東北大学人工知能学研究会学生の会 (Tohoku Artificial Intelligence Student Group / TAS) として発足
研究概要: ソーシャルネットワークが発達した現代において、商品や情報がネットワーク上でどのように普及していくかを解明することはマーケティングにおける大きな課題の一つである。そして、人々の関係性が普及要因として重要であることが分かっている。先行研究ではこの関係性を調査するためにアンケートなどを必要としていたが、現代の大規模・複雑化したソーシャルネットワークにおける普及分析に対しては実現可能的でない。そこで本研究では混合メンバシップ確率的ブロックモデルを用いることで、人々の間に存在(潜在)する関係性をデータから推定し、それが商品普及に与える影響を分析するモデルを提案する。実証分析ではインドにおける小口金融普及プログラムのデータを用いて提案モデルの有効性を検証する。
研究概要: 本研究は複雑な脆弱・軟弱対象物の把持を可能とする袋型グリッパ機構に関する研究である.従来の粉体を用いた袋状グリッパは袋内部が粉体によって完全に満たされていたため,把持対象物形状へなじませるために100N以上の押付力を必要とした.更に十分ななじみ変形を得ることができず,対象物の把持は困難であった.そこで本問題を鑑み,二層のシリコンゴム膜間のみに粉体を封入した三層ジャミング膜機構を考案した.本機構を袋状グリッパ機構の袋部に適用することで,袋内部を中空構造とすることができる.そのため,対象物形状になじむ際に粉体が抵抗とならず,袋が折り折り返されるため,低押付力での対象物取り込み動作を可能とした.これにより,脆弱・軟弱対象物に代表される生卵やイチゴなどの果物の把持を力制御などの複雑な制御を一切必要とせずに把持が可能である.
研究概要: プロジェクタ・カメラシステムを用いた三次元計測は広く用いられているが,金属物体や半透明物体を含むような「光学的に複雑なシーン」を精度良く計測することは未だ難しい.プロジェクタ・カメラシステムが線形の光学特性をもつとき,そのインパルス応答は LTM (Light Transport Matrix) で表される.LTMの計測を行うとプロジェクタ・カメラシステムで計測できる計測対象シーンの情報すべてを取得していることになり,「光学的に複雑なシーン」の三次元計測が可能であることが確認できている.一方,LTMはプロジェクタ画素数とカメラの画素数の全組み合わせだけの自由度を持つ非常に巨大な行列のため,計測に莫大な時間がかかってしまう.私のアプローチは,劣決定な問題である「少ない計測回数でのLTMの全要素計測」をスパース推定を用いて推定し三次元計測を行うものであり,「光学的に複雑なシーン」の三次元計測を目指している.
研究概要: ビジュアルサーボの一つにImage-based visual servoing (IBVS) と呼ばれる手法がある.IBVSを用いることによりカメラからの情報に基づき,マニピュレータや移動ロボットの位置決めを行うことが可能である.IBVSでは,予め撮影した目標画像から抽出した画像特徴量と,1制御周期ごとに取得する画像から抽出した画像特徴量の差分が0に近づくようにロボットを制御することで位置決めを達成する.このとき,特徴量の差分値をロボットの指令値に変換する行列はイメージヤコビアンと呼ばれ,この行列は抽出する画像特徴量ごとに予め計算しておくか,実験的に求めておく必要がある.IBVSにおいてはロボット/カメラ間のキャリブレーションが不要であるという利点があるのに対し,画像から抽出する特徴量によって位置決め精度が大きく作用されてしまうという欠点がある.そこで本研究においては畳み込みニューラルネットワーク (CNN) に画像特徴量の抽出とイメージヤコビアンの導出の役割を担わせることにより,従来のIBVSと比較して,光環境や背景の変化に対してロバストかつ高精度なビジュアルサーボを提案している.本手法は,位置決め時に光環境や背景が変化した際にも正確な指令値を計算するようにCNNを訓練することで,従来のIBVSよりも環境の変化に対してよりロバストな位置決めを実現することが可能である.
