世界保健機関(WHO)によると、世界の死因のうち25%以上が感染症によるものであり、特に敗血症、髄膜炎、肺炎、免疫不全のハイリスク群においては致死率が著しく高いとされています。
従来の病原体検査は検出率が30~50%程度に留まり、感染源を迅速に特定することが困難であるため、臨床医は経験的に抗菌薬を使用せざるを得ず、最適な治療タイミングを逃すリスクがありました。
このような課題に対し、2014年に米国UCSFのCharles Chiu教授がNew England Journal of Medicineにおいて、mNGS技術を感染症診断に活用した初の症例報告を発表し、感染症における精密診断の幕を開けました。
以降、mNGSはその高感度・迅速性により、医療界において大きな注目を集める診断ツールへと進化しています。
台湾ではCOVID-19流行の最中である2021年9月18日、アジア準訳の主導により、初のmNGS国際サミットが開催されました。台中栄民総医院、台湾感染症医学会、感染対策学会、台湾臨床検査医学会、台湾小児感染症学会などが共催し、UCSFのChiu教授およびMichael Wilson教授がオンラインで参加、現地・オンライン併せて1,000名以上の医療従事者が参加しました。
第2回以降は、毎年9月に開催地を台中栄民総医院に移し、神経学や集中治療など他の臨床分野とも連携を拡大。UCSFチームによる最新研究の紹介は3年連続で続き、
第4回では台湾の臨床医がmNGSを実務で活用した成果を共有し、感染源の迅速特定や抗菌薬使用の最適化、重症感染症の救命効率向上といった実践的なメリットが報告されました。
臨床現場からのニーズの高まりを受け、台湾感染症医学会は2025年、「mNGS臨床応用ガイドライン」を正式に発表し、医師が参考にできる明確な指針を提供します。
2025年は、サミットの第5回という節目の年にあたり、日本から2名の感染症領域における著名な専門家を初めて台湾にお迎えし、mNGSの臨床導入戦略を日台共同で考察するとともに、双方の診療現場での課題とニーズを共有し、アジアにおける精密医療の実装と発展をさらに推進してまいります。