魚類生態学研究室では、魚類の社会のしくみを個体間の社会的な関係から捉え、その進化的側面に関する研究を行っています。また、水域における生態系の構造や、生物多様性に関する研究も進めています。
主に魚類を対象として、野外調査や水槽実験によって種内の個体間の関係を観察し、適応という観点から動物の社会における個体の行動の進化的な意味を明らかにしています。特に、オスとメス間の繁殖をめぐる協力と対立関係や,共同繁殖を中心に研究を進めています。
水域生態系における水生動物の分布や種多様性を決める要因の解明
河川や湖、水田と行った水域生態系において野外調査を行い、種ごとの個体数(密度)を観察や採集によって調べ、加えて、その場所のさまざまな環境要因(局所環境要因)を記録します。また、GIS(地理情報システム)のデータを用いて、各調査地周辺の環境要因(景観環境要因)も抽出します。これらのデータを統計的に解析し、種ごとの分布を決定する環境要因の特定と、各要因が分布に与える効果を明らかにします。同様の方法は、ある地域に生息する水生動物の種多様性が、どのような環境要因の組合せで決まっているのかを解明することにも適用できます。
動物集団間の遺伝的交流に影響を与える環境要因の解明
野外調査・採集によるサンプルの遺伝子解析から、動物集団の遺伝的な構造(遺伝子の類似性)を解析し、集団館の遺伝的な違いをもたらすような環境要因として、遺伝的な交流を阻害あるいは促進する要因を特定する。これにより、例えば農地のような土地利用の方法が、動物集団の遺伝的な分断や接続性に与える影響を明らかにすることができる。現在は、水田に生息するトンボ類を対象として、集団間の遺伝的構造の違いと、生息環境との関係について研究を進めています。