行事 Event

数理物理セミナー (2024年度)

日時・場所

講演者

タイトル、概要(タイトルをクリック)

4/25(木16:30〜

オンライン

勝又 彰仁

立教大学

近点移動の表式を求めるための新しい手法について 

概要:

    近点移動は一般相対性理論によって予言される、Newton重力には現れない相対論的な現象の一つである。Einsteinによる水星の近日点移動の説明以降、様々な時空における近点移動が理論的に研究されてきた。例えばKerr時空やReissner-Nordström(RN)時空などにおける近点移動の表式としては、post-Newtonian(PN)展開によって導出されたものが古くからよく知られている。しかし、これらは弱重力場近似のもとで導かれた式であり、強重力場においてはその精度が悪くなる。そこで本講演では、PN展開による表式の精度が悪くなる強重力場領域でも有効な近点移動の表式を求めるための新しい手法について議論する。具体的には、Schwarzschild時空における近点移動の新しい級数表現を導出するWaltersの手法を拡張し、Kerr時空、RN時空およびChazy-Curzon時空への適用を考える。

5/9(木)16:30〜

オンライン

吉田 大介

名古屋大学

加速膨張宇宙と初期特異点について

概要:

  特異点定理により幅広いクラスの時空が特異点を持つことが知られている。一方で、加速膨張宇宙では強いエネルギー条件が破れるため、ホーキングの特異点定理やホーキング・ペンローズの特異点定理は適用できない。

 本講演では加速膨張宇宙の特異点について議論する。 特に、一様等方な加速膨張の初期特異点の判別法や、ヌルエネルギー条件を満たす特異点の無い宇宙の性質について紹介する。


6/13(木)16:30〜

オンライン

片桐拓弥

ニールスボーア研究所

Relativistic tidal effects beyond static tides

概要:

    潮汐力による天体の歪みやすさを特徴づける潮汐ラブ数は、天体の性質と重力理論に依存する。Schwarzschild, Kerrブラックホールの潮汐ラブ数は厳密にゼロである一方で、一般相対論とは異なる重力理論や物質場が存在する環境におけるブラックホールではその限りでない。潮汐変形の効果は連星軌道進化に影響を与え、潮汐ラブ数は重力波波形から測定可能な量である。これを利用して、重力波観測から中性子星を構成する物質の状態方程式に関する制限、強重力場における重力理論を検証する試みが行われている。本講演では、これまで盛んに議論されてきた静的潮汐とそれに関連する話題をレビューしたのち、時間依存性を含めた相対論的潮汐効果を調べた最近の研究について紹介する。

7/18(木)16:30〜

オンライン

宝利 剛

舞鶴高専

Eisenhart lift of scalar field theory

概要:

    ポテンシャル中を運動する粒子の運動方程式を曲がった空間上の測地線方程式におきかえる手法の一つにEisenhart liftがある。

最近、この手法をスカラー場理論に拡張する方法が提案された。

本講演では、スカラー場理論のEisenhart liftについて紹介し、その応用例としてFriedman方程式のEisenhart liftについて話したい。

9/26(木)16:30〜

オンライン

浜中 真志

名古屋大学

TBA

概要:

    TBA

数理物理セミナー (2023年度)

日時・場所

講演者

タイトル、概要(タイトルをクリック)

4/27(木)16:30〜

オンライン

工藤 龍也

(弘前大学)

静的円筒対称時空における光線の振る舞い

概要:

 円筒対称時空は,軸対称なコンパクト天体のモデル化への中間段階として,重力波や宇宙ひも,天体ジェットなどの様々な物理的状況を理論的に調べるために利用されてきた.

 一方,静的球対称時空におけるphoton sphere (PS)は,ブラックホールシャドウの大きさと強重力場における光の曲がり角を計算する際に重要な役割を果たす.また,PSは数理的に興味深い超曲面であり,その一般化概念も数多く提案されている.しかし,完全には一般化されていないので,静的球対称性より低い対称性を持つ時空で,このような超曲面の性質を調べ,一般化へのヒントを探ることは重要である.

 本講演では,静的円筒対称時空を考え,PSに対応する超曲面としてphoton cylinder(PC)を定義し,その幾何的性質を議論する.特に,PCがPSの一般化概念であるphoton surfaeであるかどうかを議論する.また,その超曲面を3次元Euclid空間に埋め込むことによって,視覚化を試みる.具体例として一般相対論の解であるLevi-Civita時空やMelvin宇宙,Conformal Weyl gravityのblack hole解を用いて議論する.

5/25(木)16:30〜

オンライン

野澤 真人

(大阪工業大学)

Petrov-D solutions in gauged supergravity

概要:

 Petrov分類のD型解は,Kerr解に代表されるような定常ブラックホールを特徴づける曲率の代数的性質の一つである.本講演では,超重力理論に現れるようなスカラー場やゲージ場がEinstein方程式の源に持つ場合の,漸近的AdS時空におけるPetrov-D型厳密解について議論する.

