日時・場所
講演者
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4/22(火)16:40〜
オンライン
森田 健
(静岡大学)
Superstring Theory as the Simplest Quantum Gravity
概要:
超弦理論は無矛盾な量子論であると考えられており, 我々の宇宙も超弦理論によって記述されている可能性がある. しかし, 超弦理論とはどのような理論なのか未解明な部分が多い. 本講演では, 仮に超弦理論以外に無矛盾な量子重力理論があったとしても, 超弦理論がもっともシンプルな理論である可能性が高いことを紹介する. 証明はいくつかの仮定と単純な次元解析によってなされ, 超弦理論の詳細な知識も前提としないので, 計算自体は学部生でも理解が可能である. これにより, 仮に我々の宇宙が超弦理論だとすると, 我々の宇宙はもっともシンプルな世界だということができる可能性がある.
5/13(火)16:40〜
オンライン
棚橋 典大
(京都大学)
微分方程式ソルバーとしての機械学習
概要:
本講演では、機械学習を用いた微分方程式の解法として注目されているPhysics-Informed Neural
Network(PINN)を、重力理論およびその応用分野に典型的に現れる微分方程式に適用する試みを紹介する。曲がった時空における弦や極小曲面の形状、非線形波動方程式の時間発展といった例題を通じて、PINNの実用性と課題、従来手法と比べた場合の特性について検証を行う。特に、あるクラスの問題についてはPINNが最良の手法になり得るという可能性について議論する。
6/3(火)16:40〜
オンライン
吉田 健太郎
(埼玉大学)
AdS空間中におけるオシロン
概要:
近年、オシロンとよばれる、実スカラー場の理論における長寿命の振動解が注目されている。トポロジカルチャージなどで安定性が保証されているわけではなく、寿命は無限ではなく、ある時間で崩壊する。このような振る舞いが、宇宙論におけるインフラトンの振る舞いや重力波の観測に関係するという研究も多くなされている。
本講演では、このオシロンについて、平坦時空上における基礎的な性質の解説から始めて、我々の研究であるAdS空間中におけるオシロンについて解説したい。AdS空間の場合、1) 有限な曲率半径が存在する、2) 古典的な転回点による反射が存在するため、平坦空間の場合に比べて、豊かな構造をもつ。AdS空間に特有な性質として、1. 再帰現象、2. 崩壊しない振動解、3. 曲率半径に対する寿命の共鳴構造 について解説したい。時間があれば、このオシロンの応用の方向性について議論したい。
この講演は、石井貴昭氏(立教大)、松本高興氏(成蹊大)、仲野勘太氏、須田亮介氏(埼玉大)との共同研究 arXiv: 2412.19468 [hep-th], 2505.NNNNN [hep-th] に基づく。
7/29(火)16:40〜
オンライン
関野 恭弘
(拓殖大学)
Double-Scaled SYK, QCD, and the Flat Space Limit of de Sitter Space
概要:
A surprising connection exists between double-scaled (DS) SYK at infinite temperature, and large N QCD. The large N expansions of the two theories have the same form; the 't Hooft limit of QCD parallels the fixed p limit of SYK (for a theory with p-fermion interactions), and the limit of fixed gauge coupling g -- the flat space limit in AdS/CFT -- parallels the double-scaled limit of SYK. From the holographic perspective fixed g is the far more interesting limit of gauge theory, but very little is known about it. DSSYK allows us to explore it in a more tractable example. Based on the conjectured duality between DSSYK and de Sitter space, we further argue that the bulk theory in the flat-space limit (which describes the Rindler space) is the 't Hooft model ((1+1)-dimensional QCD ) in the large N limit with fixed g.
