2026年度の細胞構造研究会の活動案内
電子顕微鏡技術研究会の海野和俊氏(世話人)から朴杓允と洲崎敏伸に口演依頼を頂きました。細胞構造研究会の会員で興味のある方は以下の会場にお越しください。参加できない方でも口演を自宅においてオンラインで視聴できます。
***詳細が決まり次第、このページでもお知らせします***
日 時:2026年4月11日(土)午後2時(詳細不明)
場 所:帝京大学溝の口病院(Zoom口演でも視聴はできます)
企画母体:175回電子顕微鏡技術研究会の主催
細胞構造研究会の賛助
口演内容:
① ポジティブ染色とネガティブ染色(朴杓允、60分)
② ミトコンドリアの構造と機能を読み解く情報(朴杓允、30分)
③ 最適化された水凍結乾燥法によるSEM試料作製―氷晶形成を抑制し、生物本来の姿をとらえる(洲崎敏伸、30分)
細胞構造研究会の活動は神戸周辺に限られています。そのため、電顕人口の多い東京以北の会員にはなかなか情報が伝わりにくくなっています。これを解消するために、東京の電子顕微鏡技術研究会と協同して口演活動を行うこととしました。事情が許せば、春は東京で、秋は神戸周辺で講演活動を行うつもりです。講演内容は、1)ポジティブ染色とネガティブ染色、2)オルガネラ物語(電顕解析に役立つミトコンドリアの構造と機能)、3)水凍結乾燥法です。これらは昨年の11月、岡山の就実大学で行った講演内容とほぼ同じですが、全く同じものではありません。特にポジティブ染色の情報は大幅に更新しました。以前の内容では、特定のpH範囲で生じする電子染色分子種を特定していませんでした。そのため、就実大学の口演に参加された方でも、新たな情報を得ることができると思います。更新した内容を簡単に説明すると以下のようになります。
1%酢酸ウラン液を作製すると、溶けたUO22+が水を加水分解してプロトン(H+)を作るため、液のpHは酸性(3.5-4.0)となります。また、Reynolds鉛液のpHはNaOHを加えるため、その液のpHは12前後となります。このように電子染色液の調整後、中性の蒸留水に金属試薬を溶かしても、染色液は最終的に中性になることはありません。pHが変わると、酢酸ウラン液や硝酸鉛液の重金属は変転してはどんどんと変わっていきます。酸性の酢酸ウランやアルカリ性の鉛液では、もとの試薬からどのような変遷を経てどのような金属分子種になり、どの分子種が染色剤として働くのかを説明します。電顕従事者が電子染色を日々行っているわけですが、染色液でどの分子種が染色に関わっているのかを知らずに染色操作を行っています。現場では切片を上手く染色できなかった場合でも、何故上手くいかなかった理由を、電顕従事者が知っているとは思えません。このような失敗の経験が続くと、自分が研究の主導権を握っていないことを痛感し、悔しい思いをすることになります。ウランと鉛の染色分子種は細胞成分の電荷を持った官能基にイオン結合してコントラストを上げます。しかし、その組み合わせ以外に、鉛は細胞に先に結合した負に電荷した各種のオスミウム分子や正に電荷した二酸化ウラン(UO22+)に重なって結合することもあるようです。これら重金属に鉛が重複して結合しているというのは新しい視点です。電子染色を逆にして、鉛染色が先で、ポスト染色にウランを施しても、通常の染色よりもコントラストが上がらなかった理由もこれで説明がつきます。
ネガティブ染色の手法そのものは簡単ですが、試料サイズに合ったネガティブ染色液の濃度の選択、実験室の過剰な乾燥が原因で、美しいネガティブ像を得ることはできなかったことを皆様は経験されていることと思います。私自身はネガティブ染色を得意としていませんが、ネガティブ染色のプロである一ノ瀬昭豊氏(長崎大学)の助言とデータ提供により、そのコツをまとめてみました。そのコツは会員皆様に役立つ情報だと思います。
電顕解析能力の向上を目指すのが細胞構造研究会の目標です。そのためには、試料作製中に生じる各種の化学反応や電子染色の染色メカニズムを理解することが大事となります。細胞像を見てそれを評価する際に、細胞オルガネラの情報をたくさん持っていた方が有利になります。今回はミトコンドリアの構造と機能を説明します。このオルガネラの話は、私が神戸大学大学院で行っていた細胞生物学をもとにしたものです。ミトコンドリアの話は、ミトコンドリアならではの基本情報、動植物や微生物の電顕画像を多く取り入れたもので、ミトコンドリア病の記述も加えました。また、ミトコンドリアから派生した内容も含まれます。(文責 朴 杓允)。
朴先生の講演の間には、神戸大学の洲崎が「最適化された水凍結乾燥法によるSEM試料作製」について簡単にご紹介します。従来、淡水性プランクトンなどの柔らかい細胞は、化学固定や脱水過程で収縮・変形しやすいことが課題でしたが、本手法は化学固定を行わずに生きたまま急速に凍結・乾燥させることで、本来の形態を維持することに成功しました。具体的には、マイナス80度の銅ブロックを試料に密着させる簡便な手順により、微細な構造を高い解像度で再現し、準備時間もたった数時間に短縮できます。さらに、大型の多細胞生物に対しては、凍結と固定を組み合わせた二重凍結法を用いることで、組織の収縮を防ぐ工夫がなされています。この革新的な技術は、原生生物から動物組織に至るまで幅広い試料に適用可能であり、アーティファクトの少ない標準的な標本作成法として期待されています(文責、洲崎敏伸)。
会員の皆様の所属やメイルアドレスも変わり、他分野に転出した方もいるかと思います。その方々で、なお細胞構造研究会に参加を引き続き希望される方々はメイルアドレスの更新を行ってください。宛先は朴杓允です。また、この会は会員のみに案内を送っていますので、メイルアドレスを変更した方にはこの案内状は届きません。ご注意お願いいたします(文責 朴 杓允)。
追伸:マリン・ワーク・ジャパンの倉本さんから日本顕微鏡学会の実技講習会の案内状が届きました。以下にその内容を案内いたします(文責 朴杓允)。
1)主催:日本顕微鏡学会
2)場所:千葉大学・真菌医学研究センター
3)日時:2026年6月18日(木)~19日(金)
4)内容:微⽣物、培養細胞および動植物組織の急速凍結・凍結置換・超薄切⽚法
5)担当者:千葉⼤学・真菌医学研究センター グランドフェロー 山口正視
6)申し込み:https://microscopy.or.jp/kanto/jitsugi/
世話人
朴 杓允(ぼくしょういん):神戸大学名誉教授
植物の真菌感染症の感染機作・肉腫と結合組織の電顕解析
洲崎敏伸(すざきとしのぶ):神戸大学理学研究科元准教授
原生動物の電顕解析
安田剛志(やすだたけし):神戸大学農学研究科教授
ナシ不和合性の電顕解析