[台本]東西東西・噺屋:天犬 大火の興行 ─第六幕:走馬灯は劇場の如く─
やっとこさ、かもしれない。
天犬 大火という”黒箱”の中身がやっとこさ見えてきた。
一度見えてしまえば、後はもう時間の問題。
興行(ちゃばん)もやっとこさ後半戦だ。
サァサァ、終幕まで秒読みだ。
登場人物
○天犬 大火(あまいぬ たいが)
17歳、男性
天狗の半妖で、怪談を雑談に挿げ替える“噺屋”。
皮肉屋で毒舌家で陰湿な性格。
主人公。
〇鬼嫁 弓燁(おにとつぎ ゆみか)
16歳、女性
元気で純粋無垢で、要領が良く品行方正な高校二年生。
噺屋になるべく大火に教えを請うている少女。
祓い屋としての才能は群を抜いているし、師である大火よりうんと強い。
※有象無象と兼ね役。
○ノウン・ヤン・アモーク
16歳、女性
突如転校してきた高校二年生。
世界の意志を聞き、教義とする“ヘネラリザドゥ教”の信徒であり、断罪者。
生真面目で融通の効かない性格をしているが悪い子ではない。
不真面目で不良な大火によくつっかかる。
※天犬 メメと兼ね役。
〇尊海 牢乎(とうとうみ ろうこ)
40歳、男性
寺生まれの“祓い屋”で大火の師匠。
軟派な発言が多いが物腰柔らかく、温和な人物だが、叱るときはちゃんと静かに叱る。
対怪異的にも物理的にも最強の人物。
※烏合の衆と兼ね役。
○藍狐(あおご)
■■歳、男性
第五幕にて大火たちに倒されたはずの妖。
妖狐の癖に言葉回しがやけに演劇チックで大袈裟。
人の思考を読み、それに準じたトラウマを刺激する。
大火の弟を自称するが大火よりも背が高い。
○天犬 メメ(あまいぬ めめ)
当時26歳、女性
大火の母で故人。
13歳の頃に天狗に孕まされた後にその天狗を食い殺した狂人で、
大火の事も殺そうとしていたが、自分の子を殺す事は出来なかった。
基本的には優しく穏やかな女性だが、人々から虐げられ心を病んでいる。
○有象無象
■■■、■■
大火とメメを襲う言葉。
○烏合の衆
■■■、■■
大火とメメを嫌う視線。
天犬 大火♂:
♡鬼嫁 弓燁/有象無象♀:
◇ノウン・ヤン・アモーク/天犬 メメ♀:
♤尊海 牢乎/烏合の衆♂:
藍狐♂:
↓これより下が台本本編です。
───────────────────────────────────────
♡有象無象:東西東西(とざいとうざい)。
♤烏合の衆:東西東西(とざいとうざい)。
◇メメ:「東西東西(とざいとうざい)。」
間。
◇メメ:“人間”とは、多面的な生き物なんです。
♡有象無象:そんな考え何の意味も無い。
♤烏合の衆:そんな言葉懺悔にはならない。
◇メメ:なのに、二つに一つ、輝いた部分、或いは陰った部分だけを真実とするのは、早計じゃない?
♡有象無象:そんな詭弁で過去は変わらない。
♤烏合の衆:そんな戯言(たわごと)で事実は揺るがない。
◇メメ:“人間”とは、多面的な生き物なんです。
間。
◇メメ:だから、貴方も──
間。
♤烏合の衆:「デハデハ、皆々様──」
♡有象無象:「隅から隅まで──」
◇メメ:「ずずずい~っと、希い上げ奉りまする(こいねがいあげたてまつりまする)。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~学校、授業中~
(大火、窓の方を見て考え事をしている。)
大火:「……。」
(大火、以前の事を回想する。)
藍狐:『……タイガ……私は、お前を愛しているぞ。』
大火:『──っ』
藍狐:『嗚呼……私、の、半身……私の、か……』
大火:「……。」
間。
大火:嗚呼……私の半身……私の──
大火:「私の……か、ぞく……」(ぼそりと呟く。)
(大火、誰かに蹴られる。)
大火:「──いでッ!!!!」
◇ノウン:「大火(たいが)、今大事なところだぞ。
ちゃんと授業を聞け。内容を板書しろ。」
大火:「ノウンてめぇ……!」
◇ノウン:「なんだ、私は何か間違えた事を言ったか?」
大火:「…………。」
間。
大火:「……チッ」
(大火、素直に板書し始める。)
◇ノウン:「……?」
間。
(ノウン、弓燁をつつき、小声で話しかける。)
◇ノウン:「鬼嫁 弓燁(おにとつぎ ゆみか)。」
♡弓燁:「どうしたの?ノウンちゃん。」
◇ノウン:「なんだかタイガの様子変じゃないか?」
♡弓燁:「あー……うん……なんか考え事してるみたいで、
ずっとぼーっとしてる感じするよね……。」
◇ノウン:「そう……そういう感じだ……
しかし、あのタイガが考え事って……」
