クマが生態系の中で果たす役割について整理しています。
多くの果実を利用するクマは、種子散布者として植物の長距離分散に貢献し、長期的には森林の空間構造に影響していると考えられています。種子散布は、国内外で最もよく研究されているクマの生態的機能であり、森林率の高い日本では多くの先駆的な研究が進められています。
遡上してきたサケマス由来の栄養塩を陸上に輸送することは、木彫りのクマに知られるように、クマの生態的役割として最も象徴的なものです。この栄養塩輸送によって河畔林の土壌養分や樹木の成長が増加します。
多様な餌をとるクマは、植食者・捕食者・死体食者としての役割も担っています。
クマは、樹皮剥ぎやクマ棚形成を通して樹上や林床の微小環境を変えています。また、掘り返しによって土壌や土壌生物、植物に影響します。
関連文献
富田幹次 (2025)生態系の中でクマが果たす役割:生態的役割に基づいたクマの管理に向けて、森林科学
Tomita & Hiura (2024) Brown bear digging decreases tree growth: implication for ecological role of top predators in anthropogenic landscapes. Ecology 105: e4266. (open access)
Tomita & Hiura (2022) Negative effects of brown bear digging on soil nitrogen availability and production in larch plantations in northern Japan: their potential role as an agent of bioturbation. Pedobiologia. 91-92: 150807