原子1個分ほどの厚みしかない2次元量子材料は、今世紀に入って発見された新たな物質群です。その筆頭である「グラフェン」は、高い比表面積、高移動度、プロトン透過性や量子容量といった様々な特異な性質を持っています。
これを、同じく特異な性質を持ち、私達の体を構成するナノマテリアルでもあるタンパク質、核酸、糖鎖といった「生体分子」と組み合わせて、医療診断や創薬、環境衛生などの分野に応用可能な新たな機能の実現を目指します。
こうした応用展開には、グラフェンと生体分子が出会うナノ・マイクロスケールの固液界面における流体の振る舞いなどに対する基礎的な理解が必須であり、そうした研究も精力的に進めています。
これらの研究を通じて、社会を発展させるユニークな計測手法を追求するとともに、新たな計測手法が提示する新概念の創出をも狙っています。
川野研究室では、実験の一連の流れである材料合成からデバイス開発、測定システム構築までを、外部の装置に頼ることなく一貫して行うことができます。実験装置は非常に充実しており、特にグラフェン測定装置は2025年度から1人1台提供する予定です。
また、上記の研究では材料工学、流体科学、電気化学、分子生物学、薬学、医学など複数の学術分野の知見を駆使します。そこで国内外の専門家と連携し、異分野融合型の研究を進めています。学生の方が川野研に配属された時、これらの分野が未経験でも全く問題ありません。修了時には、自分だけのユニークな強みを持つ人材に成長できるはずです。
私達の研究に興味のある学生・社会人の方は、進学・共同研究等について、いつでもお気軽にご連絡ください。見学も歓迎です。
現在の研究カテゴリをいくつか示します。各カテゴリは、個別の研究テーマを複数含み、また相互に繋がっています。
次のパンデミックを阻止するため、迅速かつ高感度な病原体の検出技術を追求しています。グラフェンは、表面に物質が吸着すると極めて鋭敏に電気的応答を示すことから、病原体の超高感度検出のためのセンサー材料に最適です。
現在、細菌1粒子レベルの超高感度検出を達成しています。特許も取得しながら、社会実装可能な形へと洗練させていきます。
タンパク質でできた触媒である酵素の生化学反応は、様々な分野の科学と産業で利用されています。グラフェンを用いれば、界面近傍での微小な酵素反応をリアルタイムに計測可能です。この新たな生化学反応計測手法の研究開発と応用を進めています。
酵素反応を計測するだけでなく、反応を阻害する薬剤の効果を評価することも可能になってきました。これは創薬のための新たな基盤技術となる可能性を秘めています。
新機能の実装には、それにふさわしいデバイス構造、計測機器が必要です。多項目診断に向けて、半導体微細加工技術を応用してセンサーを集積化しました。集積したセンサーを同時並列に計測する、手のひらサイズの計測システムも開発・運用しています。
新しいデバイス材料や加工技術の開拓、計測の自動化にも取り組んでいます。こうした技術開発はまた、思いもよらない新機能に繋がる導火線や突破口ともなるのです。
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