♡弓燁:「た……タイガくんだって考え事する……はず、だよ……!」
◇ノウン:「何故少し言い淀むのだ……」
♡弓燁:「と……とにかく……!今日の任務の時も気を付けないとね。」
◇ノウン:「そうだな。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
藍狐:そして、同日深夜。
◇ノウン:「タイガ!!そちらに追い込んだぞ!!」
大火:「おう!これで!しまいだっ!!!」
(大火、怪異化させた手刀で妖を滅する。)
大火:「……。」
♡弓燁:「ふぅー……!とりあえず、妖(あやかし)の気配はこれで無くなったかな!」
◇ノウン:「そうだな。」
♡弓燁:「タイガくんとノウンちゃんのコンビネーション良い感じじゃん!!」
◇ノウン:「えっ!ま……まあな……!!!」
大火:「……。」
♡弓燁:「……。
タイガくん?どうかしたの?」
大火:「……あ?いや、なんでもない。」
◇ノウン:「何でもないヤツの反応じゃないだろ。」
大火:「うるせぇなぁ……このまま4時になるまで何もなかったらもう帰るだけだろ。
ちっと俺は──」
♤烏合の衆:忌み子だ。
大火:「──ッ!?」
(大火、何かが聞こえて辺りを警戒する。)
♡弓燁:「タイガくん?」
◇ノウン:「敵か。」
大火:「今の、お前らには聞こえなかったのか……!」
◇ノウン:「……。(警戒しつつ耳を澄ます。)
ワタシには聞えないぞ。」
♤烏合の衆:人間の真似事をしている。
大火:「あぁ!!?」
♡弓燁:「何が聞こえてるの!?」
藍狐:こっちだ。
大火:「ッ!!」
(大火、屋上へ向かう階段を見る。)
大火:「上か!!」(駆け出そうとする。)
◇ノウン:「待て!!」(大火の腕を掴んで制止する。)
大火:「どわっ!」
♡弓燁:「タイガくんにしか聞えないなら、タイガくんをおびき寄せる為の罠かもしれない。」
◇ノウン:「そうだ。以前ワタシたちと対峙したカリオストロとかいうやつもお前が目的だったじゃないか。」
大火:「そうだけどよ……!」
藍狐:来ないのか。
大火:「ッ!!」
藍狐:ならばこちらから行く。
大火:「なッ!!」
(大火、何か怖気が走り、切羽詰まった様に切り出す。)
大火:「あっちから来るみてぇだッ!!
なんか分からんがまずい!!!まずい気がする!!!!」
藍狐:「タイガ。」
大火:「──ッ」
♡弓燁:「え……!?」
◇ノウン:「な……ッ!!」
(大火は藍狐に背を向けてる状態、弓燁とノウンの視線の先に藍狐がいる状態。)
藍狐:「タイガ。」
大火:「──ッ」(振り向く)
大火:「なッ!!お前ッ!!!」
♡弓燁:「タイガくんと同じ顔……!」
大火:「お前!!この間確かに滅したはず!!
……以前よりも禍々しい存在感……黄泉帰りか……!?」
◇ノウン:「ヨミガエリ???な、なんだそれは。」
♡弓燁:「えっとね……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(弓燁の回想)
♤牢乎:「牢乎(ろうこ)さんの!祓い屋講座~!
妖(あやかし)や怪異は本来、“隠世(かくりよ)”、黄泉の国の存在と僕たちは定めている。
そして、何かしらのイレギュラーで“現し世(うつしよ)”、つまり私たちの世界で“貌(かたち)”を成して顕現しているんだ。
そんな彼らを祓う僕たち祓い屋は、彼らを滅する事で“隠世(かくりよ)”に還している。」
(牢乎、簡単な絵を黒板に書く。)
♤牢乎:「滅された彼らは、“貌(かたち)”を失う。
再び“現し世(うつしよ)”に来る際は、また別の“貌(かたち)”を成してくる。
それは別に問題ない。」
(牢乎、にこやかに喋っていてが、真面目なトーンに切り替わる。)
♤牢乎:「時折、失った筈の“貌(かたち)”のまま、再びこちらに来る場合がある。
それが“黄泉帰り”だ。
“黄泉帰り”した彼らは以前とは比べものにならない程の力を持っているし、
何よりもあの妄念は面倒だ。」
(牢乎、再びにこやかなトーンに戻る。)
♤牢乎:「だから、それっぽいやつに遭遇したらすぐに逃げるんだよ~」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
♡弓燁:「──って、ロウコさんが。」
◇ノウン:「ヤバイではないかっ!」
藍狐:「タイガ。」
大火:「こいつさっきからなんなんだよ……!」
◇ノウン:「“結晶惑星(けっしょうわくせい)”!侵食開始ッ!!
