複合アニオン化合物では、2種類のイオンが導入されたことに起因する、特徴的な結晶構造を持っています。しかし、これらは一般的な回折法では捉えることができません。 図1はペロブスカイト型酸フッ化物、BaInO2Fの15Kでの粉末X線回折図とリートベルト解析の結果です。平均構造を反映するX線回折図は立方晶ペロブスカイト型構造に基づいた結晶構造モデルで良いフィティングが得られます。一方、回折図をフーリエ変換することで得られる拡張2体相関分布関数については、rが8 Å以上の領域では立方晶の構造モデルをもとに計算下で良い一致が見られたものの、rが8Å以下の領域では測定データを再現することができません(図2)。これはrが8 Å以下の局所構造は立方晶で再現できない事を示唆しています。そこで、rが8Å以下の局所構造について、BX6 八面体の回転を考慮したより対称性の低い結晶構造モデルを用いてフィッティングを試みたところ、三斜晶の構造モデル測定結果を良く再現できることがわかりました(図3)。これらの結果から、BaInO2Fでは、局所的には、BX6 八面体が回転した歪んだペロブスカイト型構造をしているものの、価数の異なる陰イオンが確率的に分布することによって、陰イオン変位の長距離秩序が打ち消され、平均構造を反映するX線回折図では立方晶構造としてフィッティングできたと考えることができます[1]。また、異なるペロブスカイト型酸フッ化物、BaFeO2Fでは局所的な分極構造が存在することも明らかにしています[2].
この様に複合アニオン化合物の結晶構造を理解するためには、平均構造だけでは不十分であり、2体相関分布関数など近距離での局所構造も含めて議論することが必要です 。
[1] Synthesis of new perovskite-type oxyfluorides, BaInO2F and comparison of the structure among perovskite-type oxyfluorides, J. Solid State Chem., 279, 120919 (2019)
[2] Existence of Local Polar Domains in Perovskite Oxyfluoride, BaFeO2F, Chem. Mater., 36, 3697(2024)