はじめに
平成25年度 認知症サポーターキャラバン報告会の中で、海外在住日本人会からの報告(キャラバンメイト養成研修―カナダ・トロントからの報告)をさせていただいたのが、平成26年3月7日でした。あれから、ほぼ10年が経過し、この度、認知症サポーターの活動事例の中で、特別賞をいただくという栄誉に恵まれました。ここでは、2013年10月21日にキャラバンメイト養成研修をトロント総領事館でさせていただいたあとの経過を簡潔にまとめ、それが、2023年にカナダ連邦政府の認知症戦略基金(DSF)・認知症に関する意識向上の取り組みにつながっていったことを述べます。そしてその取り組みの概要と到達点、さらには、今後の展望をまとめていきます。
DSFプロジェクト実施に至るまで
2014年9月21日:バンクーバー総領事館でのキャラバンメイト養成研修
担当講師はブリティシュ・コロンビア州の家庭医であり、日加ヘルスケア協会の理事長である田中朝絵先生とカナダ邦人医療支援ネットワーク(略してジャムズネットカナダ)の傳法が務めさせていただきました。6時間の養成研修を終えてキャラバンメイトとなった方が51名でした。その前年には、52名のキャラバンメイトが生まれていましたので、あわせて103名のキャラバンメイトが、カナダで誕生したわけです。その方々が研修後に認知症サポータートレーニングの講師役になるというのが、日本でのシステムですが、カナダにふさわしいトレーニングを日系社会で行っていくためにはなかなかに大変なことではありました。
2015年3月29日:トロント日系文化会館での認知症サポーター養成講座
8名のキャラバンメイトがリードした3時間の養成研修。認知症の知識と対応方法に関してモミジヘルスケア協会の岡田由佳さんが担当、グループワークもトロント風にアレンジして大変な盛り上がりを見せました。女性12名、男性4名がサポーターになられました。
2015年6月21日:モミジヘルスケア協会での土曜日の日本語学校生徒を対象にした認知症サポーター講座
8名のトロントのキャラバンメイトがリード。3時間の研修で男子生徒4名、女子生徒3名のサポーターが誕生。自分のおじいちゃんやおばあちゃんに認知症者がいる生徒もいて、自分のこととして考えることができる生徒たちでした。寸劇やロールプレイで盛り上がり、紙芝居では広島県尾道市の皆さんが作られた紙芝居を下敷きにして、日本語学校の最終学年の生徒がアニメーション風に変え、ラミネートしたものを作って、好評でした。
2016年12月~2017年2月:同じく土曜日の日本語学校での認知症サポーター養成講座
校長先生はじめ、3名のキャラバンメイトの先生方が、特別授業の一環として月一回ずつ、三か月で計3時間の養成研修を実施。現地校のグレード10にあたる高校生のうち、男子生徒3名、女子生徒2名のサポーターが誕生しました。テキストは中学生用テキストを使いましたが、英語版の標準教材のテキストも併せて使用し、むしろ英語版のほうがわかりやすかったようです。生徒の評判もよく、今後にむけた展望も見えていました。
2017年7月23日:カルガリー日系会館での認知症サポーター養成講座
ジャムズネットカナダの第四回総会をエアドリーで行ったのち、カルガリーの日系会館をお借りして、認知症ワークショップを持ちました。キャラバンメイトは2名。岡田由佳さんが日本語と英語を併用して3時間にわたる研修。女性16名、男性4名が受講、カルガリー日系コミュニティーでは初めての試みでしたが、大変好評でした。費用は全カナダ日系人協会(以下NAJC)のCommunity Development Fundから賄いました。
2020年10月4日:コロナ禍により対面でのワークショップができない中、NAJCのNational Executive Board(全国理事会)の理事を二年間務めた傳法は、メンバーシップ委員会を担当。4月29日にオンラインによる円卓会議をはじめ、10月4日にコロナ禍の中での認知症者に対する理解とケアをテーマに、岡田由佳さんを招いて、英語1時間、日本語1時間のオンラインによるワークショップを行いました。三回の円卓会議を通してカナダ各地からの現状の情報共有ができていったと考えています。円卓会議は主に日本語で行いました。これがNAJCの中に新移住者委員会につながっていきます。
以上のような流れから、2023年の認知症サポータープロジェクト(DSFプロジェクト)の原型ができていったと考えています。子どもからシニアに至る人々のためのワークショップの進め方が見えていきました。
バンクーバーでは、キャラバンメイトの養成研修の中心となった方が、夫の研究に帯同し海外に離れたこともあり、その後の認知症サポーターの養成講座は残念ながら行われませんでしたが、このことを教訓に次の点を重視して、2023年のDSFプロジェクトを進めていっています。
1 三名のスタッフを採用し、一名のフルタイムのスタッフをバンクーバーから採
用する。一名のパートタイムのスタッフをトロントから採用し、傳法と岡田由佳さ
んとの連絡を密にとる。もう一人のパートタイムのスタッフをモントリオールから
採用し、まだ、活動が起こっていないところに認知症サポーター研修とチームオレ
ンジづくりを始める。彼の地はバンクーバー、トロント、カルガリーに次ぎ
四番目に日系人口の多いところです(2021年時点で5940名)。
2 NAJCの新移住者委員会の委員と協力し、その委員が在住する地域を大切にする。
3 日系人や日本人のための高齢者住居やコミュニティーサービスを持たない地方都市
を重点的にキャラバンし、ワークショップを行う。
(ホワイトホース、ヴィクトリア、バーノン(インテリアBC)、ウィニペグ、
モントリオール、エドモントン、ハリファックス等々)
こうして、講師、担当理事、担当職員の三名でチームを組んで、秋から行った
認知症キャラバンの総移動距離は、講師の岡田由佳さんの場合、51,888 kmに上ります。
(文責:ジャムズネットカナダ理事会議長 傳法 清)