8年前に休校となった波木中学校が、ついに解体されることになった。
かつてその学校で教師をしていた野崎修吾は、同僚たちとともに最後の後片付けのため校舎を訪れる。
埃だらけの教室。記憶の中のまま残る職員室。
──そして、黒く塗りつぶされた出席簿。
そこには、決して忘れてはならなかった名前があった。
「綾野美咲──?」
心の奥底に封じ込めていた記憶が、音を立てて崩れ始める。思い出すことは、こんなにも、痛い。
思い出さないことは、こんなにも、残酷。
ひとりの少女の「存在を消した」教師たちの、罪と赦しを巡る物語。
──誰にも渡されなかった、その卒業証書を、いま、君に。