9/9(火)16:40〜
オンライン
牧田 悠輔
(名古屋大学)
Weyl formalismのワームホール解への応用
概要:
静的軸対称かつ真空の系は、場の方程式を対称性のある方向(t,φ)と2次元空間(ρ,z)の2つに分離できる。対称性方向の成分はLaplace方程式に、空間方向の成分は1階偏微分方程式に帰着される。この特性をもとに、ブラックホールの外部解など、自明な空間トポロジーをもつ解のクラスについて多くの解析がなされてきた。ワームホールのような特殊なトポロジーをもつ解への適用はこれまで知られてこなかったが、注目する(ρ,z)空間に「切り込み」を入れることで、ワームホール解の構成にも応用できることが明らかになった。この応用にあたっては、切り込み周辺の幾何構造について詳細に吟味する必要がある。
本講演では、最近の研究(arXiv:2505.16361)に基づいて、ワームホール解への応用拡張について紹介する。その結果として得られた、複数の空間的無限遠点をもつ非自明なワームホール時空の解についても取り上げたい。
日時・場所
講演者
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4/25(木)16:30〜
オンライン
勝又 彰仁
(立教大学)
近点移動の表式を求めるための新しい手法について
概要:
近点移動は一般相対性理論によって予言される、Newton重力には現れない相対論的な現象の一つである。Einsteinによる水星の近日点移動の説明以降、様々な時空における近点移動が理論的に研究されてきた。例えばKerr時空やReissner-Nordström(RN)時空などにおける近点移動の表式としては、post-Newtonian(PN)展開によって導出されたものが古くからよく知られている。しかし、これらは弱重力場近似のもとで導かれた式であり、強重力場においてはその精度が悪くなる。そこで本講演では、PN展開による表式の精度が悪くなる強重力場領域でも有効な近点移動の表式を求めるための新しい手法について議論する。具体的には、Schwarzschild時空における近点移動の新しい級数表現を導出するWaltersの手法を拡張し、Kerr時空、RN時空およびChazy-Curzon時空への適用を考える。
5/9(木)16:30〜
オンライン
吉田 大介
(名古屋大学)
加速膨張宇宙と初期特異点について
概要:
特異点定理により幅広いクラスの時空が特異点を持つことが知られている。一方で、加速膨張宇宙では強いエネルギー条件が破れるため、ホーキングの特異点定理やホーキング・ペンローズの特異点定理は適用できない。
本講演では加速膨張宇宙の特異点について議論する。 特に、一様等方な加速膨張の初期特異点の判別法や、ヌルエネルギー条件を満たす特異点の無い宇宙の性質について紹介する。
6/13(木)16:30〜
オンライン
片桐拓弥
(ニールスボーア研究所)
Relativistic tidal effects beyond static tides
概要:
潮汐力による天体の歪みやすさを特徴づける潮汐ラブ数は、天体の性質と重力理論に依存する。Schwarzschild, Kerrブラックホールの潮汐ラブ数は厳密にゼロである一方で、一般相対論とは異なる重力理論や物質場が存在する環境におけるブラックホールではその限りでない。潮汐変形の効果は連星軌道進化に影響を与え、潮汐ラブ数は重力波波形から測定可能な量である。これを利用して、重力波観測から中性子星を構成する物質の状態方程式に関する制限、強重力場における重力理論を検証する試みが行われている。本講演では、これまで盛んに議論されてきた静的潮汐とそれに関連する話題をレビューしたのち、時間依存性を含めた相対論的潮汐効果を調べた最近の研究について紹介する。
7/18(木)16:30〜
オンライン
宝利 剛
(舞鶴高専)
Eisenhart lift of scalar field theory
概要:
ポテンシャル中を運動する粒子の運動方程式を曲がった空間上の測地線方程式におきかえる手法の一つにEisenhart liftがある。
最近、この手法をスカラー場理論に拡張する方法が提案された。
本講演では、スカラー場理論のEisenhart liftについて紹介し、その応用例としてFriedman方程式のEisenhart liftについて話したい。
9/26(木)16:30〜
オンライン
浜中 真志
(名古屋大学)
反自己双対ヤン・ミルズ方程式の解構成法とエルンスト方程式への応用
概要:
反自己双対ヤン・ミルズ(Anti-Self-Dual Yang-Mills=ASDYM)方程式は素粒子論・幾何学において極めて重要な方程式であるが、可積分系としての性質もありラックス表示を持つ。さらに、KdV方程式、戸田方程式といった低次元の多くの可積分方程式がASDYM方程式からリダクションによって得られる。これはウォード予想として知られ、Mason-Woodhouseの本に体系的にまとめられている。
一方、ラックス表示を持つ可積分系に対する解構成法としてダルブー変換というものが知られている。最近ASDYM方程式に対しても適用され、新しいタイプのソリトン解が構成された。これは(余次元4の)インスタントンではなく(余次元1の)ソリトンと解釈され、KPソリトンに似た振る舞いをする。ソリトン・ウォールと呼ぶこともある。トフーフト仮設・ベックルント変換といった従来の方法でもソリトン・ウォール解を構成することができるが、作用密度が恒等的にゼロとなってしまう。一方新しいソリトン・ウォール解では作用密度が3次元超平面上に局在している。
この講演では、ダルブー変換の基本的なアイデアを紹介し、ASDYM方程式のソリトン解を議論する。ASDYM方程式からエルンスト方程式へのリダクションについても紹介し、余力があればダルブー変換などの応用についても触れたい。 この講演は以下の共同研究および発表予定論文に基づく:[arXiv:2212.11800, 2106.01353, 2004.09248, 2004.01718]
