研究室所属学生が行った学会発表の記録です(学生が筆頭著者のもののみ).主に,HAIシンポジウム,認知科学会などで学会発表を行っています.
人間と人工物との関係に纏わる幅広いトピックが,研究テーマとして選択されています.
気分とは,
気分とは, ある状況におけるその時の心の状態のことを指す. 本調査では, 気分が喚起される際にその個人の性格のどの要素がどのくらい関与しているのか検討を行うことを目的として,ネガティブな気分状態を測定するPOMS2のTMD得点, SUBIを用いた心の健康度と疲労度とTIPI-Jで算出された性格特性との関連について調査した. その結果,TIP-Jの個々の要素が気分を決定しているのではなく, 性格を構成する要素の組み合わせが気分を決定していると考えられた. そこで本研究ではTIPI-Jによって5次元で表現された性格のパターンをクラスタリングし, そのクラスタリングを元に気分との関連を分析した. その結果,クラスタリングしたグループにおいても,気分状態との関連が明確に観察されなかったため,気分状態というものは人によってまた状況によって細かく変化していることが明らかとなった.
本研究では,SNSユーザがSNS利用中に不快に感じる状況についての調査を行った。その結果, XやInstagramの利用頻度が高いユーザは自分の好きなものについてのネガティブなコメントに不快感を覚えることが明らかとなった一方,SNSでの投稿が少ないユーザは根拠のない偏見による投稿に対して不快感を抱くことが明らかとなった。そして多くのユーザが,ある対象を一方的に見下すような表現を含む投稿に不快感を抱いたことがあることが明らかになった。
コンピュータの処理時間におけるユーザの心理的負担を軽減するために、待機画面に表示するUI要素を変化させることで体感時間を操作する研究が行われている。しかし、先行研究の実験ではUI要素が実際に使用される環境における実験は行われていなかった。そこで本研究では、UI要素がページ遷移の間に表示されるウェブサイトを再現し、ユーザの体感時間への影響を調査した。その結果、UI要素を表示させる環境が異なると、体感時間も異なるということを明らかにした。
気分とは、ある状況におけるその時の心の状態のことを指す。本調査では、気分が喚起される際に個人の性格がどのくらい関与しているのか検討を行うことを目的とした。POMS2、SUBIを用いて算出された気分状態とTIPI-Jで算出された性格特性の関係を調査し、性格で気分が決定されないことが明らかとなった。原因として、性格を構成する個々の要素が気分を決定するのではなく、性格を構成する要素の組み合わせが気分を決定しているからだと考えられた。
雑談を目的としたテキスト対話エージェントの返信間隔とそのエージェントへの印象を調査した先行研究では,1時間という比較的長い返信間隔のエージェントがユーザから高く評価されることが明らかとなっている.しかし,その先行研究で使用されたエージェントは参加者の発話内容に関係なく,あらかじめ決められた内容の返信をするものであった.そこで本研究では,LLMを利用し参加者の発話内容を踏まえた自然な返信を生成するエージェントを作成し,先行研究同様に返信間隔とそのエージェントへの印象を調査することを目的とした.
人間から見て非有益な目的で嘘をつくロボットに対して,「ロボットの嘘は,嘘として判断される」「嘘をつくロボットは,嘘をつく人間と同じ程度に非難される」ことを,Kneerは米国内での調査から明らかにした.そこで本研究では,日本においても同様の結果が得られるかの追試を実施し,Kneerの結果とほぼ同様の結果を得ることができた.
We explored extracting users' true latent and implicit perceptions of robots by means of "Paul A. Weiss' Thought Experiment," which considers the relationship between the elements, organization, and function of an object. We focused on three target objects appearing in a story: "computer," "human being," and "robot." Participants were asked to answer the question "What was 'lost' as a result of the target object being homogenized/pulverized?" The results of a correspondence analysis on the answers for the three objects clarified the participants' ambiguous and contradictory perceptions of robots, that is, "robots are neither humans nor computers" but "robots are somehow similar to humans and computers.
