インドネシア時代
ジャカルタを拠点とする、日本語新聞社「じゃかるた新聞」の政治経済ジャーナリスト。日本の政府機関や商社を上回る情報力で決定的な仕事を連発
Takushi Yoshida(right) with people from Madura on January 8, 2014.
ハイライト
2014年のインドネシア総選挙では、政治情勢について日本筋の誰よりも正確かつ詳細で正確な情勢分析を続けた。これは同国について蓄えた莫大な知識と人脈によるものである。
国家予算の2割を占めた燃料補助金をめぐる汚職疑惑で国際的なスクープ。
インドネシア語で書かれた新聞、雑誌、書籍、行政文書、裁判文書を当たり、要人をインドネシア語で取材。
在インドネシア・日系ビジネス・コミュニティや日本政府は私の収集した情報や分析に依存していた。
国際会議の取材は英語で対応。高校時代からの政治経済をめぐる独学と一応の学歴によって、平均的な記者の知識を著しく上回る知識を持っている。
以下のFlikrのアルバムはインドネシアでの取材時に撮った写真だ。
じゃかるた新聞 編集記者 2010〜2015年
※注:リンク先消失 :じゃかるた新聞サイトの運営者によるサイト改修時に記事へのリンク先が消失してしまったようです。
私は2010年から2015年の約5年間、東南アジア最大経済のインドネシアの首都ジャカルタで政治経済を担当する記者を経験しました。朝から取材を行い、夕方から夜にかけて執筆し、夜に新聞編集ソフトで誌面をデザインする毎日でした。最終的に誌面編集をインドネシア人スタッフに移管するなど仕事を経験しました。現地社会に深く入り、新しい思考の極を東南アジアで獲得し、いまも持ち続けています。
私は多くの在留外国人が関わりをもたないインドネシア人社会に深く入っており、そのおかげで他の外国人の記者/リサーチャーに比べて政治経済情勢のインサイトが深かった(大統領選では情勢予測で常に他社/公的機関、研究機関をリードし続けた)。
国際会議、国際政治をカバー。APEC、ASEAN Summit等の国際会議やジャカルタの大統領宮殿で首脳会議を取材、記事執筆。
都市問題、輸送システム、行政、貧困問題など多様なテーマに取り組みました。新聞記者は「問題」をあぶりだすのが好きですが、私は常に「問題解決」を念頭に原稿を書きました。会社にいた日本の新聞社出身の人には否定的な人もいましたが、ちゃんと自分で考えることで「化石」にならなくて済んだと思っています。
政治経済
政治担当記者だが、経済分野も深く関与。マクロ経済、金融は得意だった。
2013/1 日イ首脳会談「戦略的利益を共有 アジア重視の安倍首相 ユドヨノ大統領と会談(2013年01月19日)」
2013.5[民主化15年特集]「揺れる民主化」企画・編集。98年以降の民主化以降も混乱が続く政治情勢の中で、安定していた開発独裁時代を回顧する傾向に調査(第1回「スハルト懐かしむ」)。平均年齢27歳(当時)の若い人口動態により民主化時代しか知らない世代が台頭していることを追った(第2回「若者社会 スハルト知らない新世代」)。植民地時代から連綿と続く汚職カルチャーと汚職により高まる民主主義のコストに焦点を合わせた(第2部第1回「汚職 せめぎ合う腐敗と撲滅」)
ASEAN / APEC取材
2013/10 APEC/ASEAN首脳会合取材。TPPをめぐる各国との折衝、国内調整に関して日本政府・APECを取材(「「大筋合意」正念場 分野、関税撤廃で難航 TPP閣僚会合終える 甘利TPP相「年内妥結共有」)。南シナ海問題では中国の突出を米国、日本、インドなどを問題に引き込むことで勢力均衡策をとるASEANの状況を取材(「主役」中国が矢面に 南シナ海問題で 投資・貿易で補填狙う ASEAN関連首脳会議開幕」 (2013年10月10日))
2014年インドネシア大統領選
ジョコ・ウィドド、プラボウォ・スビアントの両陣営に選挙戦当初から取材を続けた。初代大統領スカルノや知識層の流れを組む民主派と、第2代大統領スハルトの流れを含む開発独裁派の対決構造を早い段階からキャッチ。開発独裁派の石油輸入に絡む汚職疑惑をめぐるスクープを執筆した。この件を詳報した初めての外国人ジャーナリストととなった(英語で書いておけばよかった!)
