研究関心
研究分野や、これまでに携わってきた研究プロジェクトについての説明です。
1.高齢者の社会参加の促進に関する研究
定年退職により、職域から地域へと生活の場が移行した高齢者が社会との繋がりを維持し、健康を維持していくための方策として、地域社会における高齢者の社会参加活動に関しての検討をしています。現在は、主に「高齢者の就労」と「世代間交流型ボランティア」の2つの側面からの検討をおこなっています。
【携わった研究プロジェクト】
大都市求職高齢者の実態解明およびシームレスな社会参加支援に向けた研究(JSPS科研費、基盤A、平成28-30年度 、研究代表者:藤原佳典)
保育領域における高齢者ボランティアの就労ニーズに関する研究(前川ヒトづくり財団研究助成金 特別枠、平成31年度、研究代表者:相良友哉)
「より就業に結び付きやすい高齢者就労支援」のモデル検討―好事例の質的分析から―(前川ヒトづくり財団 特別枠、平成31年度、研究代表者:高橋知也)
新型コロナウイルス感染症の流行が高齢者の世代間交流型ボランティア活動に及ぼす影響に関する研究(前川ヒトづくり財団 一般枠、令和2年度、研究代表者:藤原佳典)
介護老人保健施設等における業務改善に関する調査研究事業(老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業)、令和 2 年度、研究事業班長:藤原佳典)
シルバー人材センター会員に注目した高年齢就業者の安全・健康管理に向けた要因の解明(JSPS科研費、基盤B、令和3-5年度、研究代表者:藤原佳典)
人材不足の業種・職種へ流出入するシニア就業者の特性及び機序の解明(ディップ総研研究助成金 若手研究者部門、令和4年度、研究代表者:相良友哉)
●高齢者の就労に関する検討
定年退職したあとも、一定の金銭収入を求めて働く金銭就労の高齢者や、生きがいを求めて地域のなかで短時間、簡単な仕事をしたいと考える生きがい就労の高齢者など、就労意向を持つ高齢者は多い。
高齢期における就労のひとつのあり方として「補助人材」に注目し、検討をしている。専門職の補助的役割として、切りだされた周辺業務を行うことで、高齢者本人・専門職(正職員)・企業や事業所のすべてにメリットがある(三方良し)。アンケート調査やヒアリング調査を通じて、高齢期におけるより効果的な働き方や、健康との関連について分析している。
また、求職意向のある高齢者を実際の仕事に結びつけるため、就労支援組織の窓口でどのような支援体制が見られるか、ヒアリング調査を通じた実態把握にも努めている。
●世代間交流型ボランティア活動に関する検討
一線を退いた後に、地域でボランティア活動をする高齢者が多い。特に、社会貢献性が高い活動をすることは、本人の心身の健康状態や生活機能維持に効果的である。
世代間交流型で社会貢献性の高いボランティア活動をおこなう高齢者として、子ども向けに絵本の読み聞かせ活動をおこなう高齢者を対象に、定期的なアンケート調査を実施し、経年的な変化について検討している。
また、社会状況の変化によるボランティア活動の内容変更や頻度の減少などが、高齢者本人にどのような影響をもたらすのか、今後検討をしていく。
2.住民の健康づくりやまちづくり支援に関する研究
地域保健法の改正により、市町村保健センターが対人保健の中核を担うこととなりました。地方自治体が、住民の健康増進のため、いかなる取り組みをおこなっているのか検討しています。主に「保健センターの他分野との連携体制」に関する検討を行っています。また、行政がその外郭団体やその他インフォーマルな組織等による居場所づくりや地域の担い手についての研究もおこなっている。
【携わった研究プロジェクト】
包括的支援体制構築に向けた市町村保健センターと他分野の連携に関する研究(厚生労働科学研究費補助金、平成30-令和元年度 、研究代表者:藤原佳典)
社会福祉協議会を活かした、新しい次世代の地域交流・担い手育成の形の検討(研究代表者:石川大晃)
地域包括ケアシステムを構成する地域資源としての高齢者の「居場所」に関する調査研究事業(老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業)、令和 4 年度、研究代表者:藤原佳典)
●まちづくりや地域の居場所づくりに関する検討
急速な核家族化、都市化により、かつてのような三世代以上が同居している家庭は少なくなっている。また、単身世帯の割合も年々高くなっており、「社会的孤立」や「孤独死」の問題も取りざたされている。
コミュニティの中にある、社会的な居場所(サードプレイス)の発掘と、その活用についての検討により住民同士の繋がり(ソーシャル・キャピタル)の醸成、顔の見える地域づくりを目指している。特に、昨今の社会情勢を鑑みて、サイバースペースにおける、実態を伴わないオンラインでのコミュニケーションにも関心を持っている。
●保健福祉専門機関や専門職の他分野との連携体制に関する検討
少子高齢化や核家族化などが背景となり、地域住民が抱える健康課題が多様化・複合化していることが指摘されている。住民に対する地域保健や地域福祉の中核を担う市町村保健センターや社会福祉協議会、地域包括支援センター等がどのように地域住民の健康課題を把握し、事業を展開しているのか、庁内各部門との連携体制と、地域の様々なアクターとの連携体制の2方面から検討をしている。
保健師や栄養士などの専門職個人の能力と切り離して、機能としての保健センターに見られる連携や協働体制について更なる検討を予定している。また、地域福祉の専門職として各圏域に配置されている生活支援コーディネーター職の役割についても関心を持っている。
3.市民社会組織に関する研究
具体的には都市ガバナンスが如何なる要因で良くなりまた悪化するかを、市政府(首長、職員、議会)と社会団体(含NPO)と自治会、市民の相互関係をサーベイ調査(質問紙)でデータ収集し、分析することを通じて市民社会の社会関係資本とネットワーク関係、政策満足度、信頼関係などの相互関係の解明を目指しています。
【携わった研究プロジェクト】
日本とアジアにおけるローカルガバナンス(国家・市民社会関係)の比較実証研究(JSPS科研費 基盤研究A、平成26-令和2年度 、研究代表者:辻中豊)
●市民社会組織に関する検討
持続可能な社会を目指して、昨今、ローカル・ガバナンスへの社会的関心が高まっている。地域住民の生活と制度とを橋渡しするうえで、市民社会組織(Civil Society Organizations; CSOs)の果たす役割は大きい。これらの組織が時代ごとにどのような役割を果たしていたか、その影響力の大きさはどのように変化してきたのか検討を続けている。
●市民社会の構造に関する検討
市民社会(≒コミュニティ)を構成する様々なステークホルダーが、いかに市民社会の維持・発展に寄与しているか検討している。特に、自治体、町内会(自治会や町会等を含む)、NPO、市民社会組織への調査をおこない、全体構造の実態把握に努めている。
また、同様の調査を東アジア諸国でもおこなっている。今後、国際比較を通じた日本的な市民社会構造の検討を行う予定である。