かの者を地に縛り付けよ!!」
♡弓燁:「五重結界ッ!!」
藍狐:「…………。」
(弓燁とノウン、守る様に大火の前に出る。)
◇ノウン:「とにかく、コイツの目的はお前だ。
馬鹿正直に相手せずに逃げるぞ。」
♡弓燁:「ノウンちゃん、タイガくんを挟む形で移動してここから脱出しよう。」
◇ノウン:「委細承知。」
藍狐:「…………。」
(藍狐、口を開く。)
藍狐:「これが……私の遺作、私の最高傑作、私の究極外法。」
(空間を囲むように結界が展開される。)
♡弓燁:「っ!!結界が貼られた!!」
◇ノウン:「はぁッ!!(結界を攻撃する。)
くそっ!!ビクともしないぞ……!」
藍狐:「これから諸君に拝見拝聴して頂くのは、彼の軌跡。」
(藍狐、大火を指差す。)
大火:「ッ!!」
藍狐:「過激的で悲劇的。だが、喜劇にしよう。再現せよ……!投影せよ……!!」
♡弓燁:「く……っ!限定顕(げんていけん)──」
藍狐:「さあ……!刮目せよ!開演だ!」
藍狐:「“走馬灯は劇場の如く(ラストアンコールシアター)”!!」
(暗転。)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(藍狐にスポットライトが当たる。)
藍狐:レディースアンドジェントルメン!!!
皆々様、ご機嫌よう。
私、藍狐(あおご)と申します。
今宵、ご覧頂くのは、私の“兄”とその母親の“異常譚(いじょうたん)”。
まず、母親。彼女の名は“天犬 メメ(あまいぬ めめ)”。
(メメにスポットライトが当たる。)
藍狐:今から二十六年前、彼女は天狗の贄として、その集落で管理される一族“天犬”家に生まれました。
そして、贄として献上される十三の誕生日を迎え、天狗に孕まされました。
そんな彼女は不幸なことに、自分の状況が異常だと理解してしまっていました……
嗚呼!生まれたその瞬間から“異常”に立っているのに、
その認知は“通常”とは……なんと不幸なのか……!
(メメを照らしていたスポットライトが消える。)
藍狐:ですが…………これで終わらないからこそ、“異常”は語られるのです……。
◇メメ:「ああああああああああああああああああああああああッ!!!!」
藍狐:彼女はきっとずっと我慢していたのでしょう……。
天狗に種を植え付けられ、ついに、溜めに溜めた怒りが爆発。
発狂し、その憎き天狗を食い殺したのです。
◇メメ:「ウ゛ウ゛ッ!!ウ゛ウ゛ウ゛ッ!!!ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!!」
藍狐:彼女が冷静になったのは天狗を跡形も無く平らげた後でした。
◇メメ:「あ…………ああ…………」
間。
◇メメ:「っ!!」
(メメ、自分の腹部を触る。)
◇メメ:「ま……まだ……っ」
藍狐:そう、憎き天狗の証はまだ潰(つい)えていない。
己が胎内に遺された天狗の遺伝子。これも殺さねばならない。
彼女は手近(てぢか)にあった刃物を使って胎(はら)を抉り取ろうとしました。
◇メメ:「ハァ……ハァ……ッ!ハァ……ッ!…………ふッ!!!」
(メメ、刃物を自分に振り被る。)
藍狐:──ですが……
◇メメ:「…………うぅ……出来ない……!」
藍狐:だからこそ、“異常”なのです……。
(暗転。)
~過去、大火の居た集落~
(明転。)
大火:「…………あれ……?ここは……」
(大火の見た目に変化は無く、辺りを見渡す。)
大火:「俺が育ってきた家…………」
◇メメ:「タイガ。」
大火:「っ!!」
(大火、後ろを振り向く。)
大火:「…………か……母さん……?」
藍狐:あれから十三年。天犬 大火(あまいぬ たいが)、当時13歳の少年。現代から三年前。
彼は母と共に、生まれた地に縛られ生きていた。
(大火、当時の精神状態になってしまう。)
◇メメ:「私、食材を買ってくるわ。」
大火:「っ!!まっ!!待って!!!」
◇メメ:「……?どうしたの?」
大火:「あ…………えっと……俺が、行くよ。」
◇メメ:「……ふふふ、じゃあ、一緒に行きましょ。」
大火:「……うん……。」
◆
~人里~
藍狐:二人は仲睦まじい親子でした。
…………だが、人間共は──
◇メメ:「……あの、この野菜を頂けないかしら?」
♡有象無象:「ん?ああ、いいですよ。」
(有象無象、わざと野菜を落とす。)
♡有象無象:「おっと!」
(有象無象、野菜をわざと踏みつける。)
◇メメ:「あ……」
♡有象無象:「ああ~ごめんなさいね~」
大火:「おい!何すんだよ!!」
♡有象無象:「わざとじゃないですよ~
手が滑って野菜を落としちゃって、踏んじゃっただけです。」
大火:「ああ!?」
◇メメ:「タイガ!」
大火:「──っ、母さん……。」
◇メメ:「こんなこともあるわよ……仕方がないわ。」
♡有象無象:「本当に申し訳ありませんねぇ。
(声のトーンが落ちる。)
でも、あなたたちはこうなっても平気で食べれるでしょ?