10/10(木)16:30〜
オンライン
坂本 純一
(イタリア国立核物理学研究所/豊田工業大学)
可積分な非線形シグマ模型の可積分変形と重力解の生成技術
概要:
可積分な2次元非線形シグマ模型とその可積分性を保つ変形(可積分変形)は、標的時空上における弦理論のダイナミクスを摂動論を超えて厳密に解析するための強力な理論的基盤を提供し、近年の弦理論やゲージ/重力対応の発展において多くの重要な知見をもたらしています。
本講演では、可積分なシグマ模型およびその可積分変形の基礎的な内容とその弦理論や超重力理論への応用例について概説します。とくに、C.Klimcikが提唱したYang-Baxter変形と呼ばれるシグマ模型の可積分変形に焦点を当て、この変形が重力理論における新たな解の生成手法としてどのように機能するかを議論します。さらに、時間が許せば、高次元重力理論の次元簡約から得られる、warped因子を伴うシグマ模型の可積分変形の可能性についても簡単に議論します。
11/12(火)16:30〜
オンライン
木下俊一郎
(日本大学)
Geometrical origin of the Kodama vector
概要:
もともと4次元球対称時空で発見されたKodamaベクトルは、時間並進対称性のない動的な時空においても、Einsteinテンソルとの縮約により局所的な保存則をみたすカレントを与え、
これはMisner-Sharp massのように境界のみの情報で決まる準局所質量と関係することが知られている。このようなKodamaベクトルの概念は、warped product時空の時に高次元、非球対称、Lovelock重力などへ一般化できることが示されてきた。近年、warped productとならない角運動量を持つ3次元軸対称時空においても同様のベクトルが存在し、角運動量の寄与を含む準局所質量も定義できることが示され、warped productは必要条件ではないことがわかってきた。
本講演では、従来のKodamaベクトルの基本的性質がconformal Killing-Yano 2-formに付随するベクトルから導かれることを紹介し、このような時空においては任意の各次数のLovelockテンソルに対してその縮約が保存カレントとなることを示す。
11/26(火)16:30〜
オンライン
前田 秀基
(北海学園大学)
Fake Schwarzschild and Kerr black holes
概要:
原理的にSchwarzschildブラックホールと観測によって区別することができない「にせ」Schwarzschildブラックホールを記述する厳密解を紹介します。そのようなブラックホール解は事象の地平線内部を適切な線形状態方程式を満たす静的球対称完全流体解のキリング地平線を超えて延長した動的領域の時空、地平線外部を厳密なSchwarzschild時空として構成することができます。このとき事象地平線上の計量は滑らかではありませんが、正則であり光的なシェルは存在しません。この構成の場合、地平線内部の物質場は完全流体ではなく非等方流体ですが、強いエネルギー条件を満たし弱いエネルギー条件を(よって優勢エネルギー条件も)破ります。しかしこのようなブラックホールは優勢エネルギー条件だけを破る物質場を用いて 構成可能で、その具体例としてKerrブラックホールと区別することができない「にせ」Kerrブラックホール時空を構成してみせます。参考文献:https://arxiv.org/abs/2410.11937
12/10(火)16:30〜
オンライン
百武 慶文
(茨城大学)
超弦理論に基づく高階微分補正項およびブラックブレーン解の量子補正について
概要:
超弦理論およびM理論は低エネルギーでは超重力理論によって近似されるが、弦の摂動効果を取り入れると高次微分の補正項が現れることが知られている。特にリーマンテンソルの4乗項は古くから知られており、D0ブレーンに基づくゲージ重力対応の検証において重要な役割を果たした。本講演ではD0ブレーンの重力補正についてレビューを行い、ゲージ重力対応が高次微分の補正項を含めて成り立つ可能性があることを解説する。また、リーマンテンソルの4乗項以外の高次微分の補正項を超対称性から決定する研究について現状を報告する。
1/14(火)16:30〜
オンライン
濱田 雄太
(KEK)
Swampland Conjectures and Black Brane Solutions
概要:
低エネルギー有効場の理論のうちで、量子重力と無矛盾に結合で きるものをLandscape、できないものをSwamplandと呼ぶ。Landscapeと Swamplandを分類する問題は量子重力の沼地問題と言い、近年よく研究されている。本講演では、沼地問題のいくつかの予想とその証拠・証明あるいは応用についてお話ししたい。さらに、沼地予想に基づいて存在が予言される新たなbraneに対する重力解を議論する。
2/18(火)16:30〜
オンライン
野澤 真人
(大阪工業大学)
Robinson-Trautman解とその周辺
概要:
歪・回転がゼロとなる光的測地線が存在する時空をRobinson-Trautman(RT)族という.これはSchwarzschild解やC計量を含むPetrov-II型のダイナミカルな計量であり,対称をもたずとも動的にブラックホールが形成される厳密解を表す.RT解のマスター方程式はCalabi フローと呼ばれる曲率進化方程式として知られ,その大域構造を詳細に調べることができると同時に,解析幾何学の観点からも興味深い方程式である.本講演ではEinstein-Maxwell-Lambda系でのRT解が超対称性を保つ条件とその分類,Einstein-Scalar系への一般化とRicciフローとの関係について議論する.さらには高次元への拡張についても述べたい.
