これまでに取り組んだ研究テーマの一部を紹介します.
電子署名は,電子文書の作成者がその文書を作成したことや,文書に改ざんがないことを確認できる暗号技術です。生成した電子データに電子署名を付加して通信することにより,データの作成者を確認でき,通信の途中でデータが改ざんされていないことを検証できるため,安全な情報通信を実現できます.
高度情報社会では,あらゆる物がインターネットに接続されるIoT(Internet of Things)化が進みます.IoT化により多くの機器がデータを送受信するため,データの作成者の確認や改ざんの有無を検証することが重要です。そのため電子署名が利用されますが,機器の数が非常に多い場合,個別に署名を付与すると通信量や検証の負荷が大きくなるという課題があります.そこで,複数の署名を一つにまとめることができる集約署名という高機能暗号技術が注目されています.これまでに,効率の良い集約署名の設計や安全性証明の改良の研究を行いました.
ハッシュ関数は,任意長の入力を固定長の出力に変換する関数であり,署名方式の構成において広く用いられます.暗号技術で用いられるハッシュ関数は暗号学的ハッシュ関数と呼ばれ,出力が一致するような2つの異なる入力を見つけることが困難である衝突困難性などの性質が求められます.
電子署名の安全性を議論するときに,ハッシュ関数を理想的なランダム関数とみなしたランダムオラクルモデルがよく用いられます.ランダムオラクルモデルを用いない標準モデルと比較して,安全性証明が可能な効率の良い署名方式を設計できます.
しかし,ランダムオラクルモデルではハッシュ関数を理想的なものとして扱うため,実際のハッシュ関数に対して安全性を破る攻撃が行われたときの影響を解析できません.そこで,従来のランダムオラクルモデルを弱めたモデルを提案することで,ハッシュ関数に対する攻撃が存在する状況を捉えるモデルを新たに提案しました.さらに,提案モデルを用いて署名方式の安全性強度を解析する研究を行いました.