天狗さまを喰らいやがったんだからさ。」
◇メメ:「……。」
♡有象無象:「生贄の分際で天狗さまに逆らってよくのうのうと生きてられますね。」
藍狐:ここは天狗を祀る隠れ里でありました。
故に、天狗に逆らい、殺した母親を赦しませんでした。
藍狐:何?何故こんな集落から逃げないのか、ですって?
簡単な話でございます。
♤烏合の衆:「メメのガキ。」
大火:「ッ。」
(大火とメメ、里の人間に囲まれている。)
♤烏合の衆:「お前、もうすぐ13歳らしいな。」
大火:「……。」
♤烏合の衆:「我々は常にお前を監視している。」
♡有象無象:「ここから逃げようなどと、努々考えない事だな。」
◇メメ:「…………。」
大火:「……。」
♡弓燁:『タイガくん!!』
◇ノウン:『タイガ!!!!』
大火:「……え?」
◇メメ:「タイガ、帰りましょう。」
(メメ、買った食材を拾い上げる。)
大火:「……あ……はい。」
藍狐:里の人間共は、彼らが信仰する天狗さまが再び顕れる事を信じていました。
生贄たちを逃がそうとしないのは、それが理由でした。
~天犬家~
大火:「……。」
◇メメ:「タイガ。」
大火:「なに?母さん。」
◇メメ:「そんなムスっとしないの。」
大火:「む、ムスっとなんかしてないよ……!」
(メメ、大火を抱きしめる。)
大火:「っ!か……母さん……?」
◇メメ:「大丈夫だから……絶対にあなたを天狗なんかに渡さない……。
また顕れたら……また私がどうにかするから……」
大火:「…………うん。俺も……俺も母さんを守るよ……。」
◇メメ:「ありがとう……タイガ……ごめんなさい……」
大火:「ううん。」
藍狐:嗚呼、美しきかな親子愛。
……ですが、二人はまだ“天狗の異常”を理解していなかったのです。
“天狗の異常”、それは──
◇メメ:「ごめんなさい……ごめんなさい……
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
大火:「え、えぇ……?か、母さん……?」
(メメ、大火を抱きしめる力がどんどん強くなる。)
大火:「か……母さん……い、痛い……!痛いよ母さん!!」
◇メメ:「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
大火:「がああっ!!母さんッ!!母さんッ!!!」
藍狐:“天狗の異常”、それは“愛”。
◇メメ:「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
大火:「か゛ァ……か゛あ゛さ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛!゛!゛!゛」
(大火、抱き潰される。)
藍狐:母親は天狗を食らった事で自身が天狗に変性していたのです。
故に、己が“愛(いじょう)”により自分の最愛の息子を、殺してしまいました。
そして──
◇メメ:「………………え……?タイガ…………?」
藍狐:このまま、ずっと狂気に落ちていれば良いものを、彼女は再び正気にもどってしまうのです。
◇メメ:「たいが……?たいが……?え……わ、わた、わたしが……?」
(メメ、鏡が目に入る。)
◇メメ:「「……え?