インドネシアの選挙制度を概説。【よく分かるインドネシア選挙特集】 改革と懐古の分かれ道(2014年01月06日)
テレビ局保有者が政党党首を兼ねる特殊な政治状況。政党のブランディングに過剰利用されるテレビ(政党CM規制知らず 「テレビ局持ち」に有利 選挙資金肥大、汚職の温床も (2014年01月27日))
政党助成金に異論噴出 NGO「総選挙前の駆け込み補充」 立会人費用?説明責任は?(2014年02月01日)
金権選挙しない、12党誓う 激動の3週間に突入(2014年03月17日)
1村10億ルピアバラマキ 村落法を選挙利用 7万2944村 各政党(2014年03月27日)
ジョコウィ口撃にかじ 「メガの操り人形」「約束破り」 プラボウォ氏 (2014年04月03日)
人気のジョコウィ候補を支持するが、母体の闘争民主党は支持しない「ジョコウィ・イエス、闘争民主党・ノー」というネガティブキャンペーンをいち早く察知。後に奏功したことがわかった(2014年5月)
4月の議会選は多党分立傾向。
大統領選に絡む宗教問題
インドネシアはムスリム多数派国家だが、イスラムのあり方は多様だ。大統領選挙ではムスリムの各勢力とプロテスタント、カトリックなどの宗教に関して激しい中傷合戦が行われた。特に重要だったのがジョコ・ウィドド氏の出自を華人とし、キリスト教徒と虚偽の情報流すタブロイド「オボールラクヤット」だった(2016年米大統領戦の偽ニュースに似ています)。
最大民族ジャワ人のイスラム教総本山がある東ジャワ州でプサントレン(イスラム寄宿舎)を訪問、宿泊して取材した。同選挙でプサントレンに対して浴びせられた宗教差別キャンペーンの裏側を報じた(「東ジャワ州大統領選挙情勢(上)キアイの支持争奪戦 票田揺さぶる中傷タブロイド」(2014年07月01日))
ひとつの地域をミニチュアのようにして調査するだけで、2億5000万人の国の多様性を解明した。「東ジャワ州大統領選挙情勢(下)個人の自立か、キアイの権威か からまるメディア、多様化する投票、土着の論理」(2014年07月01日)
投票と憲法裁判所の審査
「大統領選振り返る 担当記者報告」(2014年07月14日)。「スハルト時代は故スハルト大統領の取り巻きが利権を分け合った。スハルト一族の不正蓄財は国連機関推計150億~350億ドル。それが1998年以降の民主化時代では、選挙の勝者に利権が「開かれた」。
メディア執筆
2014.11.4『週刊エコノミスト』「インドネシアは目覚めるか 新大統領が抱える5つの課題」
「石油マフィア」スクープ
2014.9 国家予算に莫大な負担を負わせた、低質石油の価格をシンガポールの取引所で嵩上げして国営企業に買い取らせ、最終的に補助金で嵩上げ分を補填する汚職スキームの全容を明らかにした。この汚職スキームに関する報道は海外メディアでは初めて。現地日系社会にも大きな影響を与えた。大統領選挙の背景にある利権争いのなかでも中核的なもので、ジョコウィ政権成立後これらはおおむね排除された(2017/1/7時点)。
ガソリン補助金
ジョコ・ウィドド大統領の伝記
ジョコウィ大統領の生涯を振り返るシリーズ。ジョコウィ氏の地元中部ジャワ州ソロ市で関係者100人超を取材し、過去の新聞や文書を当たり、その後のジャカルタ特別州知事時代には施策の現場を追い、統計や行政文書を徹底取材した。50万都市の市長、1000万都市の州知事を経て大統領になるまでの軌跡を再現した。
【ジョコウィ物語】(12)政治へのいざない 市長選、実業界が推す(http://www.jakartashimbun.com/free/detail/20997.html)
【ジョコウィ物語】(13) 風雲児、市庁舎に来る 接戦しのぎ当選(http://www.jakartashimbun.com/free/detail/21112.html)
【ジョコウィ物語】(14)不明朗さと断固闘う 行政改革に着手
(http://www.jakartashimbun.com/free/detail/21239.html)
【ジョコウィ物語】(15) 露天商移転に切り込む 解決策は「ゾーニング」
(http://www.jakartashimbun.com/free/detail/21392.html)
【ジョコウィ物語】(16)移転の壁を越えた 露店商の利を増やす(http://www.jakartashimbun.com/free/detail/21524.html)
