セミ幼虫の利用可能量を調べるために、様々な森林タイプ間でセミの羽化殻の密度を比較しています。抜け殻をカウントしていると、冬虫夏草セミタケの子実体が頻繁にみられます。冬虫夏草は集中的な空間分布を示し、そういった場所は「坪」と呼ばれるのですが、なぜ「坪」が形成されるのかはあまり調べられていません。私の調査地にも坪が沢山みられます。他の地域で調べたことはないですが、セミタケの密度が高いのかもしれません。
「坪」の形成には、宿主の密度や胞子の分散制限、土壌や光といった物理環境、のように様々な要因が影響している可能性があります。また、「坪」がどれくらいの空間スケールのものなのかも気になることろです。まだ構想中ですが、冬虫夏草セミタケの空間分布を規定する要因を解明することを目指しています。階層的な空間スケールで解析できるようなデザインでデータをとれば、ある程度の要因は分離できるのではと考えています。これはサブテーマなのでメインテーマの息抜き程度にやってます。
対象生物であるエニワセミタケは、胞子が付いていないキノコがたくさん見られるというとても面白い特徴があります。キノコは胞子を作り、ばらまく器官なので胞子を持たないキノコはとてもミステリアスです。この謎を解き明かすべく、いくつかの問いを立ててフィールド調査してます。
富田幹次「冬虫夏草エニワセミタケの空間分布:宿主密度と森林タイプの影響 」日本生態学会北海道地区会,苫小牧, 2019年・12月[ポスター]
富田幹次「セミを食べるヒグマ、セミに寄生する冬虫夏草の研究 」第1回 進化学若手の会【あつまれ へんないきざま】,2020年9月,オンラインセミナー[口頭発表]Link
富田幹次「冬虫夏草エニワセミタケの奇妙な生態」種生物学会シンポジウム,2020年12月, [オンラインポスター]