研究概要
北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター 特任助教の細木です。地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)に任用されています。
我々の研究の根底にあるのは、「多様な生命がいかにして生じ、維持され、そして消失していくのか」という問いです。これは、生命の成り立ちと意味を知る原理追究であると同時に、社会の基盤である自然環境がどのように形作られ、何によって崩壊するのかを理解するための極めて重要な課題でもあります。
まず、学術的な背景に裏打ちされた「問い」を起点とします。その問いの魅力を皆で共有し、実際の野外で実在する生命現象を誠実に観察・記載することを何よりも重んじています。もし仮説や予想と異なる結果が得られたとしても、失敗と考えずに追究します。既存の理論や仮説で説明できない現象の中にこそ、新たな法則性を見出すヒントが隠されていると考えるためです。何か法則性や仮説が見出された際は、野外実験や行動実験など、シンプルな系に落とし込んで追検証することで因果を探ることを好みとしています。フィールドワークや集団遺伝解析は、一見すると進化学・生態学の華やかな「花形」の研究スタイルに映るかもしれません。しかし、既往研究の整理、変わりやすい天候との根比べ、しんどい土木建築作業、そして計算の積み重ねという、非常に地道な作業です。現在幸運なことに、問いの面白さ、現象の興味深さを共有できる方々、具体的には北大苫小牧研究林のスタッフ、共同研究者の皆様とこの様なコツコツ仕事を進めることができています。以下の二点に分けて課題を進行しています。
1. 種内多型や種間差・種の記載
多様性の創出機構を知る第一の段階は、自然環境における生命現象の記載から始まります。野外観測から、種内・種間の多様性を記載し、その基盤を整備しています。主にトゲウオ科魚類を材料としていますが、地域特有の価値をもつ種であったり、産業重要種、最終的な研究の目的である種分化研究に使えそうな材料であれば、積極的にとりくんできています。
2. 種分化機構の解明
多様な生命は繰り返す種分化によって生じていることから、その機構を解くことは重要な課題と考えているためです。とりわけ、種分化の後期において、いくつの、どれほどの強さの、どのような生殖隔離が存在すれば種は不可逆的なものとして完成するか、その遺伝基盤とは何か、に興味をおいています。我々はトゲウオ科魚類に着目し、長期観測と実験進化によって解明を試みています。
朝日新聞様に研究内容(Hosoki et al 2019)を紹介して頂きました(>リアルタイムで生物の進化観察 津波被災地は貴重な現場)。
ヨコエビ新種記載についての共同研究 (Kodama et al 2023) を紹介して頂きました(>朝日新聞社様 鹿児島湾海底で新種のヨコエビ 「未発見の小型生物もまだたくさん」)。
ヤマカガシの種内多型(Hosoki et al 2025)を紹介して頂きました(>朝日新聞社様, 東洋経済オンライン様)。
兼任教育業務
国立医療センター付属校/神奈川工科大学で教員を兼任しています (> Lecture)。
研究対象(中心課題である岩手県大槌町のトゲウオ)
津波後に出現した湿地原
津波により、大槌の町方地区の家屋が流され、湧水の自噴と汽水の流入によって湿地化してしまいました。津波後、新たなトゲウオ生息地が多数出現しました。
新規生息地のトゲウオ
新たな生息地では、淡水イトヨとニホンイトヨ(海型種)の雑種が見られており、津波後2-3年の状態では、まだ雑種集団化しています。種は崩壊してしまったのでしょうか?
津波跡地での野外実験
我々は長期観測により津波後に生じた交雑の進化的帰結を解き明かしています。またその帰結に至るための生殖隔離機構とその遺伝基盤を探るために、実験を進めています
研究体制
陸海圏を中心とした長期観測・実験観測を主軸に置いています。下記の保有資格により、陸海様々な機材運用が可能な体制をとっております。
重機オペレーション(苫小牧研究林, 有資格)
実験用水の採水(苫小牧港, 許可済)
海洋域における観測装置設置(協力: AORI, 海上保安庁)
実験機材設置のための業務潜水(協力:大槌町, 岩手県)
野外実験(北海道大学苫小牧研究林)
中型自動車運転免許(29人以下のバス/総重量11 t/積載量6.5 t未満のトラックなど)
大型特殊免許(ホイールローダー、トラクター、除雪車など)
車両系建設機械 技能講習修了者(バックホー、ブルドーザーなどで機体重量に上限なし)
労働安全衛生法に基づく潜水士免許
NAUI オープン・ウォーター・ダイバー
トラップ/エレクトロフィッシャー等の採捕器具
長期観測・実験観測などによって得られた検体は、解剖や計測、動画、画像解析を元に表現型の情報を取得します。必要に応じて、サンガーシークエンスから次世代シークエンスを使用して遺伝配列を取得、集団遺伝解析を実施可能な体制をとっております。また液体窒素による凍結精子保存技術によって国内様々な集団のトゲウオの凍結精子がストックされており、人工授精による掛け合わせにより、量的形質遺伝解析から人工進化実験まで様々な用途に利用するための家系作出が可能です。
実体顕微鏡ほか一般解剖器具
高速遠心機, サーマルサイクラー等の分子実験器具
液化窒素容器(凍結精子保管)ほか人工授精機材
細木実験室利用中の福山研究員ほか
ビールサーバー(3タップ1タップになりました...)と国内58ブリュワリー&海外3ブリュワリーから樽を購入できます(2025/4現在)があります。細木の私費、私的活動です。
北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター 特任助教
takuya.hosoki[at]gmail.com / hosoki[at]fsc.hokudai.ac.jp
〒 053-0035
北海道苫小牧市高丘
北海道大学 苫小牧研究林
0144-33-2171
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