交通渋滞や金融バブルなど,多くの人々が同じ行動を集中的に選ぶことで生じる社会現象は深刻な社会問題のひとつです.こうした社会現象ではその複雑さから,問題の根本原因を特定したり,問題を解決・回避する政策を立案することが難しいとされます.この現状に対し,計算機上で社会シミュレーションを行い,仮想的にさまざまな条件を試し,その帰結を比較する方法が使われてきました.近年では,要素数などのスケール(規模)に対する社会システムの頑健性が問われています.大スケールの社会シミュレーションには ① 各試行の実行時間の増大,② パラメータ条件の組み合わせ数の増大 という大きな2つの問題があります.
本プロジェクトチームでは,① 金融市場シミュレーションの並列分散実行ソフトウェア Plham(ぷらむ)他多数,② シミュレーション実行管理ソフトウェア OACIS(おあしす)を開発しています.Plham は和泉研(東京大学)& 鎌田研(神戸大学)[鳥居・鎌田・和泉],OACIS は理研計算科学研究機構 離散事象シミュレーション研究チーム[村瀬・内種・伊藤]の開発です.Plham と OACIS の連携により,大規模シミュレーションを効率的に実行し,膨大なパラメータ空間を効率的に探索し,社会制度設計の指針となる知見を迅速に引き出す手助けを行います.
Plham(ぷらむ)関連リンク
ドキュメンテーション ... プログラミングガイド,使用例(先行研究の9件の追試)など
Plham+OACIS 講習会は以下の日程で開催されました.
第2回 2016 年 9 月 24 日(土)
東大本郷 工学部 8 号館 530 室 13:00〜16:00 [資料]
第1回 2016 年 8 月 6 日(土)
東大本郷 工学部 8 号館 530 室 10:00〜14:00 [資料]
Plham のロゴマーク(下図)は家紋「梅鉢」をベースにしました.「梅鉢」 は,東京大学本郷キャンパスが加賀藩前田家の屋敷跡地に建てられたという史実に由来させています.梅鉢の家紋は東大赤門の屋根瓦や湯島神社に今でも残っています.並列分散計算では複数の計算ノード上で複数の計算プロセスが相互通信し連携しあうのですが,このロゴでは,5つの梅の花びら(赤丸)を計算ノードにみたて,梅のめしべ(黄丸)を相互通信しあう計算プロセスにみたてました.