨星に近い熱量は旧世界そのものを取り込む事により手に入れた。
また、大火の生まれた里の人間たちが顕現させようとしていた“天狗様”。
大火に対しては現し世の自分であるメメの片鱗によりかなり優しく接するが、
基本的には現し世そのものを燃料とし食い散らかしたいと考える物理的星食の怪物。
天犬 大火♂:
ノウン・ヤン・アモーク♀:
天狗・赤星 不問:
↓これより下が台本本編です。
───────────────────────────────────────
~厭離穢土欣求浄土・回廊~
大火:「くそッ!!この穴どこまで!!!オニトツギはどこだ!!!!」
赤星:「天犬 大火(あまいぬ たいが)。」
大火:「ッ!!貴様ァ!!!!」
赤星:「この物語の“鉾担(ほこかつぎ)”は私であり君だよッ!!!」
大火:「ッ!?」
赤星:「故にこれは!!──」
赤星:「“天犬 大火(あまいぬ たいが)の百鬼夜行(ひゃっきやこう)”の始まりだッ!!!!!!!!!!!!!!」
大火:「──────────チッ!!!!
言っている意味が!!!分かんねェよッ!!!!オラァ!!!!!」
(大火、落下しながら赤星に蹴りを入れる。)
赤星:「ぐっ!!!!ぐおおおおおッ!!!」
(赤星、大火より先に地面に落下する。)
大火:「っとッ!!(着地する。)
てめェ何モンだ!!!!鬼嫁(おにとつぎ)を何処へやったッ!!!!」
赤星:「ふ……フフフフフフ……一度に二つも質問するとは、強欲だなぁ。
流石は私の半身。」
大火:「なにィ?」
赤星:「何者かとは白々しい事を言う。
分かっているだろう?感じているだろう?」
大火:「…………やっぱそうかよ。
お前が“天狗様”ってやつか。」
赤星:「そうだとも。
かつてはタイガの母メメに食われ、メメの内側から侵食して再誕した後、君に殺された、
人々が私の誕生を望み、育て、あの時に生まれる筈だった“天狗様”だ。
そして──」
(赤星、大火を指差す。)
赤星:「私が“天犬 大火(あまいぬ たいが)”の名を襲名する筈だった。」
大火:「……。」
赤星:「そんな顔しなくても良い。
メメが分かっていてその名を付けたのかどうかは知らないが、その名前は君のモノだ。
故に、そうだな。
タイガ、君と同じ起源を持つ名を名乗らせてもらおう。
改めて──」
赤星:「ご機嫌よう。私は天狗、赤星(あかぼし)。
人々の願望が集い、蓄積し、成就した“旧世界の化身にして赤色超巨星の化身”。
天犬 メメ(あまいぬ めめ)の擬似同位体、そして覚醒した君の同位体でもある。
よろしく、天犬 大火(あまいぬ たいが)。」
大火:「旧世界?赤色超巨星?同位体?」
赤星:「おや……尊海 牢乎(とうとうみ ろうこ)は君に何も教えてくれていないのかい。
だけどまあ、そんな事はどうでもいい。
タイガ。私は君が死なずに済んで本当に嬉しいよ。」
大火:「馴れ馴れしく話しかけてんじゃねぇよッ!!!
オニトツギを返せッ!!!」
赤星:「おっと、血気盛んだね。
私は嬉しいよ。私はメメの目を通して君を見ていた。
あんなに小さい君が、こんなに大きくなって……」
大火:「黙れッ!!五重結界ッ!!!」
赤星:「無駄だよ。」
大火:「なッ!!?俺の結界が溶けたッ!?」
赤星:「言っただろう?“赤色超巨星の化身”だって。
私は全天の王たる太陽の熱量の何万倍以上もある。
勿論、君を焼き消してしまわない様にかなり気を付けている。
が、だとしても君の力程度打ち消す事は可能だよ。」
大火:「クソォッ!!!
うおおおおおおおおおおおッ」(赤星に殴りかかる。)
赤星:「こらこら駄目だよタイガ。
私に触れたら────」
大火:「──────────ッ!!??!?」
(大火の両腕、プラズマ化し、消失する。)
大火:「ぐあああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!!!!!」
赤星:「ああ!タイガ!!大丈夫かい!?」
大火:「ぐああああ……ッ!!!!