ある人と出会ったとき,その人の外見は印象形成において重要な役割を果たしている. 見た目は人間関係に大きな影響を与え,見た目に気をつかうことは対外的なものだけでなく内面的にも良い影響を与えると考えられる. 本研究では「人に会うことを想定した格好をする」という状態に着目し,そのような格好をしている場合とそうでない場合とでその人の主観的な内面評価にどのような変化があるのか比較実験した.その結果,そのような恰好をしている場合,そうでない場合と比較してネガティブな気分が緩和されることが明らかとなった.
Social touch is helpful for improving social connection, and it is one potential method to improve online communication with people at a distance. Although prior work examined if social touch from robot is effective for communicating sympathy compared to text and GIFs, the results indicated that touch from a robotic arm was not effective as a means of conveying sympathy. Therefore, in order to examine how to make social touch from robots more effective, we conducted an experiment using Qoobo a more lifelike robot. Results (50 dyads) indicate that the touching method we used was not effective for conveying sympathy. Interviews with participants suggested the ways to improve robot; that is, making the robot look like an animal, such as Qoobo, with adding warmth would be effective.
The purpose of this study is to investigate the motives of SNS users to engage in flaming by analyzing collected tweets. We hypothesized that SNS users make a downward comparison with flaming targets to show off their superiority, and we defined tweets that verbally despise a target as "despise tweets." We investigated the proportion of despise tweets in 10 flaming and 4 non-flaming cases. As a result, we found that the proportion increased in all flaming cases. The correlation coefficients between the number of tweets and the proportion were positive for all flaming cases, which strongly supported our hypothesis. The results also suggest that it is possible to classify the patterns of flaming by examining the time when the maximum value of the proportion of despise tweets is reached. Specifically, we found that the proportion reached its maximum value earlier than the peak number of tweets in one-sided flaming cases, while it reached its peak later in cases where both sides of a controversial issue were present. Thus, it is possible to visualize the structure and background of flaming by tracking the relationship between the number of despise tweets and the number of tweets over time.
現在,スマートフォンは世の中に幅広く普及し,人々の生活の中に溶け込んでいる.しかし,スマートフォンの画面の小ささゆえに,ユーザの選択する対象が小さくなったり,タブ間の境界線の有無によって操作対象の範囲が曖昧になったりすることで,結果として操作ミスが起きてしまうと考えられる.そこで本研究では,ユーザの操作対象として「タブ」に着目し,タブの画面上の位置,配置,境界線の有無および大きさがユーザの操作に与える影響を調査した.
Onomatopoeias - echoic, imitative, or mimetic words - are good for describing intuitive, sensitive, and ambiguous feelings that are difficult to ex-press literally. They are often used in Japanese comics as an effective means of expression. In this study, we hypothesize that there are expressive techniques in comics such as “purposely not using onomatopoeia” and discuss the meanings and effects of frames without onomatopoeias. As a result, we confirm that frames without onomatopoeias frequently appear in significant scenes even though onomatopoeias are generally highly expressive in comics.
年々コンピュータの処理速度が向上しているものの、ユーザはコンピュータの処理を待つという状況からは逃れられない。そこで、待ち状態にあるユーザの負担を軽減する様々な方法が提案されているが、本研究では短い周期のアニメーションが繰り返し提示される「スロバー」に着目し、その構成要素とユーザの主観的待ち時間との関係を分析することを目的とした。具体的には、スロバーの「回転速度」「大きさ」という二つの要因が、ユーザの待ち時間に与える影響について調査を行った。その結果、スロバーの提示時間が5秒の場合,回転速度が遅く、表示サイズが大きいと、その待ち時間が有意に短く感じられることが明らかとなったが、提示時間が長くなるにつれてその効果が薄れることが明らかとなった。
本研究では相手のことを思った悪意のない優しい嘘をロボットがついたときのユーザのロボットに対する印象を調査した.具体的には,ある行為の主体者が,相手に言いにくいことを伝えるような状況を再現したシナリオを設定し,行為主体が「人間」と「ロボット」,伝達内容が「本当」と「嘘の」を組み合わせた4パターンにおいて,行為主体がどのように評価されるのかを把握する実験を行った.その結果,行為主体に依らず,嘘をつくよりも正直に情報を伝達する方が好ましいという結果を得た.
