修士から博士にかけて,JAISTの橋本研究室で現在も取り組み中の研究.
ヒトの言語は,表現の構成要素(概念・語彙)が再帰的に結合され,この操作により生成される階層構造が意味を決定するというシステムを有する(図1).例えば,「最新日本語辞典」という表現はその階層構造によって,{新しい{日本語の辞典}}とも{{新しい日本語の}辞典}とも解釈することができる.ヒトと同様に音声信号でコミュニケーションを行う他の動物において,このような階層構造の生成は観察されていない.いったいどのような生態環境が,階層構造生成の能力を進化させうるのだろうか.
この疑問に対して,ヒトの進化史において語の再帰的結合よりも前に出現した,石器製作のような行動における物体の再帰的結合の能力が言語表現に転用されたという仮説(Fujita, 2009, 2016)が立てられている.本研究では,この仮説の立場を取って,再帰的結合の能力の適応性とその進化シナリオを明らかにすることを目的とし,計算機シミュレーションを用いてアプローチしている.
図1 構文における階層構造
学部生の頃に山形大学工学部の中島・山田研究室で取り組んでいた研究.
0.3-3.0 THzの周波数を持つ電磁波(テラヘルツ波)は,電波と光波の両方の性質,すなわち透過性と直進性を併せ持つ.このことから放射線を用いない安全な荷物検査(セキュリティイメージング)や,生体・有機物質の分析などへの応用が期待されている.また,従来の高周波技術が追求してきた高速大容量通信や,天体観測における宇宙背景放射の観測への応用も考えられている.現在実用化されているテラヘルツ波検出器にはシリコンボロメータやショットキーダイオードなどがあるが,シリコンボロメータは極低温(数K)まで冷却する必要があり,常温で動作するショットキーダイオードは検出可能な帯域が制限される.そのため常温,あるいは安価な液体窒素を用いた簡易な冷却で動作し,かつ広帯域・高感度・高速度なテラヘルツ波検出器の開発が求められている.
超伝導ジョセフソン接合を用いた検出器は,半導体検出器よりも高感度かつ高速度な応答性を有し,接合部の材料に高温超伝導体であるYBa2Cu3O7-δを用いると液体窒素温度(77K)で動作する.また理論上,テラヘルツ波帯域全てをカバーする検出周波数を持ちうる.本研究では高温超伝導によるジョセフソン接合を作製し,接合上にシングルスロットのダイポールアンテナを集積することで,広帯域テラヘルツ波検出器の実現をねらった.