3/11(火)16:30〜
オンライン
重森 正樹
(名古屋大学)
超重力理論における多中心解と非可換supertube
概要:
超重力理論における多中心解(multi-center solution)は4次元ないし5次元
における複数のブラックホールの束縛状態を表す解であり、弦理論におけるブラッ
クホールの物理を調べるためのパラダイムとして詳しく調べられてきた。ある特
殊な場合において、多中心解は特異点もホライズンも持たない時空となり、ブラッ
クホールの微視的状態を表すものと考えることができる。そのような解は幾何状
態(microstate geometry)と呼ばれ、ブラックホールの微視的理解のために重
要な役割を果たしてきた。本講演では、まず多中心解の構成を概観する。そして、
通常は余次元3のソースを持つ多中心解は、余次元2のソースを持つように自然
に拡張されることを見る。余次元2のソースを持つ解は弦理論特有の多価性を持
つことができ、それを利用して非可換supertubeと呼ばれる興味深い解の構成を
議論する。
日時・場所
講演者
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4/27(木)16:30〜
オンライン
工藤 龍也
(弘前大学)
静的円筒対称時空における光線の振る舞い
概要:
円筒対称時空は,軸対称なコンパクト天体のモデル化への中間段階として,重力波や宇宙ひも,天体ジェットなどの様々な物理的状況を理論的に調べるために利用されてきた.
一方,静的球対称時空におけるphoton sphere (PS)は,ブラックホールシャドウの大きさと強重力場における光の曲がり角を計算する際に重要な役割を果たす.また,PSは数理的に興味深い超曲面であり,その一般化概念も数多く提案されている.しかし,完全には一般化されていないので,静的球対称性より低い対称性を持つ時空で,このような超曲面の性質を調べ,一般化へのヒントを探ることは重要である.
本講演では,静的円筒対称時空を考え,PSに対応する超曲面としてphoton cylinder(PC)を定義し,その幾何的性質を議論する.特に,PCがPSの一般化概念であるphoton surfaeであるかどうかを議論する.また,その超曲面を3次元Euclid空間に埋め込むことによって,視覚化を試みる.具体例として一般相対論の解であるLevi-Civita時空やMelvin宇宙,Conformal Weyl gravityのblack hole解を用いて議論する.
5/25(木)16:30〜
オンライン
野澤 真人
(大阪工業大学)
Petrov-D solutions in gauged supergravity
概要:
Petrov分類のD型解は,Kerr解に代表されるような定常ブラックホールを特徴づける曲率の代数的性質の一つである.本講演では,超重力理論に現れるようなスカラー場やゲージ場がEinstein方程式の源に持つ場合の,漸近的AdS時空におけるPetrov-D型厳密解について議論する.