昨今の急速なAI技術の発展により,ユーザとチャットを行うテキスト対話エージェントが普及しつつある.その一例であるチャットボットは,ユーザの入力に対して即時的な返信を行っているが,人間同士がチャットなどで雑談をする際には必ずしも即時的な返信を行っているわけではない.そこで本研究では,ユーザと雑談を行う目的のテキスト対話エージェントは即時的な返信よりも間隔を開けた返信の方がユーザに好印象を与えると考え,それを検証するための実験を行った.
SNSにおける「リツイート」や「いいね!」といったエンゲージメント機能は,即時的かつ大規模な情報拡散を可能にする一方,エンゲージメント数の表示が誤情報の拡散を助長してしまうリスクがある.そこで本研究では,SNS上における誤情報を判定するクイズ形式の実験によって,ユーザがSNS上のどのような情報を信頼し,どのような情報を拡散しようと思っていたのか,その関係についての調査及び考察を行った.
臨場感にあふれ繊細な表現を可能とするオノマトペは,コミック作品においても効果的な表現の一技法として積極的に使用されており,その効果について多くの考察がなされている.本稿ではそのようなオノマトペがあえて使用されていない箇所に着目し,その不使用方法がもたらす意味および効果について考察した.その結果,オノマトペを使用しないことによって,使用されている箇所との差異を強調することとなり,むしろ物語における重要な箇所にてオノマトペが使用されていないケースの方が多いことが明らかとなった.
著者らはテセウスの船パラドクスを用いてロボットへの認識を把握する先行研究を実施したが,その際,実験参加者に対して特定のロボットの画像は提示しなかった.そこで本研究では,5種類のロボット,スマートフォン,パソコン,人間の画像を提示したうえで先行研究を追試し,「ロボットは人間でもモノでもない存在として認識されている」という先行研究で得られた知見を,ロボットの外見という観点から再考することにした.
トロッコ問題のようなモラルジレンマ課題にロボットを登場させることで,そのロボットに対する人間の本音を明らかにする試みが注目されている.しかしながら,モラルジレンマ課題は,非日常的な状況においての道徳的判断を求めるものであるため,近年は日常生活空間に起こりうる状況を想定したモラルジレンマ課題が提案されるようになった.そこで本研究では,「上司からの命令」と「顧客からの要求」との間で主人公が板挟みになるという「板挟み型日常的モラルジレンマ課題」を提案し,そのような状況に置かれたロボットがユーザからのように認識をされていたのかを把握するために,クラウドソーシングによるアンケート調査を行った.その結果,従来のモラルジレンマ課題で見られたような,行動をしないロボットに対して有意に非難度が高いという傾向は観察されず,行動をしたロボットおよび人間の方が有意に非難度が高いという結果が観察された.
新型コロナウイルスが世界中に蔓延する中,日本では2月下旬にトイレットペーパーに関するデマ情報がSNS上で大きく拡散された.これにより多くの人がデマの存在を認知し,全国各地でトイレットペーパーの品薄状態が相次いだ.そこで本稿ではトイレットペーパーに関するデマが認知される過程を把握し,デマの認知がTwitterに及ぼした影響について調査を行った.
Although the processing speed of computers is fast enough, users still have to wait for computers to complete tasks or respond. To cope with this, several types of visual information have been proposed as methods of presenting the current processing conditions of a computer to users when they are waiting. In this study, we focused on a throbber as an example of such visual information. A throbber is an animated graphical control element used to show that a computer program is performing an action in the background. We investigated how the components of throbbers (e.g., presented durations, rotational velocities, and size) affected users’ perception of waiting time. As a result, we observed that the participants felt that throbbers with a slower rotational velocity had a shorter duration regardless of size when the presented duration was rather short, like 5 seconds.
年々コンピュータの処理速度が向上しているものの、ユーザはコンピュータの処理を待つという状況からは逃れられない。そこで、待ち状態にあるユーザの負担を軽減する様々な方法が提案されているが、本研究では短い周期のアニメーションが繰り返し提示される「スロバー」に着目し、その構成要素とユーザの主観的待ち時間との関係を分析することを目的とした。具体的には、スロバーの「回転速度」「大きさ」という二つの要因が、ユーザの待ち時間に与える影響について調査を行った。その結果、スロバーの提示時間が5秒の場合,回転速度が遅く、表示サイズが大きいと、その待ち時間が有意に短く感じられることが明らかとなったが、提示時間が長くなるにつれてその効果が薄れることが明らかとなった。この結果より、スロバーの構成要素を微調整することで、ユーザの主観的待ち時間を暗黙的に操作できる可能性が示されたといえよう。
スマートスピーカが世の中に普及しつつあるが、未だに多くの人の生活には根付いていないのが現状である.そこで本研究では、スマートスピーカに対して親近感を抱かせるにはどうすればよいのかという問題に注目し,スピーカからユーザに対して「提案」がなされた時の印象を実験的に調査した.その結果,スピーカ側からユーザに「あなたがやっているタスクのお助けをできます」と提案することで、ユーザのスピーカへの親近感が上昇することが明らかとなった.
