会長あいさつ
豪雪の田舎道を疾駆する1 台のドクターカー。揺れる車内で懸命の処置にとりくむ医療チーム、喉頭鏡が放つ一閃の光芒。
この度、節目ともいうべき、第20回日本病院前救急診療医学会総会・学術集会を2025.12.13(土)に福島県会津若松市で開催させていただくことになりました。
ドクターカーという言葉を耳にすると、一種詩的ともとれる情景が脳裏にうかんできます。当院は、県内3番目の救命センターとして1986年10月に認可されました。会津地域は、千葉県に匹敵する面積を有し、遠隔地は当院から100km以上離れています。この間に高次病院は一切ありません。遠隔に住む重症患者が、2時間以上にわたり適切な医療介入がなされず、苦しみながら生命を失っていく…市内であれば、きっと救命されただろう生命です。人命に居住地による軽重があるべきではない、そのような先人たちの想いが、1986年11月に日本で先駆けてドクターカーシステムを開始した原動力となりました。それから40年弱が過ぎて、全国多くの場所で、地域の実情に適したドクターカーシステムが花開 きはじめています。40年前にみんなが思い描いていたバラ色の医療環境は実現されたのでしょうか?医学部増員政策にもかかわらず、地方と都心部、診療科間の医療格差は増大の一途にあります。働き方改革の推進は、救急医療の崩壊を惹起しうる危険性を秘めています。地方での医療アクセスはむしろ悪化する一方なのが実情ではないでしょうか?そのなかでドクターカーの広がりとシステム化、病院救命士制度の実現、グラウンドナースの地位確立は、起死回生への重要な光明です。
今回のテーマは “The Origin ~ 原点から見つめる病院前診療~”と題し、ドクターカーのraison d’être を見つめ問い直し、地方と都心でのドクターカー運用法や効能の違い、ドクターカーのコストの問題、病院救命士やグラウンドナースの教育や活用といったことに関して熱い議論を交わしていければと考えています。
会津は古い歴史と文化が根付いています。幕末維新のときにみせた会津藩の“義”を、地域を守る拠 点病院のみなさまにぜひ共感していただければと思います。また2022年度まで9年連続で日本一を受賞した日本酒など、お酒やグルメも“極上の会津”を堪能できます。江戸時代の温泉番付にも選ばれた東山温泉をはじめ、さまざまな名湯もあり、酷使した体を癒すにも最適です。
最後になりますが、小所帯ながら、スタッフ一同第 20 回学術集会を無事開催できるよう、また極上の会津をご堪能いただけるよう、粉骨砕身して行く所存ですので、ぜひご参加のほどよろしくお願いいたします。 謹白
2025年5月吉日
第20回日本病院前救急診療医学会総会・学術集会
会長 小林 辰輔