6/15(木)16:30〜
オンライン
阿部 慶彦
(ウィスコンシン大学)
高階微分補正とblack hole extremality
概要:
近年活発に議論されている弱い重力予想は、black holeのextremal curveに対して単調的な振舞いを要請する。
本研究では、このような量子重力理論との整合性条件の観点から、高階微分補正項を含むようなnon-linear electrodynamicsとEinstein重力の系におけるblack holeのextremalityについて議論し、extremal conditionが弱い重力予想から期待される単調性を満たすことを示す。
また、charged de Sitter black holeの崩壊についての思考実験から、charged particleの質量下限を与えるFestina-Lente boundが提案されている。
軽いcharged particleからの高次補正を考えることで、このFestina-Lente boundに対するimplicationについても議論したい。
本発表は、野海俊文氏、吉村果保氏、佐竹響氏、Wei-Ming Chen氏との共同研究に基づく。
6/29(木)16:30〜
オンライン
佐合 紀親
(金沢医科大学)
ブラックホール摂動論入門: レビューと最近の話題
概要:
観測技術の進展により、重力波の直接観測やブラックホール影の撮像が実現し、ブラックホールのより直接的な観測が可能となりつつある。将来的には、宇宙論がそうであったように、精密なデータに基づく観測的ブラックホール物理学が行われる時代が到来すると期待される。このような状況において、理論的研究の手段としてブラックホール摂動論はより重要になるであろう。
本セミナーでは、ブラックホール摂動論を用いた研究を始めようとしている人に向けたレビューを行い、その応用例を最近の話題を交えて紹介する。
7/20(木)16:30〜
オンライン
初田 泰之
(立教大学)
ブラックホール準固有振動モードへの数理的アプローチ
概要:
ブラックホールに摂動を与えると固有の減衰振動モードが現れ、それを準固有振動モードと呼びます。準固有振動モードは摂動の1次近似の微分方程式の固有値問題として定式化されます。このセミナーではブラックホールの準固有振動モードの固有値問題を調べるための手法について解説します。特に摂動論の解析法として強力な武器であるBorel総和法を用いた方法を詳しく解説する予定です。
11/2(木)16:30〜
オンライン
泉 圭介
(名古屋大学)
特性曲面を用いた因果構造解析の手法とその応用
概要:
通常、因果構造は光的な面をもとに調べられる。これは、伝搬モードの最高速度が光速であるからである。しかし、量子効果により運動項がカノニカルな表式からずれると、光速より早い伝搬が現れる。そのような理論においては、光速より早い最高速度の伝搬モードを用いて因果構造を調べないといけない。
この発表では、特性曲面を用いた因果構造解析の手法を紹介する。それは、時間発展を記述する偏微分方程式である運動方程式の構造から、因果構造を読み取る手法である。その手法を、アインシュタイン-ガウスボンネ重力理論に応用した例を紹介する。また、時間があれば、この解析を用いた最近の研究について紹介したい。
11/16 (木) 16:30〜
オンライン
溝口 俊弥
(KEK)
超重力の解生成と超弦の双対対称性
概要:
一般相対論において、時空解が一つ、あるいはいくつかのキリングベクターを含むようにアインシュタイン作用を「次元リダクション」するとSL(2,R)のような(グローバル)対称性が現れることが1950〜60年代からすでに知られている。このような対称性は、後に発見された、超重力における「隠れた対称性」と同種のものであることが認識され、ブラックホールやブラックリングなどの簡単な解を「タネ」に、より一般的な解を求めるのに応用されてきた。
一方、超弦理論としては、その低エネルギー有効理論としての超重力のこのような対称性の離散部分群は「双対性(duality)」と呼ばれ、その変換で移りあう配位は「同一のものの異なる表し方」と見なされて、一般相対論での考え方とは異なる。実は、この双対性の考え方こそがLHC/Planck後の超弦による素粒子/初期宇宙模型構築に必要な理論のカギとなっている。本講演ではこれらのことについてできる
だけわかりやすくお話ししたい。
12/14 (木) 16:30〜
オンライン
石井 貴昭
(立教大学)
ゲーデル時空の重力超放射不安定性
概要:ゲーデル時空では、摂動がAdS時空の場合と似た性質を示し、ブラックホールに超放射不安定性も起きるようです。スカラー場について先行研究でそのことが調べられています。本講演では、重力摂動を5次元ゲーデル時空およびsquashedゲーデル時空において考え、その振る舞いとブラックホールの超放射不安定性を議論します。
2/29 (木) 16:30〜
オンライン
木下俊一郎
(日本大学)
D3/D7モデルにおけるStark効果
概要:D3/D7ブレーンモデルは, N=4超対称ゲージ理論にクォーク自由度を加えた系を記述するAdS/CFT対応のシンプルな模型である. このモデルではD7ブレーンの配位の違いがゲージ理論側での異なった相をあらわし, ブレーン上のhorizonの有・無がクォークの束縛状態であるメソンの不安定・安定に対応する. 特にD7ブレーン上のゲージ場を導入すると, この転移は外部電場印加時の絶縁・伝導相転移となる.
我々は, 結合した複数のD7ブレーン摂動の(quasi-)normal modeを解析することにより, 電場の強さについて絶縁相・伝導相にわたる全領域で, メソンスペクトルの振る舞いを求めた.そこで本講演では, メソンスペクトルの全体像や特徴的な振る舞いなどについて一連の研究を紹介する.
参考文献:
S. Ishigaki, S. Kinoshita and M. Matsumoto
JHEP 11 (2023) 128 (arXiv:2308.00361 [hep-th])
JHEP 04 (2022) 173 (arXiv:2112.11677 [hep-th])
日時・場所
講演者
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