なッなんなんだッ!!!???」
赤星:「私の熱に晒されて君の両腕がプラズマ化してしまったんだ。
可哀想に、治してあげるよ。ほら、これで私に触れても大丈夫だ。」
大火:「ぐぅぅ……!がぁあああッ!!!」(赤星に喰らいつく。)
赤星:「──ッ!こらこらタイガ、そんな風に噛み付かれたら痛いじゃないか。」
大火:「ふぅうううッ!!!ふぅうううッ!!!」
赤星:「いったっ。噛みちぎる事はないじゃないか。
ほーら、今治してあげるから落ち着いて。」
ノウン:「貴様の手は借りんッ!!」
赤星:「?」
ノウン:「“呼応せよ(レハギール)”ッ!!」
(ノウン、上から高速で降ってくる。)
ノウン:「これは魔を滅する光!“浄罪(クライムリバティ)”ッ!!!」
赤星:「ぐっ!!なにッ!!!?この私の身体を貫くだとッ!!!?!?」
(赤星、距離を取る。)
ノウン:「タイガッ!!!」
大火:「ノウンッ!!!」
ノウン:「“呼応せよ(レハギール)”ッ!かの者を癒せ!“浄罪(メルシェル)”ッ!!」
(大火の両腕、光が収束し元に戻る。)
大火:「腕が治った……!」
ノウン:「大丈夫か!タイガ!!」
大火:「おう!」
ノウン:「……鬼嫁 弓燁(おにとつぎ ゆみか)は。」
大火:「…………。」
ノウン:「…………っ……そうか……っ」
赤星:「何故、ここで私とタイガ以外が人の形を保ってい……ああ……。
“ヘネラリザドゥ教”の断罪者、“ANGEL(エンジェル)”の所有者ノウン・ヤン・アモーク、か。
なるほどなるほど、この場を“天使の世界”が侵食する機構というのはこれほどのものなのか。」
ノウン:「そうだ。
私たちは悲願の成就(じょうじゅ)の為に幾度と無く世界を超え、引き継いできた。
その過程で“世界の終焉”にはそれなりに対応出来る。」
赤星:「それはそれは……面倒だ。ならば消えてもらおう。」
ノウン:「ッ!!太陽級の熱量の発生予兆だと!!!?
コイツッ!!!妖(あやかし)の域を逸脱しているではないかッ!!!」
赤星:「それはそうだよ。
私は既に妖(あやかし)という枠を超え、世界そのものとなったんだからね。」
大火:「させるかッ!!」
ノウン:「タイガ!!待てッ!!!ワタシの前に立つなッ!!!」
赤星:「……タイガ、どくんだ。」
大火:「………………やっぱそうだな。アンタ、俺には攻撃しようとしない。」
赤星:「…………。」
大火:「どうせ、俺がなんかしねぇとアンタの目論見が上手くいかねぇとかだろ。」
赤星:「違うよ。」
ノウン:「いいや、タイガの狙い通りだ。
奴らの目論見である世界反転にはお前の力が必要な筈。」
赤星:「はぁー……断罪者。私が何故わざわざ鬼嫁 弓燁(おにとつぎ ゆみか)の死体を利用したのか分からないかい?
彼女はタイガと限りなく近い状態に成ってくれた。
故に、タイガを寄り代としない世界反転も起こせるさ。」
間。
赤星:「事実、反転は進行し、私も顕現した上に、赤色超巨星級の力も手に入った。」
大火:「じゃあなんで俺を始末しない。」
赤星:「当たり前だろ。
私は、タイガ、君を愛している。ただそれだけだ。」
ノウン:「…………。」
赤星:「だから──」
ノウン:「“結晶惑星(けっしょうわくせい)”ッ!!!」
赤星:「ッ!」
ノウン:「侵食開始ッ!!
我らを滅する熱を喰らい、守れッ!!!」
赤星:「なにッ!?」
ノウン:「これで貴様が如何なる熱を発しようとも無駄だッ!!」
赤星:「そう。ならば──」
ノウン:「なッ!一瞬で間合いをッ!!」
赤星:「違う、君がこちらへ来たんだ。引力だよ。君もよく使うだろ?