…………これ……私……?」」
藍狐:妖(あやかし)へと完全完成した自分の姿を見て、全て理解しました。
何故里から逃がしてもらえないのか。だのに生かされていたのか。
何故里の人間に虐げられ続けたのか。だのに母と子、一緒に過ごさせてもらえたのか。
◇メメ:「「私が“天狗さま”……私たちを孤立させて愛を育ませる……」」
(メメ、全身に鳥肌が立ち、膝をつき慟哭する。)
◇メメ:「「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」」
◇メメ:「「ああああああああああ!!!!ああああああああああああああああああああ!!!!!!!」」
藍狐:全て、総て“天狗さま”の思惑通りだったのかもしれません。
彼女が完全完成をする事を分かっていたかの様に、普段は絶対に彼らの家に近づかない人間どもが訪ねてきたのです。
♡有象無象:「おお……!天狗さまだ……!!」
♤烏合の衆:「やっとこさ戻られましたか……!!」
◇メメ:「「……っ!!あ……あなタたち……!!」」
(人間のうちの一人が横たわっている大火に気づく。)
♡有象無象:「おや……?贄が転がっている……ああ、まだお食事前でしたか。」
♤烏合の衆:「これはこれは、失礼しま──」
◇メメ:「「ふ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ゛!゛!゛!゛!゛!゛」」
(メメ、人間のうち一人に飛び掛る。)
♡有象無象:「…………へ???」
◇メメ:「「ううッ!!!うううううッ!!!!!」」(飛び掛った人間を殺し食らう。)
♡有象無象:「……エえ……?て、天狗さま……い、一体何を……?
あ、貴方様の食事はあちらに転がっているの……!!
私たちは貴方様に傅き尊ぶ民です……!
わ、私たちは貴方様に救われる為に……!!!!」
◇メメ:「「あああああああああああああッ!!!!!」」
♡有象無象:「ひッ、ひぃ!!!!!」
藍狐:彼女は憎き人間共を鏖殺(おうさつ)するべく、一匹、また一匹と潰していきました。
これでこの集落も終わり、この物語も……
と、ならないのが、
はい、皆さんもご一緒に──
藍狐:「これで終わらないからこそ、“異常”は語られるのです。」
◇メメ:「「あああああああああああああッ!!!!!」」
♡有象無象:「ひッ、ひぃ!!!!!」
◇メメ:「「──ッ!!!」」
大火:「母さん……ッ!やめて……ッ!!」
(大火、メメを止める。)
◇メメ:「「タ……イ……ガ……!」」
藍狐:なんと、死んだはずの天犬 大火(あまいぬ たいが)が立ち上がり、彼女を止めていたのです。
ですが、その姿は“半分変性”していました。
♡有象無象:「お……おお!!天狗さま!!!
こ、こちらが本物の天狗さまですね!!?
さあ!この化物を殺して!私たちを救ってください!!」
大火:「チッ!!うるせぇ!!!どっか行ってろ!!!!!」
◇メメ:「「フンッ!!!!」」
(メメ、大火の胸部を殴り貫く。)
大火:「ぐぼぁッ!!!!」
◇メメ:「「て……ン……グッ!!!タイガから……出て行けッ!!!!!!」」
大火:「ぐあああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!」
◇メメ:「「出て行け!出て行け!!でていけでていけでていけ出て行けェ!!!!!」」
藍狐:彼女は天狗を消し去ろうとタイガを殺し続ける。
だがタイガは殺され切る前に復活する。
なんと驚異的な妖(あやかし)としての才能、能力なのでしょう。
大火:「かっ……母さん……辞めてくれ!!!!」
(大火、メメの腕を力強く引っ張ってしまう。)
◇メメ:「「────ッ」」
大火:「──はッ……!」
(勢い余ってメメの腕を千切りとってしまう。)
藍狐:半分変性したタイガの力は、“異常”でした。
故に、完全完成した彼女の身体なんぞ簡単に傷付けられる。
大火:「ああっ!か、母さん!!ごめん!!!」
◇メメ:「「ぐぅぅぅッ!!!ああッ!!!!」」
大火:「ぐあ──ッ!!
ッ!!母さん!!どこ行くの!!!!?」
(メメ、大火を振りほどき人が居るところへと向かう。)
大火:「…………ッ!まさか!里で人を……!?」
(大火、駆け出す。)
◆
♤烏合の衆:「ひぃいいいいい!!!てッ、天狗さまッ!!お助けをォ!!!」
◇メメ:「「きぇあああああああああああああああッ!!!!」」
♤烏合の衆:「うわああああああああああッ!!!!!」
大火:「うらぁッ!!!」
◇メメ:「「ぐおおッ!!!!」」
(メメ、大火に蹴り飛ばされる。)
大火:「母さん!!もう辞めてくれ!!!!」
♤烏合の衆:「お、おおおお!!天狗さま!!貴方こそ真の天狗さま!!!!
助けて下さりありがとうございます!!!!」
大火:「うるせぇ!!!!俺はお前が死のうがどうなろうがどうだっていいんだよッ!!
これ以上母さんに怪物になって欲しくねぇだけだ!!!