近年,家庭にロボットを導入しようという機運が高まってきているものの,スマートフォンやスマートスピーカーなどの高性能端末に比べてその普及は進んでいない.著者らは,人間が抱く「ロボットへの認識」が普及の妨げになっていると考えている.そこで本研究では,「ロボットとは何者なのか」という未だ回答の明示されていないこの問題について,テセウスの船パラドクスを基に,同一性の観点から考察する.
私たちの身の回りでは,左右の方向情報を伝えるために音声が用いられている.しかし,音声が用いられる場合,ユーザが言語を理解している必要がある.そこで著者らは,音自体の性質によって左右の方向情報を伝えることができるのではないかと考えた.本研究では,シンプルなモノラル音の長さの違いで,左右の方向情報を伝えることが可能かどうか及び,どのような音情報を使用すべきかを考察する実験を行った.本実験の結果,モノラル音の長さの違いが伝わった際に左右の方向情報を伝えられることが明らかになった.
ロボットのアピアランス(外見)はユーザとのインタラクションに及ぼす影響が大きいため、この二者間に円滑なインタラクションを構築するには、ロボットの持つ機能に適したアピアランスをロボットに実装することが重要となる。筆者らは先行研究にて、ロボットの目、耳、口というロボットの顔のパーツと、ロボットが従事するタスクとの関係を調査した。本研究では先行研究で提案された顔パーツと従事タスクとの組み合わせを、実験参加者にロボットの顔を直接デザインしてもらう二つの実験を通して考察した。
一般ランナーが容易に自分のフォームの分析を行い改善に役立てるシステムを開発している。ランナーにマーカーを装着することなくスマートフォンで撮影したランニング映像から深層学習により関節位置を特定し、その変動を解析することにより様々なフォーム分析項目の導出を行った。
一般的なピアノレッスンでは,生徒の演奏に対して指導者が乾燥を述べたり改善点を指示したりし,生徒が再度演奏する,ということの繰り返しで進行する.その際,指導者は生徒の習熟度合に応じて,指導の方法を変化させるという,相互適応プロセスが存在していると考えられる.そこでピアノの発表会を控えた生徒と指導者のレッスンを観察し,特に指導者がどのようなことばを用いて生徒に指導を行い,またその使用方法がどのように変遷するのかを相互適応という観点から詳細に観察した.
ロボットのアピアランス(外見)はユーザとのインタラクションに及ぼす影響が大きいため、この二者間に円滑なインタラクションを構築するには、ロボットの持つ機能に適したアピアランスをロボットに実装することが重要となる。著者らはこれまで、ロボットの目、耳、口というロボットの顔に関するアピアランス要素の「大きさ」「位置」と、ロボットの従事する五種類のタスクとの関係を精査するコンジョイント分析を行い、それぞれのタスクを得意とするロボットの顔アピアランス要素の組み合わせを明らかにした。本研究では、先行研究で得られたロボットの顔アピアランス要素の組み合わせた顔画像を提示されたユーザが、そのロボットからどのようなタスクが得意と判断するかを調査した。
私たち人間がロボットをどのような存在として認識しているかを把握するために,トロッコ問題のようなモラルジレンマ課題にロボットを登場させるという課題が提案されている.しかしながら,一般的なモラルジレンマ課題は,「四人を助けるために一人を犠牲にするべきか」「家族を助けるために強盗をするべきか」といった現実的にはあまり起こらないような状況での道徳的判断を求めるものである.そこで本研究では,我々の生活で日常的に起こりうるような状況を想定した日常的モラルジレンマ課題を提案し,この状況下でのロボットに対するユーザの道徳的判断を把握する調査を行った.