プラズマ化して消えない。確かに熱による攻撃を無効化されている様だね。
天使の権能とやらは恐ろしいな。ならば物理で仕留めよう。さようなら、タイガにまとわる邪魔者。」
ノウン:「くッ!!」
大火:「────ッ」
(大火、ノウンを掴み、一瞬で赤星から離れる。)
ノウン:「タイガ!!」
大火:「させねェよッ!!」
赤星:「おっと。目にも留まらぬ速さだね、タイガ。
流石は私の同位体であり、天狗の妖(あやかし)だ。
その俊敏さは、世界と若干ズレる事で、世界の法則から抜け出すのが本領。
重力だの慣性だのから若干解放され常人よりも何倍も早く動ける。
上手く使えてるじゃないか。」
大火:「何言ってるか分かんねェよッ!!
とりあえずノウン!さっきみてぇに引っ張られたら今度こそやべぇ!
だから俺から絶対に離れるなよ!」
ノウン:「了解した!!
奴を倒して全てを終わらせるぞッ!!」
大火:「ああ!!」
ノウン:「“結晶惑星(けっしょうわくせい)”!!かの者を地に縛り付けよッ!!」
赤星:「ぐおおおッ!!!」(巨大な重力が掛かり動けなくなる。)
大火:「おおッ!!なんか出力上がったな!!」
ノウン:「奴に対して手加減なんてしてられないからな!!
それにッ!!」(更に力を込める。)
赤星:「なッ!!更に重くなるのかッ!!ぐあああッ!!?」
(足場が重力に耐えられずに崩れ、三人が落ちる。)
大火:「なッ!?足場がッ!!ノウン!俺の手を離すなよッ!!」
ノウン:「分かっているッ!!
このままッ!!最下層へッ!!原因の中核へ行くぞッ!!!
きっとそこにオニトツギも居るッ!!!」
大火:「──ッ!!
相分かったッ!!!!」
赤星:「くそッ!!!私は世界の命運を背負っているというのにッ!!!!
こんなッ!!!!!」
大火:「知らねぇよ。」
赤星:「──ッ!!!」
大火:「ウラァッ!!!!!!!!!」(踵落としを決める。)
赤星:「ぐああああああああああッ!!!!」
大火:「このまんま落ちろォ!!!!!!!!!!」
ノウン:「ナイス踵落としッ!!!」
◇
~厭離穢土欣求浄土・最奥~
(赤星、着地する。)
赤星:「──く……っ!
まさか本当に最下層まで落とされる事になるとは……」
大火:「どうやら突破口発見って感じだな。」
赤星:「…………。」
(大火とノウン、着地する。)
大火:「馬鹿みたいな強さの熱攻撃は素直にビビったが、それがなけりゃ戦えるぜ!」
ノウン:「赤色超巨星、旧世界の化身とは言え、その身体の規格以上の力は発揮出来ない様だな。」
大火:「俺の同位体っつー事は俺と同じなんか的なのだよな。
じゃあそもそも強いワケねぇしなァ!!!」
ノウン:「言ってて悲しくないのか。」
赤星:「……タイガ、分かってくれ。私はお前を傷付けたくないんだ。」
大火:「あ?それは分かってんだよ。
だから俺たちが一方的に殴ってんだろうが。」
赤星:「……反抗期というやつかな……。」
大火:「アンタのガキになった覚えはねェ!!」
赤星:「んー……出来るのかな。分からないな。
一度タイガを殺してから作りな──」
大火:「させねぇよ。」
赤星:「なッ!!一瞬でッ!!!」
ノウン:「違うぞ、貴様がこちらへ来たのだ。身に覚えがあるだろう!」
赤星:「────ッ!!」
大火:「うらァッ!!!!」(赤星の頭を蹴りで吹き飛ばす。)
赤星:「────」
大火:「っしゃあ!!!頭ぶっ飛ばしてやったぜ!!!!」
ノウン:「ッ!!タイガ!!退避しろッ!!!!
敵の身体から埒外な力が溢れ出しているッ!!!」
大火:「おうッ!!!」
(大火、ノウンを抱えて退避する。)
大火:「──ぐおッ!!!?なんだッ!?!?」
ノウン:「奴の身体から途轍もない重力場がッ!!!!