【ジョコウィ物語】(17) 追風受け街づくり 9割得票し再選(http://www.jakartashimbun.com/free/detail/21652.html)
【ジョコウィ物語】(18)ソロが生んだ国民車 中央への新たな「名刺」
(http://www.jakartashimbun.com/free/detail/21800.html)
【ジョコウィ物語】(19) 当選、政治にうねり 個人が政党連合倒す
(http://www.jakartashimbun.com/free/detail/21938.html)
【ジョコウィ物語】(20)千万首都に悪戦苦闘 支持がうなぎ登り
(http://www.jakartashimbun.com/free/detail/22074.html)
【ジョコウィ物語】(21) いばらの道抜ける 大統領選、僅差で制す
(http://www.jakartashimbun.com/free/detail/22220.html)
都市問題
グレーゾーン居住状態の集落での火災を取材したことをきっかけに、貧困、人口流入、洪水、インフラなどの都市問題を調査し、解決策を探った。こちらのリンク→SlideShare「ジャカルタフォーカス」から紙面で見られます。
貧困問題
ジャカルタの深刻な大気汚染。後に石油輸入汚職で、低品質石油を輸入していることが要因のひとつとわかる。【ジャカルタ・フォーカス】胸が苦しい、排気ガスの街 深刻度増す大気汚染(2014年05月31日)
「闇市」タナアバンとプレマン(マフィア)
インドネシアでは政治にも公然とプレマン(ヤクザ)が関与している。ヤクザは強烈な集票マシーンであり、さらに各種のビジネスで強い影響力をもっている。そのためプレマン方面の取材を強くしていた。高校の先輩である佐藤優氏がロシア情勢を知るためにマフィアへも情報網を広げていたことに影響された(佐藤氏の著書に詳しい)。
「闇市」撤去の始まり。【ジャカルタ)・フォーカス】「公と路上のルールぶつかる タナアバンの露店撤去」(2013年07月26日)
露天商と「ショバ代」で潤うプレマン(ヤクザ)、汚職)で潤う州政府のトライアングルの崩壊を取材「【変わるタナアバン】(上)「元露天商、路上への郷愁も」 (2013年09月05日)。並行して進む大型再開発プロジェクト、利権事情を調査「 【変わるタナアバン】(中)「再開発、目覚める」(2013年09月06日)」
インドネシア)の「上野の闇市」であるタナアバンを調査。地元ヤクザ(プレマン)のボスのバン・ウチュ氏に独占インタビュー(【変わるタナアバン】(下)「山羊売りから王様へ バン・ウチュ」2013年09月07日)
このバン・ウチュのシマである線路上赤線の撤去を取材。公権力が非公式権力に勝った「近代的瞬間」だった。【ジャカルタ・フォーカス】「線路横売春の終わり 中央ジャカルタ・タナアバン」(2014年08月09日)
地元マフィアが管理し、警察・国軍・政治家などの資金源になっていると言われるプロスティテューションの状況を取材。かなり危なかった。経済学では大麻などを合法化し、課税、管理した方が利用を抑制し、マフィアへの資金還流を防げると主張されている。売春に関してもグレーから合法化して管理した方が抑制できると主張した(かなり反発を受けたが、合理的に考えるとそうなる)。【ジャカルタFOCUS】劣悪な売春現場働く女たちの声なき声 「捨てられた街」で生きる 合法化政策も必要か (2014年08月11日)
違法賭博の闘鶏場を潜入取材。
洪水集落・移転
毎年水位7メートルの洪水に見舞われる「洪水集落」カンプンプロ(Kampung Pulo) の移転問題を追った。住民のインタビューを基に、地方からの急激な人口流入が堤防内に住居を造らざるを得ない低所得者層の集落を生んだことを明らかにした(「洪水村」カンプンプロ」2013年12月02日)。
通常なら集合住宅(団地)に移転することに賛成しそうな住民は、政府への不信感や既得権意識から抵抗を感じていることを明らかにした(「洪水村の移転(上)」2013年03月28日、「洪水村の移転(下)」2013年03月30日)。
洪水後の復興状況を現場に張り付いてルポ(「壊れた家、後始末に出費大 洪水村カンプンプロルポ」(2014年02月06日))
流入者による都市人口爆発)。集合住宅(団地)整備プロジェクト。北部のプルイットの団地では、低所得者層が初めてガスを利用したり、銀行口座をもてたりする政策を取材。団地の住居を改造して店舗にしたり、共有部分に洗濯を干したりと柔軟な利用方法を取材(「暮らしは住まいから変わる。カンプン化する団地」(2014年11月10日)