予備試験
公式Data分析
法務省発表データのうち直近5年間(R4-H30)を分析
法務省発表データのうち直近5年間(R4-H30)を分析
法務省では予備試験の合格発表の際に<参考情報>として予備試験の実態に関する情報を公開しています。本稿では、そのデータを整理し主に直近5年間(令和4年-平成30年)のデータを集計整理しました。単年度だけの掲載はWeb上よくみかけますが、単年度だけをみても全体としての傾向はわからないと考え、今回は直近5年間のデータ分析をしました。受験生の皆さんの参考となれば幸いです。データの出所は末尾をご覧ください。
❶予備試験【出願者数】直近5年間平均の【年齢構成】
❶予備試験【出願者】直近5年間平均の【年齢構成】 出願者の年齢構成をみると、20代が4割以上を占めています。 特に24歳までの層が3割を占めていることは、予備試験が法科大学院Routeの補完であった筈の制度の建前がもはや崩れていることを示しています。
しかし。30歳台+40歳台で37%の受験生がいることは、制度本来の理念である社会人層が果敢に挑戦している姿を垣間見ることができます。
➋予備試験【合格者数】直近5年間平均の【年代別占有率】
➋予備試験【合格者】直近5年間平均の【年代別占有率】 上記❶のデータは、あくまで<出願者>ですが、これを<合格者>でみてみると様相ががらりと変わります。合格者の圧倒的多数が、20-24歳であることに驚かされます。ナント合格者の64%!ここにも、予備試験の本来の制度の建前がもはや崩れ、若手の圧倒的優位という現象が起こっています。
なぜこのような現象が生じているのでしょうか。その分析が絶対に必要です。それは、可処分時間の差でしょうか?方法の問題でしょうか?あるいは記憶力の差でしょうか?これを突き詰めることで、年齢に関わりなく予備試験自体が要求している資質を探り当てることができます。
❸予備試験【受験者数&合格率】直近5年間平均【年代別】
❸予備試験【受験者数&合格率】直近5年間平均【年代別】 20-24歳の<合格率>が突出して高いことが分かります。 全体平均値の倍の合格率です。これは何を意味しているのでしょうか。
➀問題内容が若手に有利に作成されている?そのようなことは公正を旨とする制度理念上あり得ませんし、技術的にも難しいでしょう。 ②採点上若手が有利に扱われる?それもあり得ません。短答式試験はコンピューター処理ですし、論文試験でも採点者には答案作成者が誰であるかは全く分からないシステムになっています。 では、なぜこのような極端な結果が生まれているのでしょうか?
予備試験に挑戦する受験生は、ここを真剣に考える必要があります。
※この点についての分析は別稿に譲りたいと思います。
出願者における占有率が上記のとおり有職者=39.7%、大学生=26.2%、大学院生=9.6%であったのが、なんと大学生の合格者数占有率が一挙に48.5%となります、つまり、予備試験合格者の半数が大学生ということになります。これは予備試験制度の本来の趣旨からいえば、明らかに異常値といっていいでしょう。
さらに、法科大学院在学生の合格者占有率が、実に約25%であることには驚かされます。専門に法律を実務的に学習しているわけですから当然と言えば当然なのかもしれませんが・・・
しかし、受験生にとって喫緊の課題は、制度論ではなく、特に<なぜ現役大学生等が短期で合格できるのか>というその理由をしっかり分析することでしょう。彼らは別段天才集団ではありません。有職者よりは時間的余裕があることは確かですが、かといって、単位の取得、就職活動、部活などを考えれば彼らも忙しいはずです。ではなぜ?
この点については、別の冊子の「辰已・予備データBOOK2023」で若干の分析を試みていますので、ご興味のある方は別途下記からご請求下さい。
対短答受験者の最終合格率の直近5年間の平均値は4.1%です。やはり相当の難関試験であることは間違いありません。対するに、司法試験をみてみましょう。法科大学院出身者の2022年司法試験合格率(対受験者)は37.7%です。同年の予備試験出身者の司法試験合格率は97.5%でした。4%の難関を突破したことの威力は凄まじいものがありますね。
短答試験と論文試験では最終学歴別のデータが大きく異なっています。
短答合格率(短答合格者÷短答受験者)では、法科大学院卒業生の35.0%が若干高いですが、学歴別にはさほどの差はありません。ところが、論文合格率(論文合格者÷短答受験者)では、在学生と大学卒業生とでは、実に5.0%もの差が出ています。これは極めて有意的な数字です。
さらに、短答「合格者」を基準として論文合格率をみると、大学卒業生が7.0%、大学在学中が32.6%と両者には25.6%の差が出ています。これは、大学在学生が論文に強いことを示しています。因みに法科大学院在学生にいたっては短答合格後の論文合格率が42.8%という高い水準を示しています。
●データの出所 検索の流れは以下のようにして下さい。
法務省Webサイト → 司法試験予備試験 → 司法試験予備試験の結果について → 〇年 → 〇年司法試験予備試験口述試験(最終)結果 → 参考情報
R4年 https://www.moj.go.jp/content/001384104.pdf
R3年 https://www.moj.go.jp/content/001358476.pdf
R2年 https://www.moj.go.jp/content/001340833.pdf