これはッ!!!なッ!?ブラックホールかッ!!?!?」
大火:「はぁッ!?!?」
ノウン:「“結晶惑星(けっしょうわくせい)”ッ!!ワタシたちを守れッ!!!」
大火:「九重結界ッ!!!!!!!!!!!!」
ノウン:「────くッ!!まずいッ!!!結界ごと持って行かれそうだッ!!」
(ブラックホール、消滅する。)
大火:「があッ!!!っぶなかったッ!!!!!
あと一瞬ブラックホールが消えるのが遅かったら終わってたぜ!!!」
ノウン:「身体の破壊と同時にブラックホールが発生するなんて本当に恒星ではないか!!
“旧世界”の熱の残量で何故これほどまでの力が……!!」
赤星:「“人々の願い”とは無尽蔵だからだよ。」
ノウン:「ッ!!」
赤星:「私は旧世界、現世界の人々に希(こいねが)われ、顕現した“星”だ。」
大火:「頭と胴体完全に分離したのにいつの間にか復活してやがる!!」
ノウン:「旧世界だけでなく現世界の人々にも願われたとはどういうことだ。」
赤星:「そのままの意味だとも。
そもそも、旧世界の住人である妖(あやかし)たちがこの世界に干渉出来るのは、この世界の人間たちのおかげさ。」
大火:「あ?どうやってアンタらの世界の事なんて知れんだよ。」
赤星:「そこに生き証人が居るじゃないか。ねえ、ヘネラリザドゥ教の断罪者。」
ノウン:「……。」
赤星:「幾度と無く世界の終わりを踏み越え、今に至る彼女たちの様に、
意図的か偶発的か、旧世界の終わりに巻き込まれず、現世界に至った……
……いいや、きっと至ってしまった人たちがいたんだろうね。」
大火:「あ?どういうことだよ。」
ノウン:「旧世界から新世界に至る際、主に2つのパターンがある。
新世界の始まりに立ち会った者、旧世界から同じ時間軸の新世界に移った者。
基本的に後者の者たちは移った事には気付かない。
だが……」
赤星:「断罪者の考えている通り。
協力者は両方のパターンの人間たち。
気付かない、と言ってもどうしたって違和が生まれるモノだ。
それはきっと、辛いモノであったり、気持ち悪いモノだったりするだろうね。」
大火:「だからって俺たちの世界を食い物にしようとしてんじゃねぇ!!!」
赤星:「それは出来ない。
私たちの世界と君たちの世界、どちらかが犠牲になるしかない。
それとも君たちは、唐突に終わらせられた彼らは大人しく消えろとでもいうのかい?
当たり前に嫌だろうさ。」
(赤星、より真剣な表情になる。)
赤星:「だからこそ私は負けられないのさ。」
大火:「ッ!!
ノウン俺にしがみつけッ!!!」
ノウン:「ッ!!」(大火にしがみつく。)
赤星:「タイガ。君も私たちと一緒だ。
この世界の人間たちとは何もかもが違う。
それに──」
(赤星、一拍置く。)
赤星:「あちらには君の母親であるメメも、鬼嫁 弓燁(おにとつぎ ゆみか)も居る。」
大火:「ッ!!!」
ノウン:「なんだと!?」
赤星:「彼女たちは一度、完全完成して妖(あやかし)へと至った。
そして死んだんだ。妖(あやかし)は死んだら“隠世(かくりよ)”に還る仕組みなんでしょ?
であれば、今もあちらに居るのは“自明の理(じめいのり)”さ。」
ノウン:「しかし彼女たちは──」
赤星:「“タイガの力で人間に戻った?”
そうだね。けれども、彼女たちは“あちら”の人間として、戻っただけだよ。」
大火:「ッ」
赤星:「世界の反転も悪いことばかりじゃないだろう?
彼女たち以外に連れて行きたい人が居るかい?例えばそこの断罪者とか。
その子には必要無いだろうけれど、もしも居るのなら全員怪異化させてあげるよ。」
ノウン:「何を言っている……!」
赤星:「そうすればタイガを愛してくれる人たち、愛する人たちは変わらず君のそばにいる。
勿論、私もね。」
大火:「チッ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
(大火、怒って更に声を荒げる。)
大火:「俺は誰も愛さねぇし誰にも愛されねぇッ!!!!!!!
手前勝手な事ばっか言ってんじゃねぇぞッ!!!!!!!!」
赤星:「タイガ?」
大火:「母さんがいる?オニトツギがいる???