どっか行け!!じゃねぇと俺が殺すぞ!!!!!」
♤烏合の衆:「ひぃいいいいいいいいいいいいいいッ!!!!」
(烏合の衆、何処かへ駆けていく。)
大火:「…………ぐっ!!」
(大火、膝をつく。)
大火:「はぁ……はぁ……このままじゃ……母さんを止められない……」
◇メメ:「「ぐぅううう……あああああああああああああああッ!!!!」」
(メメ、咆哮する。)
大火:「……もう……殺すしか……」
間。
大火:「そうだ……やるしかない……やるんだッ!!」
(大火、駆ける。)
大火:「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!!!!!」
(メメ、大火の攻撃を食らう寸前に正気に戻る。)
◇メメ:「──たいが……?」
大火:「────ッ」
◇メメ:「────うっ」
(大火、メメの胸部を貫く。)
大火:「────か……かあ……さん……」
◇メメ:「────────あぁ……たい、が……」
大火:「か、母さん……ご、ご、ご、ごめ──」
◇メメ:「ありがとう。」(大火の台詞を被せるようにか細く。)
大火:「………………えぇ……?」
◇メメ:「私を、止めようと……してくれたんだよね…………
ありがとう…………」
大火:「かあさん……」
(メメ、大火の頭を撫でる。)
◇メメ:「────あなたに、いたいこと、たくさんしてごめんなさいね……」
大火:「────ううん……」
◇メメ:「…………ああー……なんでこんなことになっちゃったんだろう……」
◇メメ:「いつも……おもってたんだぁ……
わたし、うまれてこなければよかったのにって……
わたし、なんでこんなかんきょうでうまれちゃったんだろうって……
わたし、いきつづけないほうがよかったんだろうなぁって……」
大火:「………………。」
◇メメ:「でもね…………」
大火:「…………っ」
◇メメ:「たいが……あなたをうんだのは、まちがってない……っておもってるよ……」
大火:「母さん……」
◇メメ:「いいこにそだってくれて、ありがとう……
わたしなんかをおかあさんっていいつづけてくれて、ありがとう……」
大火:「……。」
◇メメ:「けれどね……ごめんね……いまから、わたしはたいがにひどいことをいうわ……」
大火:「え……。」
◇メメ:「てんぐは、あいしたり、あいされると、おかしくなっちゃうの……
だから、たいがも……だれもあいしちゃだめ……だれにもあいされちゃだめだよ……」
大火:「……。」
◇メメ:「ごめんね……わたしがこんなかんきょうでうまれたばかりに……
……もしも……いつか、たいががふつうになれたら……」
間。
◇メメ:「わたし、は……ずっと……ずっとずっと、いのってるから……それしか、できないから…………」
◇メメ:「ごめんね……」
◇メメ:「ごめんね……」
◇メメ:「ごめんね……」
◇メメ:「ごめんね……」
藍狐:彼女は、そのまま絶命しました。
タイガは思いました。
自分が一寸、留まる事が出来れば、こんな事にはならなかったのでは、と。
間。
藍狐:そんな彼の前にとある人物が現れました。
(大火、メメの遺体を抱えたまま呆然としている。)
大火:「…………。」
藍狐:「……やっと会えました。」
大火:「……誰だアンタ。」
藍狐:「私は藍狐(あおご)。こう言っても信じて貰えないでしょうが、貴方の弟です。」
大火:「…………はぁ……?」
(藍狐、大火と遺体のメメの前で膝をつき傅く。)
藍狐:「……これが、この世界の……我々のお母様……人間のまま逝かれたのですね……」
大火:「…………。」
藍狐:「……タイガ。何故こうなったか、理解していますよね。」
大火:「…………天狗とかいう妖(あやかし)が──」
藍狐:「違います。」
(藍狐、大火にずいっと顔を近付ける。)
大火:「────ッ」
藍狐:「悪いのは人間です……ッ!」
大火:「……っ!」
藍狐:「人間が勝手に妖(あやかし)に手を出し、縛ったからこそ、我々のお母様がこんな目に遭ったのだッ!」
大火:「……。」
藍狐:「……タイガ。」
大火:「……なんだ。」
藍狐:「私は、人間に復讐しようと思っている。」
大火:「…………。」
藍狐:「私がお前を愛そう。」
大火:「────ッ」
間。
藍狐:「……大丈夫だ、タイガ。
私は、最初から妖(あやかし)。お母様の様に、狂いはしない。
私は“異常だ、怪異だ、怪談だ”とお前を罵らない。」
(藍狐、大火の手を取る。)
大火:「っ」
藍狐:「お母様の代わりに、お前を愛し、守ろう。
だから──!」
大火:「…………。」
間。
大火:「違う。」
(大火、藍狐の手を解く。)
藍狐:「……なに?」
大火:「俺に手を差し伸べてくれた人は、俺を愛さないって言ってくれた……。」
間。
大火:「それに、俺は誰も傷付けたくない……」
♤牢乎:それが、君の思いかい。
大火:「……え?」
♤牢乎:であれば怪談というには、些か面白くないね。
面白くないということは、異常ではない、通常だ。
大火:「……誰……?」
藍狐:「────っ!!タイガ!!お前はやつに騙され────」
◇ノウン:「“結晶惑星(けっしょうわくせい)”!侵食開始ッ!!」
大火:「ッ!!」
藍狐:「なにぃ!?」
◇ノウン:「よし!やっと劇場を侵食出来たッ!!
