手塚研究室は,2026年4月に名古屋市立大学に発足した,手塚真徹が主宰する暗号理論および理論計算機科学の研究室です.その前身は,2022年4月から鶴岡工業高等専門学校の情報コースにおいて1年間活動した手塚研究室であり,名古屋市立大学への着任を機に,研究内容および研究室運営の方針を再整備し,新たにスタートしました.
本研究室では,公開鍵暗号,電子署名などの暗号技術を対象として,安全性定義,暗号方式の構成,安全性証明に関する理論研究を行っています.具体的には,暗号技術に求められる安全性を数理的に定式化し,その安全性を満たす暗号方式を設計するとともに,計算問題の困難性に基づいて方式の安全性を証明します.また,暗号方式の安全性概念間の関係,安全性証明の効率,高機能暗号,耐量子暗号の構成法などについても研究しています.以下では,本研究室の主要な研究テーマを紹介します.
暗号技術の安全性を証明する手法に帰着とよばれる手法が用いられます.帰着とは,ある計算問題を別の計算問題へ変換する手法です.問題どうしの帰着が構成できれば,計算問題の難しさの関係を明らかにできます.暗号理論の研究においては,帰着は計算問題の困難性から暗号方式の安全性を証明するときに用いられます.本研究室では帰着を用いて安全性証明が可能である暗号技術の構成に取り組んでいます.
高機能暗号技術とは従来の暗号技術に便利な機能を付加した暗号技術のことを指します.高機能暗号の例として完全準同型暗号があります.完全準同型暗号は暗号化されたデータに対し,復号することなくデータに対し演算を可能にできる暗号技術であり,プライバシーを保護しながら統計データの計算を可能にします.本研究室では高機能暗号の安全性モデルの定義,方式の構成,安全性の証明に取り組んでいます.
耐量子暗号とは古典コンピュータで動作できる,量子コンピュータにとって破ることが困難である暗号です.大量の量子ビットを扱うことができる量子コンピュータが完成すると,従来用いているRSA暗号などの安全性が破られます.量子コンピュータの完成に備えて,耐量子暗号の開発を行う必要があります.本研究室では格子や符号に関する計算問題の困難性を用いた耐量子暗号の構成に取り組んでいます.
計算量理論やアルゴリズム理論の研究にも興味があります.計算量理論では計算問題がどれほど難しいかを計算に必要な時間や領域などの尺度を用いて調べる学問です.最悪時間計算量,平均時間計算量,パラメータ化計算量,精微な計算量,探索問題の計算量などに関する理論に興味があります.アルゴリズム理論の研究では,アルゴリズムの解の精度や動作時間が理論的に証明できるアルゴリズム設計に興味があります.