てめェらが母さんをおかしくしたんじゃねぇかッ!!!!!」
(大火、“天狗様”の里の人間たちが過る。)
大火:「てめェらがオニトツギを殺したんじゃねぇかッ!!!!!!!!!!!!!!!」
(大火、鬼嫁 弓燁の死に際の悲しそうな笑顔が過る。)
大火:「ッ!!!!!!!!!!!!!」(自分の左腕を手刀で切り落とす。)
赤星:「自分の左腕を切り落としたッ!??!!?」
ノウン:「ッ!?!?!?タイガ何をしているッ!?!?!?!?」
大火:「うらァ!!!!!!!!!!!」(切り落とした自分の左腕を赤星に投げつける。)
赤星:「なッ!!何をッ!!!!」
大火:「“我は全天を灼き尽くす星なり”ッ!!!」
赤星:「ッ!!?タイガ!!!!何故それをッ!!!!」
大火:「“我が名は天犬 大火(あまいぬ たいが)”!!
“我が左腕よ”ッ!!“灼き尽くせ”ッ!!!!!」
(大火の左腕が赤星を灼く。)
赤星:「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!」
大火:「“九重結界”ッ!!!」
(結界が展開される。)
大火:「ノウン!!俺の後ろへッ!!!」
ノウン:「分かったッ!!!」
赤星:「何故ッ!!!何故タイガが私の力をォ!!!!」
大火:「母さんはアンタを食って天狗の力を宿しちまった。
そしてさっきアンタの一部を食わせてもらった。
俺とアンタは同位体ってヤツで、同じ力が使える可能性があった。
そして実際にやって、成功した。」
赤星:「ぐッ!!!!!!!!!!!!!!!」
ノウン:「一兆度の熱量……だと……!
アカボシのものには遠く及ばないが、十分以上の力だ……!」
大火:「だろうな。
ただ俺はアイツみてぇにあの熱に耐えられる身体じゃねぇ。
だからこういうやり方になったけどな。」
ノウン:「“呼応せよ(レハギール)”ッ!かの者を癒せ!“浄罪(メルシェル)”ッ!!」
(大火の左腕が治っていく。)
大火:「助かったぜ。」
ノウン:「なるべく辞めろよ、そのやり方。」
大火:「この戦いが終わったらもうやらねェさ。」
赤星:「ぐ……くはは……クハハハハハハハッ!!!!!!!!!」
大火:「……。」
赤星:「嬉しいよ……嬉しいよタイガッ!!!!」
(赤星、大火の炎を消す。)
赤星:「私を糧に強くなってくれるなんて……
嗚呼。本当に鬼嫁 弓燁(おにとつぎ ゆみか)には感謝しかない……
タイガのこんな立派な姿を見られるなんて……。」
大火:「オニトツギの名前を口にするな。」
大火:「“潰れろ”。」
赤星:「ぎあ゜──ッ!!」
(赤星、上下から力を加えられる様にぺしゃんこに潰れる。)
大火:「ぐッ!!」
(大火の右腕もぺしゃんこに潰れる。)
ノウン:「タイガッ!!お前の腕も潰れてしまっているぞ!!」
大火:「わーってるッ!!」
赤星:「ぐ……ははは……重力操作まで……私の力を使ってくれている……
君はどんどん私に近づいている……嬉しい……嬉しいよ本当に……!」
ノウン:「……タイガ……お前はまだ力を扱えていない……大丈夫なのか……?
お前……母の様に乗っ取られてしまうのでは……」
大火:「大丈夫だ。もし、そうなっても。」
間。
大火:「師匠が俺を殺してくれる。」
ノウン:「──っ」(大火の表情を見て顔を歪ませる。)
大火:「さ!ノウン!カタをつけるぞ!!」
ノウン:「あ、ああ!!」
大火:「“我は全天を灼き尽くす星なり”ッ!!!」
ノウン:「“結晶惑星(けっしょうわくせい)”!!侵食開始ッ!!」
赤星:「“俺は誰も愛さねぇし誰にも愛されねぇ”……?