鬼嫁 弓燁(おにとつぎ ゆみか)!やれ!!!」
♡弓燁:「スゥーーーーーーーーーーーーーーー……」
(弓燁、パンっと手を叩く。)
♤牢乎:──故に、
♡弓燁:「東西東西(とざいとうざい)ッ!!!」
大火:「とざい……とうざい……」
♡弓燁:「皆々様!ご機嫌よろしゅうござりまする!
私、鬼嫁 弓燁(おにとつぎ ゆみか)と言うものでございます。
師は天犬 大火(あまいぬ たいが)。
鬼の半妖もどきな祓い屋。“噺屋(はなしや)”……噺屋・鬼嫁 弓燁でございます!!」
大火:「はなし……や……」
藍狐:「タイガ!!耳を貸すな!!!」
◇ノウン:「“呼応せよ(レハギール)”!
魔を滅し給え!!“浄罪(クライムリバティ)”!!!」
藍狐:「──ッ!!」
(藍狐、ノウンの攻撃を避ける。)
◇ノウン:「タイガから離れろ!!魔の物め!!」
藍狐:「ッ!!!!!!人間風情がッ!!!!!!」
♡弓燁:「今宵、皆々様に語るは……いいえ、暴くのは!
この不埒者が嘘で覆い被せた真実です!!
この者が話した天犬 大火(あまいぬ たいが)の半生はきっと真実であり事実なのでしょう。
ですが、全くの嘘がございます!!」
藍狐:「ちぃッ!!我が劇場はまだ崩れていない!!!
現実では嘘であろうとも、この劇場での私の在り方は本物だ!!!!!」
♡弓燁:「であればなんと粗い脚本なのでしょうか!!
貴方は彼の母が亡くなって直ぐに現れました。
決して急いだ様子は無く、息も切らさず服も乱れず、ただ当たり前の顔で!
だのに!
“……これが、我々のお母様……人間のまま逝かれたのですね……”
──と!」
藍狐:「ッ」
♡弓燁:「ええ、ええ、分かりますとも。どうしようもなかったのですよね?
貴方の劇場はあくまでも“走馬灯”。
私たちはただ劇場の席に座り、射影を眺めていたに過ぎない。
不可逆の事象は覆らない。出来てせいぜい認識を弄るだけ。
だから、彼の母が亡くなってからの事しか弄れない。」
(弓燁、ビシっと藍狐を指差す。)
♡弓燁:「これが、貴方の“走馬灯は劇場の如く(ラストアンコールシアター)”の正体!!」
♤牢乎:劇場は看破され、破綻(はたん)する。
妖(あやかし)・“藍狐(あおご)”の劇場が焼け朽ちていく。
この劇場に力の全てを注いでいたアオゴも同様に、身体が焼け朽ち始めていた。
藍狐:「ぐ……ぐ……た……たい……が……!!」
大火:「……。」
◇ノウン:「大火、こっちだ!」
(ノウン、大火の手を引っ張る。)
♡弓燁:「さて、嘘は暴きました!ですが、劇場に立っていた我が師の心はまだ帰って来ていない様子。
では次に、思い出して頂きましょう!帰ってきて頂きましょう!!」
大火:「……。」
♡弓燁:「タイガくん、君の手を取ってくれたのは──」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
大火:「──っ!」
(大火の前に幻影の牢乎が顕れる。)
♤牢乎:『ふふふ。』
大火:「……アンタは……」
♤牢乎:『僕は“咄屋(はなしや)”:尊海 牢乎(とうとうみ ろうこ)。
君を救いに来た者だ。』
大火:「──っ」
♤牢乎:『僕が知る妖(あやかし)や怪異とは、喜々として人間を傷付ける。
まあ、勿論?嬉々として人間を傷付ける人間は居るんだけどね。
でもまあ、これはこれ、それはそれ。
さて、タイガくん。君は“通常”と“異常”の違いは分かるかい?』
大火:「……分からない……。」
♤牢乎:『そうかい。それはそれは是非もない。
であれば、僕は君にそれを教えようじゃないか。
良いかい?“通常”と“異常”の違いは──』
♤牢乎:『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■。』(無音、或いは砂嵐など)
(牢乎が何を言っているか認識出来ない。)
大火:「……。」
♤牢乎:『どうだい?』
大火:「そんなの……そんなの納得出来るかよ……。
そんなんじゃ俺は……忌み子なのに……!