6/15(木)16:30〜

オンライン

阿部 慶彦

ウィスコンシン大学)

高階微分補正とblack hole extremality

概要:

 近年活発に議論されている弱い重力予想は、black holeのextremal curveに対して単調的な振舞いを要請する。

本研究では、このような量子重力理論との整合性条件の観点から、高階微分補正項を含むようなnon-linear electrodynamicsとEinstein重力の系におけるblack holeのextremalityについて議論し、extremal conditionが弱い重力予想から期待される単調性を満たすことを示す。

また、charged de Sitter black holeの崩壊についての思考実験から、charged particleの質量下限を与えるFestina-Lente boundが提案されている。

軽いcharged particleからの高次補正を考えることで、このFestina-Lente boundに対するimplicationについても議論したい。

本発表は、野海俊文氏、吉村果保氏、佐竹響氏、Wei-Ming Chen氏との共同研究に基づく。


6/29(木)16:30〜

オンライン

佐合 紀親

(金沢医科大学)

ブラックホール摂動論入門: レビューと最近の話題

概要:

 観測技術の進展により、重力波の直接観測やブラックホール影の撮像が実現し、ブラックホールのより直接的な観測が可能となりつつある。将来的には、宇宙論がそうであったように、精密なデータに基づく観測的ブラックホール物理学が行われる時代が到来すると期待される。このような状況において、理論的研究の手段としてブラックホール摂動論はより重要になるであろう。

 本セミナーでは、ブラックホール摂動論を用いた研究を始めようとしている人に向けたレビューを行い、その応用例を最近の話題を交えて紹介する。

7/20(木)16:30〜

オンライン

初田 泰之

立教大学)

ブラックホール準固有振動モードへの数理的アプローチ

概要:

 ブラックホールに摂動を与えると固有の減衰振動モードが現れ、それを準固有振動モードと呼びます。準固有振動モードは摂動の1次近似の微分方程式の固有値問題として定式化されます。このセミナーではブラックホールの準固有振動モードの固有値問題を調べるための手法について解説します。特に摂動論の解析法として強力な武器であるBorel総和法を用いた方法を詳しく解説する予定です。

11/2(木)16:30〜

オンライン

泉 圭介

名古屋大学)

特性曲面を用いた因果構造解析の手法とその応用

概要:

  通常、因果構造は光的な面をもとに調べられる。これは、伝搬モードの最高速度が光速であるからである。しかし、量子効果により運動項がカノニカルな表式からずれると、光速より早い伝搬が現れる。そのような理論においては、光速より早い最高速度の伝搬モードを用いて因果構造を調べないといけない。

 この発表では、特性曲面を用いた因果構造解析の手法を紹介する。それは、時間発展を記述する偏微分方程式である運動方程式の構造から、因果構造を読み取る手法である。その手法を、アインシュタイン-ガウスボンネ重力理論に応用した例を紹介する。また、時間があれば、この解析を用いた最近の研究について紹介したい。

11/16 () 16:30〜

オンライン

溝口 俊弥

KEK)

超重力の解生成と超弦の双対対称性

概要:

一般相対論において、時空解が一つ、あるいはいくつかのキリングベクターを含むようにアインシュタイン作用を「次元リダクション」するとSL(2,R)のような(グローバル)対称性が現れることが1950〜60年代からすでに知られている。このような対称性は、後に発見された、超重力における「隠れた対称性」と同種のものであることが認識され、ブラックホールやブラックリングなどの簡単な解を「タネ」に、より一般的な解を求めるのに応用されてきた。

一方、超弦理論としては、その低エネルギー有効理論としての超重力のこのような対称性の離散部分群は「双対性(duality)」と呼ばれ、その変換で移りあう配位は「同一のものの異なる表し方」と見なされて、一般相対論での考え方とは異なる。実は、この双対性の考え方こそがLHC/Planck後の超弦による素粒子/初期宇宙模型構築に必要な理論のカギとなっている。本講演ではこれらのことについてできる

だけわかりやすくお話ししたい。

12/14 (木) 16:30〜

オンライン

石井 貴昭

立教大学)

ゲーデル時空の重力超放射不安定性

概要:ゲーデル時空では、摂動がAdS時空の場合と似た性質を示し、ブラックホールに超放射不安定性も起きるようです。スカラー場について先行研究でそのことが調べられています。本講演では、重力摂動を5次元ゲーデル時空およびsquashedゲーデル時空において考え、その振る舞いとブラックホールの超放射不安定性を議論します。

2/29 (木) 16:30〜

オンライン

木下俊一郎

日本大学)

D3/D7モデルにおけるStark効果

概要:D3/D7ブレーンモデルは, N=4超対称ゲージ理論にクォーク自由度を加えた系を記述するAdS/CFT対応のシンプルな模型である. このモデルではD7ブレーンの配位の違いがゲージ理論側での異なった相をあらわし, ブレーン上のhorizonの有・無がクォークの束縛状態であるメソンの不安定・安定に対応する. 特にD7ブレーン上のゲージ場を導入すると, この転移は外部電場印加時の絶縁・伝導相転移となる.

 我々は, 結合した複数のD7ブレーン摂動の(quasi-)normal modeを解析することにより, 電場の強さについて絶縁相・伝導相にわたる全領域で, メソンスペクトルの振る舞いを求めた.そこで本講演では, メソンスペクトルの全体像や特徴的な振る舞いなどについて一連の研究を紹介する.


参考文献:

S. Ishigaki, S. Kinoshita and M. Matsumoto

JHEP 11 (2023) 128 (arXiv:2308.00361 [hep-th])

JHEP 04 (2022) 173 (arXiv:2112.11677 [hep-th]) 

研究室スケジュール(内部向け)