Research

最近の研究内容

日本企業の条件付保守主義の計測

私が現在行っている主要な研究テーマのひとつは、日本企業の条件付保守主義に関する定型化された事実(Stylized Facts)を「再」検証することです。条件付保守主義とは、会計上の保守主義のふたつの形態のうちのひとつ(典型的には資産のライトダウン)を指しており、近年活発に研究が進められているトピックです。

国内外を問わず、条件付保守主義を計測するにあたっては、Basu(1997)のモデルが用いられていますが、数多くの研究がオリジナルのBasuモデルには問題があることを指摘しています。そこで、私は日本企業のデータを用いて条件付保守主義を計測する際の問題点(そして、その改善策)を探る研究を進めてきました(→山下[2023])。

具体的には、「日本のデータにBasuモデルを応用して条件付保守主義を計測する場合にも、先行研究で指摘されている問題(基本的には米国のデータが用いられています)が観察されるのか?」「もしそうだとすれば、その問題に対処することが可能なのか?」という問いに取り組んでいます。最近では、その研究で得た知見を活用して、日本の条件付保守主義に関してよく知られた知見を再検証するとともに、新しく観察された条件付保守主義の経年変化パターンを説明するための仮説構築・検証に取り組んでいます。

のれんの「償却vs.非償却」論争に関する研究

私はこれまで共同研究者たちとのれんの償却・非償却をめぐる会計基準設定上の論争について研究を進めてきました。とくに、これまで科研費や日本会計研究学会スタディグループの助成を受け、作成者、利用者(アナリスト)、監査人の皆様へ質問票調査を実施し、のれんの会計処理に対する見解について調査を行ってきました。「日本の利害関係者たちは、のれんの会計処理について償却、非償却いずれを望ましいと考えているのでしょうか?」「その結果は国際的な議論の場でいわれている利用者、作成者、監査人のイメージと異なっているのでしょうか?」、本研究はこれらの問いに(完全ではないにせよ)答えるものになっています。現在はこれまでの調査の結果から日本の見解の特徴を析出するとともに、のれんの償却・非償却をめぐる関係者の「事実認識」についてさらなるなるエビデンスの蓄積を目指しています。

*関連するするワーキングペーパーとして→[こちら](のれんの減損に関するアナウンスメントに対する市場の反応を調べました。)