人を愛しちゃいけないのに……!人に愛されちゃいけないのに!」
♤牢乎:『……頑固だね。じゃあ……タイガくん。』
大火:「……。」
♤牢乎:『僕は、忌み子の君を許さないし、愛さない。
それが……罰だよ。』
大火:「……。」
♤牢乎:『君が自分を許せるまで、自分を愛せるまで、抱え続ける最も重い罰だ。』
(牢乎、大火を抱きしめる。)
大火:「────っ」
♤牢乎:『これは罰だ。
これから君は僕の弟子となり、人間たち、妖(あやかし)たちを見て、知る。
どちらにも善があり、悪があり。許せるもの、許せないものが存在する。
“是”と“非”、それを見極める時間を、考える時間を、罰として科す。
だから、死んで楽になろうとするなんて許さない。お母さんの所へなど行かせない。』
大火:「……え……?」
♤牢乎:『それでも、結局自分が許せず、異常、怪異に堕ちるのなら。
祓い屋である僕が、手ずから殺すから。安心して。
僕は、君を愛さないから。絶対に殺すから。どの道、人として、救うから。』
大火:「……ああ……」
(大火、元の姿に戻る。)
大火:「師匠……ありがとう……。」
(暗転。)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~元の校舎~
(ノウン、大火を抱えている。)
大火:「……。」
◇ノウン:「大丈夫だ。タイガは息している。」
♡弓燁:「うん!」
(弓燁、手を合わせる。)
♡弓燁:「では、そろそろ良い頃合いです故、
サァサァ、皆々様、これにて終幕としましょう。
……先(せん)づ今日はこれ切り……!!」
(弓燁、鬼化が解け、膝をつく。)
♡弓燁:「………くっ……」
◇ノウン:「やったな!オニトツギ!」
♡弓燁:「まだだよッ!」
◇ノウン:「ッ!!」
(煤が集まり、藍狐の貌を成す。)
藍狐:「タイ、ガ……。」
◇ノウン:「な……ッ!またヨミガエリというやつか……!」
♡弓燁:「ううん、ちょっとワケが違うみたい……」
藍狐:「人間共め……何故タイガを苦しめる……!」
♡弓燁:「……。」
間。
♡弓燁:「私たちは、タイガくんを苦しめようだなんて考えてないよ。」
藍狐:「嘘を吐くな!!!貴様ら人間はタイガを利用して何かを企んでいるんだろう!!」
♡弓燁:「利用しようだなんて考えてない。」
藍狐:「信じられるか!!人間の言葉なんぞ──」
♡弓燁:「人間とか怪異とか関係無い。」
藍狐:「────ッ」
♡弓燁:「私は……私たちは、タイガくんが大事だから、タイガくんが大好きだから、
一緒に居たいって思ってる。」
◇ノウン:「……オニトツギ。」
藍狐:「…………フアアアアアッ!!!」
(藍狐、弓燁に襲いかかる。)
◇ノウン:「オニトツギ!!避けろ!!!!」
♡弓燁:「…………。」
藍狐:「────ッ!!」
(藍狐、弓燁の肩を強く掴む。)
藍狐:「では約束しろ紛い物のこちら側!鬼嫁 弓燁(おにとつぎ ゆみか)ッ!!
月の幻影は更に肥大する!!!!
だが貴様は絶対にタイガを傷付けないと!!どんな事があろうとタイガを守ると!!!」
♡弓燁:「約束する。私がタイガくんを守る。人間からも怪異からも。」
藍狐:「その言葉……努々忘れるなよ……!!」
(藍狐、消滅する。)
♡弓燁:「………………はぁー……!」(倒れる。)
◇ノウン:「大丈夫か!オニトツギ!」
♡弓燁:「う……うん……だいじょうぶー……ちょっと、つかれちゃっただけ……」
◇ノウン:「そ、そうか……今日は、本当に大変だったな……」
♡弓燁:「そ、そうだねー……」
間。
♡弓燁:「まあ……一旦、とりあえず、一件落着……かなぁー……」
間。
♡弓燁:「“月の幻影は更に肥大する”……どういうことだろう……。」
大火:「…………。」(寝息を立てている。)
♡弓燁:「……まだ、何が何だかよく分かってないけれど、私、絶対にタイガくんを守るからね……。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
♤牢乎:「……。」
(牢乎、月を見ている。)
♤牢乎:「……タイガくーん。
今日は一段と、月が綺麗だよー……」
間。
♤牢乎:「はぁー……残念ながらどんどん月は大きく映されていくばかり、是非もなし。
けれど、とりあえず──」
間。
♤牢乎:「今日はこれにて終幕。」
───────────────────────────────────────