名称を東北情報学学生の会 (Tohoku Informatics Student Group / TIS) に変更
研究概要: 生命情報科学は、生命が持つあらゆる『情報』を情報科学を活用して分析し、生命科学への理解を深める分野である。本発表では、バイオインフォマティクスが普段解決する問題について解説することで、分野に対しての聴衆らの理解を深めることを目的としている。
研究概要: 物体の搬送作業は工場から日常生活まで幅広く行われている作業であり,物体運搬には一般的に運搬台車が用いられている.しかし,積載重量を含めた総重量が300 kg ~ 500kgになると,台車の使用者の身体負荷が非常に大きい.そこで,重量物搬送のために台車にアクチュエータを付加させた「パワーアシストカート」が研究開発されている.従来のパワーアシストカートは付加するモータ数で1モータ,2モータ,4モータタイプに大別され,モータ数が増えるほど支援可能な自由度の増加により,高い操作性と様々な機能を持たせることができる.しかし,モータ数の増加に伴いカートのコストが増加する.そこで,本研究では「低コストかつ高い操作性を有するパワーアシストカートの研究開発」を目的とし,1モータカートに差動歯車と油圧ブレーキを導入し,1モータの駆動力のみを用いて直進と旋回の両方でパワーアシストが可能な新しいパワーアシストカートを提案する.提案するパワーアシストカートのために,ハードウェア(機構設計)とソフトウェア(制御系設計)の両面から操作性の向上を図る.ハードウェアの観点から,操作インターフェースであるハンドル・ブレーキ機構のコンセプトを提案し,コンセプトに基づいて設計したハンドル機構を説明する.また,ハンドル・ブレーキ機構のコンセプトをモータのない手動カートへ応用し,旋回と減速動作の支援が可能なブレーキ操作型手動カートを提案する.ソフトウェアの観点から,制御点とカートの運動状態を利用したカートの速度制御方法について説明する.
研究概要: 本研究では,車いす利用者のための新しい段差・階段昇降支援システムを提案し,システムの設計および動作検証を行う.一般家庭において車いす利用者が安全かつ簡単に屋内外を移動可能にすることで車いす利用者の積極的な社会生活への参加が期待できる.その一方で既存の段差昇降機や階段昇降機では,1) 下階側で昇降機が専有するスペースが大きい,2) 階段用と段差用で設計が異なることによる設計・生産コストの増加,が挙げられる.そこで,提案するシステムでは,1) 下階側を専有しない,2) 階段・段差共有システムである,3) 低コスト化のためのアクチュエータを駆動以外で増やさない,の3つをコンセプトとして設計を行った.本発表では,このコンセプトに基づいて設計・試作した階段/段差昇降支援システムの機構や制御等を説明し,実験によりその有効性を示す.
研究概要: 三次元点群などによる三次元物体の表現は直感的であり,様々なセンサで取得されたデータを統一的に取り扱いやすいため,3Dビジョンやロボットビジョン分野での利用が進められている.その一方で,二次元画像に対しては非常に強力な深層学習のアプローチを直接三次元点群に対して適用することは困難である.その理由として,三次元点群は順不同な入力であること,三次元点群に対して畳み込みの定義が難しいこと,剛体変換に対して不変な量の推定を行うタスクが主であることが挙げられる.本発表ではこれらの問題の解決を目指した近年の研究動向(PointNetと関連研究)について紹介し,点群深層学習のイントロダクションとする.
研究概要: 災害対応ロボットの移動機構として,狭隘軟弱地上(例えば津波後の瓦礫が多くある,ぬかるんだ地面など)で大きなペイロードを確保しながらの走行を可能とする「面状全方向クローラ機構」の研究を行っています.これまで困難であった無限軌道上の無限軌道体への駆動伝達を,2つのアクチュエータのみで可能とする「ラックチェーン機構」の考案・設計,試作を行いました.この駆動原理を搭載した面状全方向クローラ機構の具現化を行い,これまで不可能であった,雪上や砂利上での全方向移動を可能としました.また,全方向移動は無旋回動作のため,摺動面積が小さく走行面を傷つけないという利点があります.この利点を定量的に評価するため,ロボット走行時の地面乱動性(地面の荒れ具合)を評価する手法を提案し,実験を行いました. その結果,軟弱地上での面状全方向移動の有用性を示すことができました.この成果が,移動可能なフィールドを拡大し,災害現場のみならず,様々な極限環境を探査可能にしていく技術になると展望します
研究概要: 永久磁石の強大な吸着力を非線形ばねの反発力で補償することにより微小操作力で制御可能とする「内部力補償型磁気吸着機構(IBマグネット)」は、壁面吸着移動体や群ロボットのモジュール連結機構などに用いられてきた。本研究では、その非線形ばねの設計性の複雑さや補償精度と機構容積の二律背反を解消する革新的なばねを考案し、その有効性を検証する。さらに、IBマグネットを無段階の変位-力変換機とみなし内蔵した移動機構・把持機構・可変剛性機構など様々な応用構造について具現化を行い、磁気機構学として体系化を目指す。