そんなのは嘘だ……君は私を愛してくれている、私は君を愛している……」
(大火、潰れた右腕をちぎり取り前に突き出す。)
大火:「“我が右腕よ”ッ!!“敵を射抜く槍と化せ”ッ!!!!!!」
ノウン:「“結晶惑星・総てを射抜く星(ベドラハ・ケシェット)”!!!」
赤星:「ぐッ!!!!!!!!!!!!!!」
大火:「よしッ!!ヤツの核を完全に砕いたッ!!!」
間。
赤星:「…………残念だったね、タイガ……。」
大火:「なにッ!?」
赤星:「私の核を一つ破壊しても無駄だよ。
残り五つだ。」
大火:「五つ……だと……!」
赤星:「勿論ここには無い。ああ、一応二つは私の中にあるけどね。
どうする?ここを離れるかい?
そうなってくると世界の反転は更に加速するけれど。」
大火:「クソッ!!こんなヤツの相手をしてる場合じゃねぇのにッ!!」
赤星:「ははははは!タイガ、色んな表情を見せてくれるね。
君たちだけではもう私たちは止められない。だから、ね?」
間。(赤星、大火に向けて手を差し伸べる。)
赤星:「こっちへ来なさい、タイガ。」
大火:「……ッ!!」
(ノウン、雰囲気が変わる。)
ノウン:「『その必要は無いさ。』」
赤星:「ッ!?」
大火:「ッ!?」
ノウン:「『タイガくん、時間稼ぎありがとう。』」
大火:「この感じ……師匠!?」
赤星:「全能の化身……尊海 牢乎(とうとうみ ろうこ)……ッ!」
ノウン:「『君が今回の黒幕、首魁(しゅかい)かい。
じゃ、君にはこちらに来てもらおう。』」
赤星:「何……?」
ノウン:「『“結晶惑星(けっしょうわくせい)”。かの者を僕の下へ転移してくれ”。』」
赤星:「なッ!?!?か……身体がッ!!!」
(赤星、消える。)
大火:「アカボシが消えた!?」
ノウン:「ぐ……」(膝をつく。)
大火:「ッ!ノウンッ!!大丈夫か!?」
ノウン:「ワタシは……大丈夫……だ……
くそ……ロウコのやつめ……ワタシの力以上の能力を使いやがって……」
大火:「……?」
ノウン:「アカボシは……ロウコの所へ転移された……」
大火:「な……!師匠の所に!?」
(ノウン、立ち上がる。)
ノウン:「そして、先程やつは残り五つ核があり、別の場所にあると言っていただろう。
核の破壊の為にワタシたちの協力者たちが場所を特定し、応戦しているハズだ。」
大火:「協力者……?」
ノウン:「ロウコに亘理 進一(わたり しんいち)先生や、慈苑戸 畢(じえんど おわり)という者、
そしてカリオストロ、だそうだ。」
大火:「ワタリ先生にカリオストロ!?
カリオストロって敵じゃなかったか!?」
ノウン:「ワタシも詳しい事はわからん。
とりあえず、ワタシたちはワタシたちのやる事をやるぞ。」
大火:「俺たちのやること?」
間。(ノウン、ある方向を見る。)
ノウン:「オニトツギを……“災厄の華”を停止させ、世界反転を止める。」
大火:「……!
停止ってお前……!それ本当にオニトツギを救えんのかよ!!」
ノウン:「…………。」
(赤星の声が響き渡る。)
赤星:『救えないよ。』
大火:「ッ!!」
ノウン:「!!」
赤星:『ほら、ご覧。』
ノウン:「……なッ!!」
大火:「……オニトツギ……?」
赤星:『そう……鬼嫁 弓燁(おにとつぎ ゆみか)の“亡骸”だ。
これの中に私の核の一つを移した。鬼の亡骸が君たちの相手だ。』
大火:「なにッ!?」
ノウン:「貴様ッ!!どこまでッ!!!!!」
赤星:『さあさあ、この鬼の亡骸を壊さないと世界反転は止められない、どうする?タイガ??』
大火:「クソがァ!!!!!!!!!!」
ノウン:「タイガッ!!やるぞ!!!!」
大火:「ああ!?」
ノウン:「ロウコが言っていた!
オニトツギを救えるのはタイガだけだと!」
大火:「師匠が……?」
ノウン:「ワタシは正直あの男は信用できん!だがお前を信じる!!
だからまずはオニトツギを無力化し、その後の事は後で考えるぞ!!」
大火:「…………おう……ッ!!」
(大火とノウン、構える。)
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